BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2015/2/28放送 #41 半平

創業者の“がんばれ!”の熱い思いと昭和の記憶が、料理によみがえる王子名物ここだけの味
“おしゃべり大好きのご主人が、語り尽くす

王子駅前の一軒のビルが、夜を迎えると、黄色い看板と祭り提灯で一気に華やぐ。ここ「半平」は、昭和22年創業の王子の顔ともいうべき酒場だ。店に入った一行を迎えたのは、今年75歳になる三代目ご主人の藤原紀男さん。この三代目、話し始めたら止まらない! 「来年は70周年をやらなきゃって言ってんだけど、なんせこの近くにどんどんチェーン店が出来て、もう精一杯で。チェーン店とは違って、うちはお客さんの顔を見てから、ひとつ一つ作るという、それが……」と、息もつかせない。これにはきたろうさんも「後でしっかり聞きますから、とりあえず酎ハイを飲ませてくださいよ」とタジタジ。“そんな三代目はいつもの事”といった、ニコニコ笑顔の女将・俊子さんが運んでくれた焼酎ハイボールで、今宵に乾杯! 今日の酒場は、いつにも増して賑やかだ。

最初のつまみは、手書きの看板がひときわ目を引く玉子焼。「作り始めて69年、添加物は一切使ってないです」という、三代目自慢の玉子焼は、この店が生まれるきっかけともなった一品。「半平というのは、親父の名前なんです。親父は子供が五人もいたんで、食べさせるのも大変で。当時、玉子は貴重品ですから、どうせなら困ってる人も一緒に、玉子を仕入れましょうよ、お店でやりましょうよ、というのが店の始まりです」。自らが食べるのも精一杯の時代。一人でも多くの人に喜んでもらいたいと、店を創業した。そんな半平さんが試行錯誤の末に生み出した玉子焼は、なんとも優しい味がする。「これは家庭では作れないねぇ」と、きたろうさんが言うと、三代目が「まぁ、こればっかしは無理でしょうね」と胸を張る。それもそのはず、創業者の半平さんは、相当に厳しい人で「宿題をやってたら、“半平で飯を食うなら、息子でも仕事をしなさい!”って、怒られましたから。親父の前であぐらをかいたのも、人生で一度だけ。その時も、いきなり殴られましたよ。“おまえ、いつ親より偉くなった”って(笑)」。それほどに厳しい父親の指導のもと、覚えた玉子焼がうまくないわけがない。

新たな旅立ちを飾った料理とは

次のおつまみに「田楽三種盛り」を選んでくれたのは、厨房全般をまかされている四代目の一郎さん。「芋とこんにゃくと豆腐と盛り合わせで、リピーターも多い一品です」と、母ゆずりの笑顔で教えてくれると、すかさず三代目が「味噌は京都の京桜という味噌で、これにお酒と、みりんと、ちょこちょこっとしたものを入れて、三日間煮込むんです」と、解説を加えてくれる。甘い味噌はどんな素材とも良く合うが、きたろうさんは、特に里芋がお気に入りの様子。続いて四代目が出してくれたのは、自らのオリジナルメニュー「豚太刀(ぶたち)」。金串に豚肉を刺してこんがり焼き、特製の味噌と一緒にいただく。ピリ辛の味噌と、香ばしい肉を噛み締めていると、後から後から味が溢れてくる。これには「いいね、進むね、酎ハイが」と、きたろうさんも大満足。料理を作り、食べてもらうのが、実に楽しそうな四代目。三代目も「息子を褒めるのはおかしいけど、どんな料理を作っても、息子の料理には必ず優しさがある」と、その腕前と料理に向かう姿勢を評価する。

三代目が、若き日に見た、忘れられない光景があるという。「昔、集団就職でやってきた生徒と先生が、この店で泣き別れするわけ。先生が“お前等、元気で頑張れよ”って、ご飯を食べさせるんです」。親元を離れたばかりの若者の門出を祝うため、半平さんは心を込めて釜めしを作ったという。「その時の学生さんがね、社長になったりして“まだこの店、あったんだね”って、来てくれるんです」。決して豊かではなかったあの時代の、濃厚な思い出の味が、変わらず残っているのだ。そんな釜めしと同じく、変わらぬ味が「牛すき焼き」。濃いめの割り下で煮立てられたすき焼きは、集団就職で働きはじめた若い人達にとって、ささやかな贅沢。そんなすき焼きをいただいた西島さんは「このぐらいしっかり甘くて、しっかりしょっぱいのが、とってもおいしいです、ご主人!」と感激。三代目が今に伝える懐かしの味もありつつ、四代目が新たに作り上げる味もある。そんな料理の幅と、おしゃべり好きで、いつも笑顔を絶やさない人の温かさが、常連さんを惹きつけてやまないに違いない。

半平の流儀
その壱

近くに住む人には、病院お見舞いの定番アイテムとしても有名。玉子焼420円(税込)
その弐

甘口の京桜味噌をベースとした、自家製田楽味噌を、里芋、こんにゃく、豆腐にたっぷり乗せた、田楽三種盛り645円(税込)
その参

豚の串焼きに、オリジナルの味噌を塗った豚太刀390円(税込)。ピリリと利いた香辛料、ニンニクの香りなど、オリジナル味噌が香ばしい豚肉の味をよりひきたてる。
その四

創業者の半平さんに鍛えられた三代目は、料理に妥協を許さない。そんなご主人の厳しい目から見ても、四代目の料理には優しさが備わっているという。
その伍

集団就職で東京にやってきた学生達が食べたという、五目釜めし(1,285円・税込)は、今も半平の名物メニュー。
その伍

釜めしと並んで歴史のあるメニュー。濃いめの割り下で煮立てた、お一人様 牛すき焼き(880円・税込)は、お酒のすすむ味。この味を求めて訪れる人も多いという。
きたろうさんから、半平へ贈る「愛の叫び」 料理はやさしさ 半平はしゃべりすぎ  ———きたろう
「半平」
住所
電話
営業時間
定休日
東京都北区王子1−9−2
03-3911-4476
11:00〜23:00
年末年始
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

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