東京都葛飾区新小岩で昭和34年創業!
創業者の父親から暖簾を受け継ぎ
人気酒場を守り続ける男の物語
60年以上愛され続ける絶品「焼き鳥」!
今回の舞台は、東京都葛飾区新小岩。現在、JR総武線新小岩駅の南口駅ビル開発が進められ、さらなる賑わいが期待される街だ。そして、今宵、きたろうさんと武藤さんがお邪魔するのは、創業63年目を迎えた「大衆酒蔵 鳥益」。地元で愛される老舗酒場を二代目主人の榑林(くればやし)浩さん(62歳)が切り盛りしている。さっそく、ふたりは、焼酎ハイボールを注文して、「今宵に乾杯!」。
まずは、焼き鳥の希少部位「つなぎ」(心臓と肝臓をつなぐ管部分)と「せせり」(頸肉)を塩でいただく。焼き鳥を焼くのは、浩さんの息子で三代目の榑林亮さん(36歳)だ。歯応えのある「つなぎ」を食べて、「塩加減もよくて、お肉がめちゃ旨い」ときたろうさん。「せせり」を食べては、「おいしくて、“せせり”泣きしそう(笑)」と感激する。使用するのは、“つくば鶏”。ブロイラーと地鶏の中間くらいの品種だそうで、どちらも希少部位ながら、ボリューム満点! ご主人は、「うちでは、食べやすさも考えて、肉を小さく切り、串に刺す数を多くしています。1串に5〜6羽分ですね」と教えてくれた。
続いては、秘伝のタレで味わう焼き鳥を! 「自家製つくね」、「鳥レバー」、「ねぎなし」の3種類をいただく。まずは、ねぎを挟まないもも肉だけの「ねぎなし」を食べて、「ふっくら焼けて、甘過ぎず、辛過ぎず、香ばしい!」と興奮気味の武藤さん。「つくねもフワフワ。レバーもおいしい〜」と、止まらない。きたろうさんは「歴史を感じる味だね」と感心し、ご主人も「60年以上継ぎ足し続けてきた、誰にも真似できない味です」と胸を張る。
店を創業したのは、浩さんの父・益男さん(87歳)だ。16歳で茨城県から集団就職で上京し、焼き鳥の名店で8年間修業。昭和34年に24歳で「鳥益」を開業し、約50年間、先代女将・きよ子さん(享年79)とともに店を切り盛りしてきた。浩さんは、高校卒業後、19歳から家業を手伝い始めたが、父親のもとでの修業は厳しかったという。「今で言うパワハラがすごかった。辞めたくても、自分の家だから逃げられないし」と苦笑いしつつ、「でも、その理不尽さが原動力になった面もあるし、我慢してきたからこそ今がある」と振り返る。
2日間煮込んだ「牛すじ煮込み」に感激!
さて、次の料理は、二代目が始めた手羽先の唐揚げ「手羽っ唐」。塩コショウで味付けした「スパイシー」と、自家製ニラ辛味噌をのせた「大辛」の2種類だ。まずは「スパイシー」にかぶりついたふたり。皮はパリッと、中はジューシーで、「チューハイが最高にあう!」と大喜び。次に「大辛」を恐る恐る食べて、「うん、おいしい! 辛いの苦手な人でも大丈夫」と武藤さん。きたろうさんも、「ニラとニンニクが利いた韓国風だね」と納得だ。
店では、「鳥もも肉鉄板焼き」など鳥料理のほか、「お刺身盛合わせ」、「カニグラタン」など幅広いオススメメニューが並ぶ。「鳥が本当においしいから、お魚出さなくても十分では?」という武藤さんに、ご主人は、「鳥も魚も食べたいというお客さんも多くて。ニーズに合わせてメニューを増やしました。先代の頃は焼き鳥しかなかったので、『味は二代目がつくり、店は先代がつくった』と三代目に言われてます」。
ここで、三代目・亮さんに話を聞くと、意外にも、二代目は厳しくないとか! 「僕は焼き鳥担当で、二代目は鮮魚担当。仕事が違うので、あまり干渉しあわない」という。約10年前、結婚を機に店に入った亮さんは、当時まだ店に立っていた初代(祖父・益男さん)から、直接、焼き鳥を教わったそうで、「初代は、なぜか二代目にはあまり教えたくなかったみたい(笑)」と明かすのだった。ところで、浩さんには、亮さんの子供も含めて孫が7人もいるそうで、きたろうさんは、「いいなぁ〜。安泰だね!」と大喜び。浩さんは、「三代目が継いでくれて本当に幸せ。できれば四代目にも継いでもらって、100年目指したい」と、うれしそうに話した。
次に登場したのは、「牛すじ煮込み」。主に牛の赤身肉をかつお出汁でじっくり煮込み、醤油や砂糖で味付けする。武藤さんは、「すごい! お肉がゴロゴロ入っていて、柔らかい〜。これは、ごはんに合いますね」と頬が落ちそう。きたろうさんは、「卵をつけて食べたいな。絶対旨いよ!」と言い出して、ご主人も「いいアイデア。今度やってみます!」と、採用決定!?
最後の〆は、「特製鶏そぼろ丼」。かつおだしで煮詰めたそぼろをたっぷりのせた丼に、「そぼろがしっとりして、おいしい!」。「出汁が見事だね」と、大満足のふたりだった。
店を長く続ける秘訣をご主人に尋ねると、「我慢です!」ときっぱり。「三代目も私に言いたいことはあるでしょうけど、我慢しているはず。自分ばっかり出してたら、通用しない」と、暖簾を守る男の矜持が垣間見える。そんなご主人にとって酒場とは、「お客さんが『ただいま』と帰ってくる場所。一日の終わりに、ほっとする場所であり続けたいですね!」。