オリジナリティあふれる創作料理が人気!
老舗酒場の暖簾を守り続ける
おしどり夫婦の物語
とろとろ、しみしみの「牛すじ煮」!
今宵の舞台は、東京都江東区東陽町。きたろうさんと武藤さんがお邪魔したのは、昭和55年創業の「居酒屋 くろ兵衛」だ。木のぬくもりを感じる店内で、ご主人の鈴木栄(さかえ)さん(61歳)と妻の弥生(やよえ)さん(54歳)に迎えられ、さっそく、ふたりは、焼酎ハイボールで、「今宵に乾杯」!
最初のおすすめは、サラダのような「ジャンボ奴」。冷奴の上にシャキシャキ野菜とマグロやタコなどシーフードがたっぷり! 生卵と一緒に豪快に混ぜ合わせて食せば、武藤さんは、「ごま油のいい香り〜。さっぱりしてるけど味付けはしっかり。おいしい」と感激。きたろうさんも「よく合うね、センスある!」と大満足だ。
福島県本宮(もとみや)市で生まれ育ち、高校卒業後、調理師専門学校へ通うため上京したご主人。「幼い頃からお袋っ子で、大好きな母にくっついて、いつも台所に入ってました。その頃はまだ薪を使って、かまどで料理してたんですよ。母は、『男は流しに入るもんじゃない』と言ったけれど、私はどんどん料理が好きになった」と思い出を語り、「母も店に来て、『おいしいね』と言ってくれた。何よりの言葉です」と満面の笑み。
次は、店の一番人気「牛すじ煮」を。グツグツと煮えたぎる、ボリューム満点の一皿に、歓声をあげるふたり。フーフーしながら一口食べて、「すごいね! トロトロだ。大根も味が滲みてて旨い」ときたろうさん。牛すじを約4時間煮込み、大根と一緒にかつお出汁と塩で味付けするそうで、武藤さんも「予想に反して、すごく優しい味」とほっこり。「お客さんも、量が多いと言いながら、ペロリと平らげる。一度に8キロ仕込んでも、1週間でなくなりますね」と胸を張るご主人だ。
調理師専門学校を卒業後、関東近郊の飲食店で修業し、24歳の時に先代が営んでいた「くろ兵衛」で働き始めたご主人。今から12年ほど前、先代から店を継いでほしいと頼まれた。「もともと埼玉の自宅で開業する予定で、改装もほぼ終わり、店を辞めるところでした。でも、ここは駅前だし、断然、立地がよかった」と、「くろ兵衛」を継ぐことに決めたのだ。「大変だったのは、先代の頃の店の借金。返済が条件だった。でも、5年で返し終えました」とスッキリ。店を継いでからは、「自分の好きなようにできるし、やりがいがあって楽しい! 楽しいから休みの日も店に来てしまう(笑)」。
懐かしい味!? 「ナポリうどん」に舌つづみ
妻の弥生さんとは、14年前、「くろ兵衛」の姉妹店で出会い、2年後、ご主人が店を受け継ぐ時に「一緒にやってほしい」と告げたという。「ふたりともバツイチで、お互い自然に気遣いできる。2回目の方がうまいこといってます!」とご主人はニコニコ。弥生さんは、「24時間一緒もちょっと大変。たまに、調理場で足元を蹴りあってる(笑)」と言いながらも、休暇には夫婦でよく旅行に行くそうで、すでに47都道府県を制覇したとか! 「主人は、言い出したら譲らない性格。旅行も決定事項で、行かないと言ったら、子供みたいにぐずってる」と弥生さん。ご主人は少々照れながら、「これからもずっといいパートナーでいてもらえたら……」。
続いては、店の名物“棒々シリーズ”から、弥生さんが焼く2種類の串焼き「風来棒」と「かくれん棒」を! 「風来棒は、まぐろのねぎま。まぐろは7つの海を自由気ままに泳ぎまわるから」と、このネーミング。軽く塩を振ってじっくり焼き上げた一本に、「味付けはシンプルだけど、脂の旨みを感じる!」と武藤さん。「かくれん棒」は、ふんわりとした鶏ササミに梅としその葉を挟んであり、「女将、焼き方うまいねぇ」ときたろうさんも感心しきりだ。
ここで、「豚肉と紅生姜天」が登場!お好み焼きを揚げたような一品に、武藤さんは「紅生姜がさわやかでおいしい」と舌つづみを打ち、きたろうさんも、「ひとつひとつにセンスを感じるなぁ」と唸る。他にもオススメメニューには、「鮭のチャンチャン焼き」、「まぐろホホ肉刺し」、「ポテサラがっこ」など、おいしそうな料理がズラリと並ぶ!
ご主人は、「料理は作っても楽しいし、見てもらっても楽しい。だから、こういうオープンカウンターが好き。作っているところをお客さんに見てもらって、喜んでもらうのは、最高! とにかく料理が好きなんです」と、思いがあふれる。店を長く続ける秘訣を伺うと、「何だろ?」と少し考えて、「やっぱり基本は夫婦円満かな」。それを聞いた弥生さんは「足を蹴ろうかと思った」と照れ隠ししながら、「毎日楽しいですよ」と笑った。
最後の〆は、「ナポリうどん」。もともと賄い料理だったそうで、ベーコンやピーマン、玉ねぎなどの具材とうどんを手早く炒め、たっぷりのケチャップで味付け。きたろうさんと武藤さんは、「おいしい!」と声を合わせ、「懐かしい味!」と頷きあった。
ご主人にとって酒場とは、「趣味でもあり、仕事でもあり、やりがいのある場所。趣味と仕事が一緒って最高ですよね!幸せ!!」