赤提灯に縄のれん。酒呑みも経験を積むと、この酒場の定番アイテムを見ただけで、なんとなく店の善し悪しが、分かるようになってくるものらしい。きたろうさんも、もはやその域。「田舎の匂いがするよね。ここは美味しそうだ」と、2人が訪れたのは、小石川の「和来路」。「いいねぇ、木づくりでね。テーブルとか、お店に統一感があって、この灯りの提灯が何とも言えない」。静かでもなく、騒がしくもなく、一人でもグループでも、等しくじっくりお酒が楽しめそうな雰囲気が、実に落ち着く。調理場を仕切るご主人の大村勝利さんと、笑顔を絶やさない女将のかし子さんは、共に山梨出身で、幼稚園の頃からの幼なじみ。「でも、幼稚園の頃から意識してた訳じゃないですよ」と、笑うご主人の笑顔がまた、なんとも人懐っこい。
まずは焼酎ハイボールで“今宵に乾杯!”。カウンターに並んだお惣菜をいただく事に。派手さはなくとも、手間暇かかった10数種類のおばんざいは、どれも酒呑みの心をくすぐるものばかり。そこから、こんにゃくと茎わかめを選んだ2人。こんにゃくは、芋をおろしてイチから作った自家製。「ツルツルのこんにゃくと全然違って、ちょっとゴツゴツしてる感じ。煮ると美味しいんですね」とは西島さん。「茎わかめも美味しい! これは止まらなくなる」と、すっかりご主人の味に魅せられた様子。「素朴なものを、あまり奇をてらわずに、シンプルに出してます」というご主人。その言葉は、接客や店そのものも言い表しているようだ。
ご主人と女将のおつきあいは、ご主人が上京し、サラリーマンになった18歳の頃から。結婚後25歳の時に脱サラし、喫茶店をオープン。その後、定食屋やラーメン店にお店を変えるが、どれも成功しなかった。そして35歳の時に、この店を始める。「2、3軒ほど隣に飲み屋さんがあって“今日はいっぱいで……”とかっていつも断ってたんですよ。そのおこぼれをいただく感じでいいかなぁって、始めたんです」と、女将は開店当初を振り返る。「で、その店は違うところに越しちゃって」。偶然が重なって店は軌道に乗り、多くの常連さんに愛される店となった。商売の神様はこの夫婦に微笑んだのだ。
次のおつまみに悩んでいると、常連さんから「ポテサラですよ!」とおススメを教えてもらう。これがなかなかのボリューム。「結構しっかりめの味のポテサラ、完璧です! ホクホクだし、ちょっと甘くって、マヨネーズの味がしっかりして、おいし〜」と西島さんを喜ばせる。続いていただいたのは、熱々の鉄板に山芋のオムレツ(はたまたグラタン?)を乗せた山芋ステーキ。素朴な料理だけではなく、二代目の利貴さんが考案した、創作系の料理も人気だ。
最後にいただいたのは、ご夫婦がこれを食べて育ったという山梨名物のほうとう。かぼちゃ、にんじん、大根、ごぼう、ねぎ、椎茸、しめじ、油揚げといった具に麺を加え、最後に麹味噌を入れて煮込んだほうとう。野菜のだしと味噌が、太い麺にしっかり染み込み、体を芯から温めてくれる。「これは飲んだ後には最高だな」というきたろうさんの言葉に、実感がこもる。
ちょうどいい感じの店のしつらえ、郷土料理と酒。この店の落ち着きの良さは、ご主人と女将、二代目の人柄そのままだ。「(親父は)厳しくはないですね。自由にやらさせてもらってます。感謝してます、僕にはこんな店を作れないですから」という二代目に、「本当はね、(二代目に)働かせてもらってるんでねぇ」と笑うご主人。そして「私は自由に遊ばせてもらって、本当に感謝してます」という女将。ゴルフにテニス、写真と驚くほどアクティブに、趣味を楽しんでいるのだとか。ここで女将が、得意のハーモニカで「お母さんのうた」をご披露。あの悲しげな旋律が、なんだか寂しく聞こえない。それほどに温かで、居心地がいい一軒なのだ。
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カウンターにずらりと並んだ10数種類のおばんざい。飾らない山梨の郷土料理など、どれも滋味深くお酒にも良くあう。こんにゃく450円(税込)、茎わかめ420円(税込)
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たっぷり山盛りのポテトサラダは、どんなお酒とも相性良しの、人気のおつまみ。500円(税込)
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ご主人や女将が子供の頃から食べて育った山梨名物のほうとう鍋580円(税込)。野菜もたっぷり摂れて、シメにバッチリ。
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住所
電話
営業時間
定休日 -
東京都文京区小石川5−4−8
03-3943-6565
16:30〜23:00
日曜日、祝日の月曜日
- ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。