絶品モツ料理が大人気!
メキシコ料理のシェフから心機一転
人気大衆酒場を作り上げた男の物語
豚の喉仏! コリコリの「ドーナツ炙りポン酢」
東京都足立区綾瀬にやって来た、きたろうさんと武藤さん。地域の鎮守様・綾瀬稲荷神社でお参りを済ませると、さっそく今宵の酒場「もつ焼き煮込み 大地」へ。飾らない雰囲気の店内で、ご主人の“マツジュン”こと松岡純さん(38歳)に迎えられ、ふたりは、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、「ドーナツ炙りポン酢」。「何それ!?」と驚くふたりの前には、豚の喉仏が! 輪切りにするとドーナツ状になるためそう呼ばれ、「硬いので、しっかり茹でて、ある程度柔らかくしてから焼く」のだそう。コリコリとした食感がやみつきになる一品に、「噛めば噛むほどおいしい!」と武藤さん。きたろうさんは、「こんな部位を食べられるとは、豚も思わないよね(笑)」。
店の開業は令和3年。コロナ禍でのオープンを支えたのは、安くて美味しいモツ料理の数々だった。中でも人気は、希少部位を使った「おまかせ串盛り合わせ(3本)」。タンすじ(塩)、あぶら(タレ)、のどなんこつ(味噌)を備長炭で焼き上げる。大腸周りの「あぶら」に、「柔らかくて、甘い〜」と舌つづみを打つ武藤さん。きたろうさんは、味噌ダレたっぷりの「のどなんこつ」に、「味がしっかりしてて旨い。豚ってすごいね!」。朝締めの新鮮なモツにこだわるご主人は、「素材の良さを活かせば、シンプルに炭火で焼くだけでおいしいんです」と胸を張るのだった。
足立区の隣、荒川区で生まれ育ったご主人。子供の頃から料理人になるのが夢だった。しかし、両親の願いもあり、18歳から家業の内装業を手伝うことに。一度は料理人の夢を諦めたが、25歳の時、メキシコ料理との出会いが転機となった。「当時はまだメキシコ料理店は珍しく、楽しく陽気な雰囲気に惹かれたんです」と、25歳で料理修業を開始。28歳の時に、渋谷に自分のメキシコ料理店を開業した。「若くしてすごい! 儲かった?」と聞くきたろうさんに、少々照れながらも、「儲かりました!」と笑顔が隠せないご主人だ。
「でも、どうしてメキシコ料理からモツ焼きに?」と、今度は武藤さん。ご主人は、「もともと和食が好きだったのと、もっと地域に根付いた、地元で愛される店を作りたくなって」と、8年続いた渋谷の店を閉め、綾瀬に「大地」を開業した。モツ焼きの修業経験はないご主人だが、「偶然、モツ焼きに詳しい仲間が集まってくれた」そうで、従業員の渡辺誠さん(42歳)もそのひとり。モツ料理に精通した料理人が作る、オススメメニューには、「モツ煮込み」、「あみレバねぎ焼き」、「牛ハラミ炭火焼」、など、モツ好きを魅了する料理が並ぶ。
低温調理で仕上げる「肉刺し」に感激!
続いては、「お好み3点肉刺盛」を。約60℃で1時間低温調理を施した、上ミノ、ハツ、コメカミの3種盛りだ。ネギダレでいただくコメカミは、さっぱりと食べやすく、ハツはクセがなくしっとり。上ミノは辛子味噌との相性抜群で、三種三様の味わいを堪能するふたりだった。
綾瀬での開業は、「渋谷とは違い、行きつけがあるお客さんも多く、新しい店に来てくれるか心配でした。でも駅周辺でチラシを配るうちに、徐々に常連さんも増えた」とご主人。さらに、「この辺りは個人店が多いので、店同士が一致団結して、街全体を盛り上げていきたい。お客さんを取り合うのではなく、別の街からもお客さんが集まってくれるような取り組みができれば」と先を見据える。
ここで、牛スジと大根を塩と胡椒で煮込んだ「牛すじ大根煮」が登場! 「味が染みて旨い。見事!」ときたろうさん大絶賛。武藤さんも「胡椒が利いてて、おしゃれな味。牛すじが柔らかい〜」と頬が落ちそうだ。
「店をやっていくのはとても大変。常に新しいことを考えていかないと生き残れない。でも、それがお客さんに受け入れられた時は、うれしいし、やりがいを感じます。元気よく笑顔でサービスして、お客さんにも笑顔になってもらいたい」。そんな言葉通り、「大将はすごく元気な人」と、店長の櫻井幹康さん(37歳)。料理人の渡辺さんも「いろんな相談がしやすい方」と言い、気さくで明るいご主人の人柄が伺える。きたろうさんは、「ご主人は笑顔が素敵。なんだか“純烈”のイイ男みたいで、奥様方に好かれそうだな(笑)」。ご主人は、店名に、「大地に店舗を広げたい」という想いを込めたそうで、なんと、「目標は100店舗」だとか! これには、きたろうさんも、「すごい野望!」と仰天するばかり!
最後の〆は、「もつ焼き屋の自家製キーマカレー」。細かく切った3種類のモツを10種類のスパイスで煮込む。「モツ焼き屋さんでカレーとは!」と大喜びの武藤さん。卵の黄身を混ぜると、スパイシーな中にまろやかさが加わり、たまらないおいしさだ。
ご主人にとって、酒場とは「笑顔が溢れる場所」。現在、独身のご主人に、「結婚はもうしないの?」と聞くと、「はい。従業員が奥さんだと思って!」。その言葉に、きたろうさんは思わず吹き出し、店には“笑顔が溢れる”。