ボリューム満点の絶品料理が大人気!
創業62年目の老舗酒場
先代の味と心意気を受け継ぐ若き男の物語
「あじのたたき」を豪快な姿造りで!
本日の舞台は、東京都江戸川区中央。交通量の多い京葉道路から住宅が並ぶ路地に入り、今宵の酒場へと向かうきたろうさんと武藤さん。やってきたのは、味わい深いトタンの外壁が歴史を感じさせる「大衆酒場 中村屋」だ。創業62年目を迎える老舗酒場の店内は、大きなコの字カウンターが据えられた、昭和感満載の飾らない雰囲気。ふたりは、「気取らずに飲めるね」と頷きあいながら、二代目主人の平山寛和(ひろかず)さん(29歳)に焼酎ハイボールを注文して、「今宵に乾杯!」。
昨年、創業者の先代主人・落合八郎さんが他界(享年87)し、先代のもとで2年間修業を積んだ寛和さんが二代目を継いだ。実は、寛和さんの祖母(中村貴久恵さん)は53年前から、母(平山京子さん)と叔母(中村晴美さん)も20年前から、「中村屋」で働いている。長年、先代を支え続けてきた彼女たちから、店を継いでほしいと頼まれた寛和さん。「お客さんのために」と老舗酒場を受け継ぐことを決意し、4人で力を合わせて店の暖簾を守っているのだ。
さて、最初のおすすめは、「あじのたたき」。姿造りで提供される一皿は鮮度抜群で、舌つづみを打つきたろうさん。武藤さんも「脂が甘くておいしい〜。こんなに新鮮なのが食べられるとは!」と感激する。
「先代は、とにかく頑固でした。自分で言ったことは絶対曲げない人で、逆らうと大変。お客さんでも追い出しちゃうくらい。だから、ここのお客さんはいい人ばかり」と、壁に貼られた先代の写真を誇らしげに見つめるご主人。修業中は1週間に何十匹という魚を捌かされたそうだが、楽しかったと言い、「先代からは、『とりあえず俺の料理を食べて覚えろ!』と言われました。亡くなる直前まで店に立ち続け、60年も店をやってきた先代を本当に尊敬します。この店は彼の生き様だった」。そんな話に、きたろうさんは、「かっこいいなぁ〜」と唸るのだった。
ここで登場したのは、出汁ではなく醤油のみで味付けした「揚げ出し豆腐」。その大きさに「デカっ!!」と驚くきたろうさん。武藤さんも「大き過ぎて、どこから食べれば!?」と戸惑いながらも、「醤油がじゅわっと染み込んでいておいしい〜」と気に入った様子だ。「普通はもっと上品に切るでしょ(笑)」ときたろうさんが言うと、ご主人は、「スミマセン、上品さが足りなくて。うちは何でも豪快。ボリュームがこだわりなんです!」。
出汁の旨みに震える! 具材たっぷりの「寄せ鍋」
閑静な住宅地にありながら、いつも常連客でいっぱいの店内。忙しい厨房で孫と一緒に腕を振るっているのが、“料理長”こと、82歳の喜久恵おばあちゃんだ。「孫が店を継ぐことになった時も、不安はなかったですよ。私、自分でできるから!」と快活に笑い、「先代は頑固だったから、私には料理も一切教えなかった。全部、見て覚えましたね」と話す。その様子に、「おばあちゃんの方がパワー強い!」と武藤さん。ご主人は「そうなんです。頭が上がりません」とタジタジだ。
そんな喜久恵さんが作る料理は、やはりどれも豪快!続いていただくエビフライも、大きなエビを3本使ったボリューム満点の一品だ。「なんでこんな大きいの!?」と、ガブリとかぶりつけば、「衣はカリカリ。中身はプリプリっ! おいしい〜」と大満足なふたりである。
ご主人は、「お客様においしいと喜んでもらえると、やっぱりうれしい。人のために何かしているという充実感をダイレクトに感じられる仕事ですね」と力を込める。「夢はフランチャイズ化。コの字カウンターの大衆酒場を広めたい」と言う。きたろうさんも、「こういうカウンター、最近、なかなかないんだよ。お客さんと話すのにもちょうどいい距離感なんだよね」と、うれしそうだ。
そんな二代目が受け継いだメニューは、「鶏手羽唐揚げ」、「いかバター」、「豚しょうが焼き」など約30種類。中でも常連客に愛され続けているのが、「カンパチのかぶと焼き」だ。「新鮮さがおいしさの決め手。素材を活かしてシンプルに塩のみで味付けする」という一品に、きたろうさんは、「出てくる料理がみんな旨くて、驚くよ!魚もここまで食べてもらって、大喜びだね!」と大満足!
最後の〆は、人気ナンバーワンの「寄せ鍋」を。魚介も肉も野菜もたっぷりで、またまたボリューム満点!「食わせるねぇ」と満腹寸前のきたろうさんだが、かつおと昆布の合わせ出汁に仙台味噌を加えたスープをすすって、「いろんな具材から出汁が出て、当然、旨いわ……」と、たまらない様子で目を細めた。
「こうやって家族みんなで店をやるのってどうですか?」と武藤さんが尋ねると、4人全員、「楽しいですね!」と口を揃え、仲良くやっていく秘訣は、「たくさん喧嘩すること。気にしないで何でも言い合うこと」とご主人。「酒場とは、憩いの場。落ち着いて安心して飲める場所を提供したい」という言葉に、きたろうさんは、「この店の雰囲気にぴったり!近くにこういう店があったら、俺は毎日来るよ!」。