神奈川県横須賀市で昭和42年創業!
父の想いを胸に二代目主人が暖簾を守る
常連客に愛され続ける老舗酒場
「刺身盛合せ」で三浦半島の新鮮魚介を堪能!
前回に続き、今回も神奈川県横須賀市を訪れた、きたろうさんと武藤さん。横須賀港に臨むヴェルニー公園から、汐入子之神(しおいりねのかみ)通りを歩いて向かった今宵の酒場は、 昭和42年創業の「汐入酒場 大八」。地元で水揚げされた新鮮な魚介が味わえる人気酒場だ。カウンター席に座ったふたりは、さっそく二代目主人の梅津資丈(うめつ もとたけ)さん(53歳)に焼酎ハイボールを注文して、「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、「刺身盛合せ」。「三浦半島で獲れる魚介を地産地消で!」という自慢の一皿は、マグロ(三崎港)、アジ(走水港)のなめろう、潮騒ふぐ(新安浦港)、ワラサ(三崎港)など、ボリュームたっぷり、豪華7種類! アジのなめろうを食べて、「おいしい〜。お酒が進む! 私、なめろう大好きなんですよ!」と興奮気味の武藤さん。きたろうさんは、「なめろう知ってるなんて生意気だな〜。おじさんじゃん(笑)」と突っ込みながら、コリコリと新鮮なふぐや、肉厚でプリプリの赤エビなどを堪能! 「旨いねぇ」、「贅沢〜」と大感激のふたりだ。
店は創業56年目。資丈さんの父・靖(はかる)さんが、福島県から上京し、昭和42年に「大八」を開業した。資丈さんは、もともと家業を継ぐ気はなく、高校卒業後は自動車メーカーに就職したが、「店を継ぐ予定だった兄が、街の安い居酒屋はやらない、と言い出して」と、21歳で店に入り、先代を手伝うことになった。
次のおすすめは、「串焼き盛合せ」。先代から引き継いだ味をご主人がアレンジし、一本ずつ異なる味付けに仕上げた。「ばら肉」はカレー味、「しろ(豚の大腸)」は創業時から継ぎ足す秘伝のタレ、「かしら」はにんにく味噌、「のどぶえ(豚の喉仏)」は塩でいただく。「ばら肉はスパイシーでおいしい! しろは脂が甘くてタレがぴったり。 のどぶえはコリコリで噛めば噛むほど味が出てくる〜」と、止まらない武藤さんだ。
二代目を継いで13年になるご主人。「先代は頑固で無口。店に入って一番大変だったのは、先代との関係でした。目の前にお客さんがいても、しょっちゅう喧嘩して、怒鳴りあってましたね」と話し、きたろうさんは、「相当な喧嘩だね。見たかったな(笑)」と残念がる。それでも、「お客様がフォローしてくれた」そうで、常連客が親子の仲を取り持ってくれたという。「自分が店を継いだ今では、父の苦労がよくわかる。こんな大変な思いをして僕らを育ててくれたんだと、本当に感謝してます」と、父への思いを口にするのだった。
お客さんもスタッフもみんなが笑顔になれる店
リーズナブルなご当地メニュー「潮騒ふぐの唐揚げ」
続いては、先代のレシピを受け継いだ「もつ煮込み」を。じんわりとやさしい味わいの煮込みに、武藤さんは、「お肉がトロトロで、しかも大きい〜」と感激。ご主人は、「自衛隊のお客様も多くて、よく食べてよく飲む。だから量も多めにしています!」。
ここで、先代主人の靖さんが登場! 寡黙で気難しい方かと思いきや、「息子は一生懸命やってくれてる。昔は年中、喧嘩してましたが、今は褒めてます。継いでくれて、うれしいですね」と優しそうな笑顔。資丈さんも、「父から初めて『ありがとう』と言ってもらったときは、感動しましたね」と返し、仲良い親子の姿を見せてくれた。
さて、次にいただくのは、「潮騒ふぐの唐揚げ」。横須賀沖で水揚げされたショウサイフグを「潮騒ふぐ」と表記し、「大八」が初めて商品化したという。「もともとは廃棄されてたのですが、何か活用したいと漁師さんと一緒に考えた」そうで、高価なイメージのふぐをリーズナブルにいただける大人気の一皿となった。武藤さんは、「揚げ物だけど、さっぱりしていて、おいしい!」と舌つづみ。きたろうさんも「プリプリして旨い」と箸が止まらない。
ところで、店のメニューは、「マーボー豆腐」や「ぶりかま焼」など多岐にわたり、100種類以上! 料理のこだわりを聞くと、「こだわりがないのが、“こだわり”(笑)。いろんな方に、いろんな料理を気軽に楽しんでもらい、自分がおいしいと思うように食べてもらうのが一番。お酒の楽しみ方も人それぞれで、楽しい時もあれば悲しい時もある。酒場はそんな様々な場面で活用されるのだから、お客さんひとりひとりの気持ちに寄り添っていきたい」。その答えに、きたろうさんは、「一聞けば、十返ってくる。すごいね!」。
最後の〆は、「しらす丼」を。生しらすと釜揚げしらすが両方のった贅沢な丼に、「ものすごい新鮮! ここに来なきゃ食べられないね」と絶賛するきたろうさん。武藤さんは、「口いっぱい入れると、なんとも幸せ〜」と、もう、うっとり!
店を続ける秘訣は、「自分自身が楽しんでいれば、お客さんも楽しんでくれると思います。お客さんを『おかえりなさい』と迎えて、『いってらっしゃい』と見送る、アットホームな雰囲気もいいのかも」。ご主人にとって、「酒場とは、ステージ。与えられた舞台でいろんなおもてなしを演じて、お客さんに楽しんでもらいたいですね!」。