“酒場の聖地“葛飾区立石で創業10年
24歳で酒場を開業した若き店主が作る
鮮度抜群の魚介料理に舌つづみ!
上品な味わいの「桜鯛とまいたけの酒蒸し」
“下町酒場の聖地”と言われる東京都葛飾区立石にやってきた、きたろうさんと武藤さん。京成立石駅北口周辺は、2028年に向けて再開発計画が進むが、街並みにはまだまだ昭和の面影が残る。期待を膨らませながら、ふたりが向かったのは、「名もなき店 ふくすけ」。シックな雰囲気の店内で、ご主人の瀬木(せぎ)慎太郎さん(33歳)に迎えられ、さっそく、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」
まずは、お通しに「金目鯛の煮付け」が登場! 「魚に自信があるのが分かる。期待できるね!」ときたろうさん。武藤さんも「インパクトがすごい」と興奮気味だ。
ところで、ちょっと変わった店名の由来をご主人に尋ねると、「オープンが迫るなか、どうしても店名が決まらず、自分の好きなアーティストの楽曲名にちなんで、『名もなき店』でいいや、となったんです。でも、ふと、『ふくすけ』もいいなと思い始めて」と、幸福を招くと言われる福助人形にちなんだ名前を付け加えたのだとか。
さて、最初のおすすめは「刺盛(梅)」。この日は、タコ、シマアジ、シマエビ、マグロ、桜鯛の盛り合わせ。どれも鮮度抜群で、皮目を炙った桜鯛に「いい香りでおいしい〜」と舌つづみを打つ武藤さん。シマエビも「プリプリで甘くて新鮮!」と頬が落ちそう。ご主人は、「この街に来て、魚介系の店が少ないなと感じたんです。だから自分は魚料理に力を入れよう」と思ったそうで、オススメメニューには、刺身を始め、「あなごの白焼き」など、新鮮な魚介を使った料理がずらりと並ぶ。一方で、「三日間煮込んだ豚の角煮」、「特製つくね塩焼き」など、魚介以外の料理も充実。様々な料理が楽しめるのはうれしい限りだ!
大学を中退し、20歳から都内の和食店で修業を始めたご主人。「朝9時から翌朝5時まで働き、少し休んだら、また稼働という毎日だった」と言う。それでも負けたくない一心で仕事を覚え、「先輩を越えてやる!」とがむしゃらに突っ走った。そして4年後、24歳で酒場激戦区の立石に自分の店を開業したのだ。しかし、その若さゆえ、「市場では全然相手にしてもらえず、あからさまに冷たい態度。邪魔者扱いで、市場内を走るターレーで轢かれそうになった」と苦笑い。きたろうさんは、「まさに青春時代を魚料理にかけてきたんだね!」とつくづく感心するのだった。
次のおすすめは、「桜鯛とまいたけの酒蒸し」。土鍋の蓋を開けると、香りが立ちのぼる。きたろうさんは、「まいたけと桜鯛って合うんだ! 出汁もしっかり出てる」と喉を鳴らし、武藤さんも「身がふわっとして、上品な味」と目を細める。
「特製えびしんじょ揚げ」はプリプリふわふわ!
「開業するまで商売を舐めてました」と頭を掻くご主人。当初はお客さんがなかなか入らず、「埼玉の大宮から出てきて、知り合いもいないし、街もよく知らない。毎日泣いてましたね」と振り返り、「最初に来てくれたお客さんは地元の方で、今も来てくれます。そういうお客さんのおかげで今がある」と改めて感謝するのだった。
続いては、「特製えびしんじょ揚げ」を。海老のすり身に魚のすり身と山芋を加えて油で揚げた、ご主人考案の一品に、「フワフワで上品な味!」とふたりの箸は止まらない。
「それにしても、10年も立石で店を続けるって、すごいことだよね」ときたろうさん。ご主人は「初めは、文句もいろいろ言われました。『生意気だ』とか『お前どこ中学だよ』とか(笑)。料理についても、量が少ないとか、高いとか、おいしくないとか……」。きたろうさんは、「俺なら、もう帰ってくれ!って言う」と笑うが、ご主人は真摯に向き合い、「立石に開業できてよかった。今では、おいしいと思って来て下さるお客さんがたくさんいるし、お客さんに満足してもらうのが、一番のやりがいです!」。
開業から10年、ご主人は、今でも毎日のように足立市場に通うが、そこには、かつてターレーで轢かれそうになった慎太郎さんの姿はもうない。馴染みの仲卸店もでき、付き合いの長い「磯崎」の舘野翔紀さんは、「市場なので良い魚も良くない魚も一緒に入ってくるけれど、ふくすけさんの技術ならお客さんに美味しく提供してもらえる。いろんな引き出しを持っておられるからこそだと思う」と、信頼を寄せるのだった。
続いては、新鮮な筋子を西京味噌に漬け込んだ「すじこ西京漬け」。ほんのりと西京味噌の風味をまとった筋子に、「言葉では言い表せないけど、めちゃめちゃおいしい!」と武藤さん。きたろうさんは、「お酒に合うんだよな」とチューハイが進む!
最後の〆は「タコ釜めし」を。タコたっぷりのほかほか釜めしに、「ほっとする味〜」と頬が緩む武藤さん。さらに、薬味の梅でさっぱりと食せば、「味に変化が出て、食べ飽きない」と、きたろうさんも大満足だ。
ご主人にとって、酒場とは、「ストレス発散の場所」。きたろうさんは、「意外と普通だね」と言いながら、「でも、そのとおり。楽しいのが一番!」と、ゴキゲンに頷くのだった。