東京都豊島区駒込の秘密基地!?
第二の人生を酒場に賭けた男が作る
安くて旨いモツ焼きとジビエ料理を堪能!
ひと手間加えた「串焼き」はどれも絶品!
東京都豊島区駒込にやってきた、きたろうさんと武藤さん。JR駒込駅から向かった今宵の酒場は、安くておいしいモツ焼きとジビエ料理が人気の「山鯨屋(さんげいや)」だ。暗い階段を地下に降りると、秘密基地のような不思議な空間が広がり、「おお〜、いい感じ。防空壕みたい(笑)」ときたろうさん。店を一人で切り盛りするご主人の幡野(はたの)慎一さん(54歳)に迎えられ、ふたりは、焼酎ハイボールで、「今宵に乾杯!」。
まずは、最初のおすすめ、豚モツを使った「串焼き3種盛り」(悪魔のレバー、つくね、ちれ)をいただく。塩漬けにしたイカわたのソースを絡めたレバーは、「ウニに似せたくて」とご主人。武藤さんは、「ほろ苦さがよく合う」とパクパク。きたろうさんも、「ウニには全然似てないけど、おいしいよ!」と舌つづみをうつ。つくねは肉汁をとどめるためにお麩を混ぜ込んでふわふわに焼き上げ、希少部位のちれ(脾臓)も網脂で巻いて脂分を補い、ジューシーに仕上げる。きたろうさんは、「旨い! ひとつひとつに深みがあるね。気に入ったよ」と大満足だ。
平成29年創業の「山鯨屋」。「山鯨」とは猪肉の隠語で、肉食が禁じられていた江戸時代後期、猪肉を食べさせる店では隠語を使って提供していたという。「開業して5〜6年で、どうしてこんなおいしい料理ができるの?」と感心するきたろうさんに、「天才だから」と飄々と答えるご主人。「聞きたかねぇよ!」と突っ込まれても、どこ吹く風だ。木を使ったレトロな店内の作りもご主人のこだわりで、「子供の頃に見ていた昭和の景色がノスタルジックに脳裏に浮かんできて。それを幸せに思ってくれるお客さんもいるかなと思った」とのこと。「なるほどね。大将、なんかインテリだね」と言うきたろうさんに、ご主人は、「頭も良いし、顔も良い」と懲りずに返し、またまたきたろうさんを呆れさせる。
そんなご主人は、大学卒業後、コピーライターを目指し広告代理店に就職したが、「営業職だったので面白くなかった。クリエイトな仕事がしたい」と、会社を辞め、飲食業界へ転身。28歳から様々な店で料理修業を重ねた。「教わるのは自分より若い子ばかりで、修業は大変でした。でも、そこで辞めては自分の信念がその程度のものだったことになる。絶対やめるものかと踏ん張って、最後に、『これだけ根性があるやつは初めてだ』と言われたときは、感動しましたね」と振り返る。そして、38歳の時にはイタリア料理店を開業。しかし、その後しばらくして、「いろんな店を見ていると、残っていく店は、すごく安いか、すごく高いか。自分のやっている真ん中の価格帯の店が一番淘汰される」と感じ、「高いお金を出せば美味しいのは当たり前。安い料金でおいしいものを食べさせられるのが面白い」と大衆酒場への転向を決めたのだ。
人気のジビエ料理「鹿肉のあぶり」に舌つづみ
次は、人気のジビエ料理「鹿肉のあぶり」を。低温調理した鹿のもも肉は、刺身のように色鮮やかで、酸味の利いたカシスソースと相性抜群! 「やわらかくて、臭みもなく、食べやすい!」と感激する武藤さん。ご主人がジビエ料理を扱うようになったのは、「害獣被害を受けている農家さんが、捨てるしかなかったジビエをもっと流通させることができると思ったから」。そう聞いて、「高い理想があったんだね」と納得するきたろうさんだった。
続いていただくのもジビエだが、出てきた料理を見て、「えーっ! 何これ!?」と絶叫する武藤さん。皿に乗っていたのは、すずめを串に刺して丸焼きにした「焼きすずめ」だ! 「頭から丸ごとバリバリいってください」とご主人に勧められて、食べてみた武藤さん。「意外と固くない。おいしい! さっぱりした肉質で山椒が合いますね」とモグモグしながら、「これ、他のアイドルだったら悲鳴上げてますよ。私はぜんぜん大丈夫!」と余裕の笑顔を見せた。
店では、豚の大脳と小脳を使った「豚脳ポン酢」などもあり、人気の一品だとか! 他にもお薦めメニューには、「超旨いレバーペースト」、「トマトもつ煮込み」、「猪のすき焼き風」、「ワニタンの刺身」など、安くて旨い料理が揃っている。
締めには、煮込みをご飯にかけた、その名も「ニコライス」を。イタリア料理のようなおしゃれな見た目に、「不思議な感じ。ハヤシライスとカレーライスを混ぜたようなおいしさ」と、きたろうさん。具材には豚のほほ肉、たけのこ、大豆を使い、白米に合うように八丁味噌・みりん・酒などで味付けしてある。さらに、山椒七味、ラー油、カレー粉をかけて3回の味変も楽しめる、大満足な一皿だ。
「お金をもらいながら、『おいしかった』、『ごちそうさま』と感謝されるのは、この業種だけだと思う。すごい商売ですよね」と言うご主人にとって、酒場とは、「こっち(店)もあっち(客)も全部うれしい世界」。これぞ、大衆酒場の魅力である!