中央区日本橋茅場町
舌の肥えたビジネスマンを魅了する人気酒場
ひと手間加えた絶品料理が大人気!
レアに仕上げる「まぐろフライ」に舌つづみ
東京有数のビジネス街、日本橋茅場町(かやばちょう)にやって来たきたろうさんと武藤さん。ビジネスマンが行き交うなか、向かった今宵の酒場は、「大衆酒場 まる富」だ。入口の看板に書かれた「明日呑もうはバカヤロー 今日呑んで行きなよ〜」という文言にニヤニヤしながら店内へ入ると、ご主人の富成勝(とみなり まさる)さん(49歳)に迎えられ、さっそく、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、「刺身3点盛り」。金目鯛、ひらめ、ぶりの美しい刺身に、思わず頬が緩むきたろうさん。天然ひらめを食べて、「あぁ〜、旨い。切り方も贅沢だなぁ」と感嘆する。食べ応えたっぷりの肉厚な切り方は、ご主人のこだわりで、「刺身は切り口が命。包丁の切れ味と腕前で味が変わってきます」と胸を張る。
ご主人は平成26年に中央区築地で「まる富」を開業した。しかし、コロナ禍で築地への客足が鈍ったこともあり、昨年6月、サラリーマンの多い日本橋茅場町へ移転。会社帰りに気軽に立ち寄れる人気酒場となっている。7年前、42歳で「まる富」を開業するまでは、さまざまな和食店で修業を積んできたご主人。「最初は包丁も握らせてもらえず、何度辞めようと思ったか分からない。でも、そのおかげで今がある」と振り返る。2軒目の修業先では親方の横山勉さん(60歳)に出会い、「『仕事はやった者勝ち!』と修業初日から包丁を使ってどんどん仕事させてもらった」そうで、ご主人は今でも「横山さんは私が目標とする師匠」と慕い、尊敬している。
次は、ご主人イチ押しの「まぐろフライ」を! 鮮度のよいマグロをフライにし、中をレアに仕上げるのがこだわりだ。切り口の美しさに、「ステーキみたい!」と歓声をあげるきたろうさん。ポン酢でいただけば、サクッとした衣の中はしっとり柔らかく、「こんなの食べたことない! スパイシーな味付けもおいしい」と武藤さんも絶賛する。
ところで、ご主人が築地で開業したきっかけを伺うと、「築地市場に勤めていた弟が、物件を見つけて、開業資金もすべて出してくれた」とのこと! 現在、豊洲市場で働く弟の富成護(まもる)さん(44歳)は、「兄貴には子供の頃からよく面倒を見てもらった。いつかは自分で店をやった方がいいと思っていたし、恩返しできればと。まぁ、兄弟愛だね!」と日焼けした逞しい笑顔で話してくれた。
続いては、弟の青果店から仕入れたナスで作る「なす煮びたし」。しっかりと出汁の滲みたナスに、きたろうさんは、「なんでこんなに旨いんだ」としみじみ。武藤さんは「おいしさがジュワーッと広がる」とペロリ! おかわりするお客さんも多いそうで、ご主人は、「親方が出していたのを食べて感動し、ぜひお客様にも食べてもらいたかった」と思い入れを語った。
牛タンを昆布締めに! 「牛たんこんぶ」
厨房でご主人とともに腕を振るうのは、副店長の谷一(たにいち)光延さん(52歳)。17歳から和食や中華料理店で腕を磨いた料理人だ。もともと店の常連客だったが、「自分が料理人だったことを話すと、一緒にやろうとお誘いいただいた。店長は腕がよくて、私は口が達者」と人懐っこく笑う。そんな谷一さんの愛嬌ある人柄に、きたろうさんは、「お店に必要なんだね。能天気な感じが(笑)!」
ここで、ご主人のアレンジ料理「牛たんこんぶ」が登場! 「ただのタン塩ではなく、何かひと工夫したくて」と、牛タンを昆布に挟み一晩締めて焼き上げる。武藤さんは、「やわらかくて優しい味〜」と目を細め、きたろうさんは、「噛めば噛むほど、昆布の味がじゅわじゅわ出てくる!」と舌つづみを打った。
店のメニューは、ご主人と谷一さんで試行錯誤して作るそうで、「鮪カマ焼き」、「とうもろこしの天ぷら」、「牛レバーの塩辛」など、約60種類!「新鮮な素材を使い、ひと手間かけることで、いかにおいしいものを提供するかを考える」とご主人。「お客さんの『おいしい』という一言が一番の励み」と真っすぐだ。一方、谷一さんは、「私はホールに出ることも多く、お客さんから一杯いただいてお話ししながら、『ここに来てよかった。また来るね』なんて言ってもらうと、うれしいですね」と楽しそう! ご主人も、「彼は、“看板娘”ならぬ、“看板じじい”です」と笑うのだった。
〆には、「焼きおにぎり茶漬け」を。かつお節・醤油・胡麻で味付けしたご飯を焼きおにぎりにして香ばしさをプラス。カリカリした焼き目をかつお出汁で崩しながら食べるお茶漬けは絶品だ! きたろうさんは、「なるほど、香ばしさがいいね! 〆にぴったり」と大満足。武藤さんも、「おこげみたい! 青じそや柚子が入っているのもさっぱりしておいしい〜」と大喜びだ。
ご主人にとって酒場とは「くつろげる場所。ここでおいしいものを食べて飲んで、仕事のストレスを忘れてもらえれば」と話し、きたろうさんも、「ちゃんとそういう雰囲気になってる。肩肘張らずに飲める」と太鼓判!