杉並区高円寺で創業5年
タイで修業したヒッピーな女将が作る
絶品タイ料理に舌つづみ!
辛くて旨い! タイの定番サラダ「ソムタム」
本日の舞台は、東京都杉並区高円寺。東高円寺駅通り商店会(ニコニコロード)を歩いて、きたろうさんと武藤さんが訪れた今宵の酒場は、本格的なタイ料理が味わえる「夜学洞(やがくどう)」。看板には“ヒッピーな料理人の店”と書いてあり、「ヒッピーって何?」と不思議そうな武藤さん。きたろうさんは、「若い人は知らないか」と驚きつつ、サイケデリックな絵が描かれた階段を上って店内へ。古き良き昭和を感じる少々雑多な雰囲気に、きたろうさんは、「落ち着くね。ごちゃごちゃしてて!」と上機嫌だ。ふたりは、さっそく、女将の千綿(ちわた)理枝さん(50歳)に焼酎ハイボールを注文して、「今宵に乾杯!」
最初のおすすめは、「きんぴらごぼう」。以前、社員食堂で働いていたという女将が作る家庭料理に、「しっかりした味付けで、いい歯応え!」と武藤さん。きたろうさんも、「旨いっ。適度に辛くて、ごはんが欲しくなるね」と箸が進む。「使っているのはタイの唐辛子。日本のものとは辛さが違うんです」と女将。以前、タイに数年間滞在してタイ料理を勉強していたそうで、その時に出会ったタイ人男性と平成10年に結婚した。しかし、日本に帰国後、夫の浮気が発覚して離婚。2人の男児を女手一つで育てたという。そんな女将の過去に、「いろんな経験をされてるんですね」と感心する武藤さん。きたろうさんは、「そりゃ、ヒッピーだもん! 世界中動き回ってるんだよ!」。
料理に興味を持ったきっかけを伺うと、「もともとは、絵が好きだったんですが、高校生の時に父親を亡くして美大には行けなかった。でも、料理も美術に近いものがあるし、美味しさで人を喜ばせることができる」と、料理の道へ。高校卒業後、夜間の調理師専門学校に通い、20歳で働き始めた酒場で様々なことを学んだという。「個人経営の家庭料理の店で、料理がすごくおいしくて。そこの女将さんにとてもお世話になりました。修業は厳しく、よく怒られたけれど、本当にいろんなことを教わった」と振り返る。
ここで次のおすすめ「ソルタム」が登場! 「ソルタム」とは、タイ料理を代表する、青いパパイヤのサラダ。シャキシャキした歯応えのパパイヤにナンプラーの香りと唐辛子が利いた一皿は、「タイに来た気分になれる」ときたろうさん。武藤さんは、「辛い〜」と顔を赤らめながら、「でも、後を引くおいしさ」と止まらない。
お客さんもスタッフもみんなが笑顔になれる店
チリソースで食べる「タイ風オムレツ」!
21歳の時、観光で訪れたタイで、料理のおいしさに魅了された女将。その後もたびたびタイを訪れながら、タイ語を勉強し、24歳の時に本格的にタイ料理の修業を始めた。「現地の市場で食べた料理に感激して、その食堂でタイ料理を教えてもらうことにしたんです」。そして、4年後に帰国すると、一度は大手企業の社員食堂に就職した。しかし6年後、34歳で再びタイへ。チェンマイの高級ホテル「ロイヤルプリンセスホテル」で和食の料理長を務めることになったのだ。4年間、子育てをしながら料理長を務め上げ、38歳で帰国。その後は、日本のタイパブで働いたそうで、「タイ語が話せるので、タイ人のホステスになりきった」と明るく笑う。そんな様々な経験を経て、高円寺に「夜学洞」を構えたのは、平成29年、45歳の時だった。店名は、「夜学ぶ洞窟というイメージ。私、まだまだ料理を勉強中なんです!」。
次は、「タイ風オムレツ」を! ひき肉とトマトを入れた卵をフライパンで平たく揚げ焼きにし、チリソースをかける。タイでは毎日食べる定番の家庭料理だそうで、「表面はカリっ、中はふわふわ。甘くておいしい!」と気に入った様子の武藤さんだ。
店のメニューは、日替わりだそうで、「安くておいしい料理を出したいので、材料は必ず自分の目で見て、いいものを選びます。主婦の目利きですね!」と胸を張る女将。「グリーンカレー」などタイ料理のほかにも、「なすの味噌炒め」、「ハムカツ」など様々なメニューも揃えており、きたろうさんは、「常連さんも毎日来たって飽きないし、うれしいよね!」と納得するのだった。
続いては、女将の創作料理「しいたけピザ」を。しいたけをピザ生地替わりにして、トマトソースやチーズを乗せて焼く。「これは面白くて、旨い!」と絶賛のきたろうさん。武藤さんも「ピザ感が強い(笑)。しいたけの歯応えもいいですね〜」。
最後の〆は、なんと「寿司」! 「お寿司が出てくるとは思わなかった」とびっくりするふたりだが、マグロ、ヒラメ、タコ、ホタテの本格的な寿司に、「タイからイタリア、世界をまわって日本に帰って来た感じ」と、ヒッピー気分を満喫!
女将にとって、酒場とは「平等に話し、呑める場所。毎晩、変わり者が集まって、慰め合ってます」と笑い、「店をやめたいと思うことも、しょっちゅうあるけれど、それでもやめないのは、お酒が好きだし、みんなと一緒に飲むのが楽しいから!」と目を輝かせた。