東京都千代田区神田須田町で創業30年
カレー専門店と大衆酒場の二刀流!
二人三脚で暖簾を守る夫婦の物語
新鮮「本まぐろの中おち」に悶絶!
東京都千代田区神田須田町にやってきた、きたろうさんと武藤さん。神田川に架かる万世橋から、戦禍を免れた古い建物が残る街並みを歩いて今宵の酒場へ。お邪魔したのは、創業30年目を迎えた「トプカ」。明るくモダンな雰囲気の店内で、ご主人の関根保博(やすひろ)さん(72歳)と、妻の良子さん(64歳)に迎えられ、ふたりは、さっそく、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、新鮮な「本まぐろの中おち」。たっぷり盛られた贅沢な一皿に、「これは、高いんじゃない!?」と、つぶやくきたろうさんだが、「儲けなしの490円」と聞いて、驚くしかない! 武藤さんは、一切れ口に運んで「脂が甘くておいしい〜」と、とろけそう。きたろうさんも「本まぐろの味が口の中にふわ〜と広がる」と、うっとりだ!
「ところで、お店の雰囲気が酒場っぽくなくて、カレー屋さんみたい!」と武藤さん。きたろうさんも「カレーの匂いするもんね!」と頷く。ご主人は、「“Top Quality Of Curry”を略してトプカ。30年前にカレー専門店として始まった」と明かす。実は、平成4年に開業した「トプカ」は、昼は行列のできるカレー専門店。30年間、多くの常連客から愛され続ける人気店だ。そんなカレー店の開業からほどなくして、ご主人は、「夜は常連客がお酒を楽しめるように」と、酒場の営業を開始したのだった。
大学卒業後、都内の宴会場で、20年間、営業マンとして働いたご主人が、42歳で脱サラしてカレー専門店を開業したのは、カレー好きという理由だけではなかったという。「営業時代にカレーチェーン店をやろうという企画を提案したんです。でも、結局、社長に却下されて。じゃあ自分でやってみようと思ったんですよ」。
さて、次の料理は、丸一日煮込んで作る「牛もつ煮込み」! 「優しい味噌味で、お肉もホロホロ」と武藤さん。きたろうさんも「微妙な甘さが旨いね〜」と喉を鳴らす。酒場メニューは独学というご主人。「実際にいろんな店を食べ歩いて、あとは自分で考えて作る」そうで、「白魚揚げ」、「鳥皮しょうが煮」、「イワシの南蛮漬け」など、50種類以上ものメニューが並ぶ!
「カレー店と酒場の二刀流に不安はなかった?」とご主人に尋ねると、「もう、不安ばっかり。10年くらい客足が伸びず苦しかった」と振り返り、「よく辞めなかったものです。やっとお客さんに認めてもらえるようになり、本当にありがたい」と語るのだった。
絶対食べたい! 「おつまみカレー3種」
夫婦は結婚して約17年。ご主人は良子さんが働いていた居酒屋の常連客だったとか。「主人は優しいの一言に尽きる。いつも私が一方的にしゃべってる」という良子さんに、「奥さん、しっかりしてそうだもんね」ときたろうさん。ご主人がこっそり「こわいです(笑)」と言うと、良子さんは、「でも、仲いいと思います。店も市場も買い物も、いつも一緒。ウチは二人で一つ。どちらかが欠けてもダメなんです」。そんな良子さんの言葉に、ご主人は穏やかな笑顔を浮かべながら、「悟ったんです。何でも言うこと聞いてるのが一番うまくいくって!」。
続いては、熊本名物の「からし蓮根」を。「パンチのある辛さがクセになる!」と武藤さん。きたろうさんも「旨いね〜」と大喜びだ。実は、厨房で調理しているのは、良子さんの長男・山田昌季さん(40歳)。「おやじも歳だし、体も弱くなってきてるので、店をつぶしちゃいけないと思って」と約10年前から店を手伝っている。「もつ煮もカレーも作れる?」と聞くと、「はい!」と自信満々! 「これは安心だね」と感心するきたろうさんに、良子さんは、「まだまだ子供です」と母親の顔を見せた。
ここで、「鶏の半丸揚げ」が登場! ハーブ鶏の半身を丸揚げしたボリューム満点の一品に、きたろうさんは、「これは一人で食べきれないよ!」と仰天し、ナイフを入れた瞬間、あふれ出る肉汁に大興奮! 武藤さんも「脂がジューシーなのに全然重くない。皮もパリパリ」と絶賛だ。
店をやるうえで大切にしているのは、「これでいいと思ってから、もうひと手間かけて、お客さんにおいしい料理を提供すること」とご主人。「オープンから今まで、いろんな人に迷惑をかけながらも、途中で放り出さずにやり続けて今がある。我慢と辛抱が明日を開く」と話してくれた。
最後の〆は、お待ちかねのカレー! 「おつまみカレー3種」の登場だ。デミグラスソースを使った「欧風カレー」は「旨みが詰まって、ちょうどいい辛さ」と武藤さん。鶏と牛のひき肉で作る「キーマカレー」は、「マイルドかと思いきや、後からじわじわくる〜」と楽しそうに食べ比べ。そして、13種類のスパイスを使った本格的な「インドカレー」を気に入ったきたろうさんは、「辛旨だね! 俺はこれだな!」と止まらない。
酒場とは、「一人飲みでも至福の時が過ごせる場所」と言うご主人に、深く頷くきたろうさん。「憩いの場所」と答える昌季さんには、「45点!」と冗談を言いつつ、「でも、そのとおりなんだよね!」。