東京都墨田区菊川の下町人情酒場
ご主人と女将の絶妙コンビが醸し出す
アットホームな空気が温かい!
自慢の「串焼き盛り合わせ」に舌つづみ!
きたろうさんと武藤さんがやって来たのは、東京都墨田区菊川。都営新宿線菊川駅からすぐの「まつば屋 心平」が今宵の酒場だ。明るく清潔な店内で料理の腕を振るうのは、ご主人の眞多好博(さなだ よしひろ)さん(58歳)。女将の石田かをるさん(60歳)が接客を担当している。きたろうさんと武藤さんは、さっそく、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。グラスを運んできてくれたのは、女将の次男・石田優希さん(25歳)で、女将は「大将はお父さんじゃないの、赤の他人」と明るく笑う。
最初のおすすめは、「串焼き盛り合わせ」。焼く前に日本酒をふって香り付けした「ぼんじり」に、「旨いっ」ときたろうさん。 武藤さんも、「ぷりっぷり! 脂がおいしい〜」と感激する。続いて、わさびを利かせた「ささみ」に、「おいしい、ツンっ、おいしい、ツンっ、です(笑)」と涙目になりながら、ふわふわ「つくね」をパクリといって、またまた悶絶だ!
店は創業5年目。厳しいコロナ禍を乗り越えてきたご主人と女将だが、結婚はしていない。同じ居酒屋チェーン店で働いていたふたりが出会ったのは18年前だそうで、女将は、「大将も離婚してるし、私もバツイチ。この間、私がプロポーズしたけど、断られちゃったんですよ」と口をとがらせる。きたろうさんは、「なんで!?」と驚きながら、「大将は女将を相当信頼してるでしょ?」と問うと、ご主人は、「そうですね、人当たりの良さとか僕にないものをすべて持ってる。彼女以上の人はいない」と言いながら、「でもまだ一番下の息子さんが学生だから。その子が落ち着いたら……」。
大学を卒業後、大手居酒屋チェーンに就職したご主人は、10店舗をまとめるスーパーバイザーにまで上り詰めたが、「500席もあるような大規模店で、仕込みも山のよう。毎日毎日、大変過ぎて」と、47歳で退職。ちょうど、東日本大震災が起こった2011年のことだった。一度は宅配業者に勤めたが、5年後、ご主人が再び飲食業への挑戦を決意したのは、「震災からある程度時間がたち、被災者の方々も心のゆとりを必要としてるのを感じたんです。居酒屋もそういう方をフォローできる仕事だと思って、ママと一緒に店をやることにしました」。かをるさんの支えがあってのことだった。
素材の旨みと甘みを堪能! 「天使のエビ焼」
次は、寒い時期にうれしい「たぬき豆腐」を。木綿豆腐と豚肉をカツオ出汁で煮込んだアツアツの一品に、「温かくて、甘くて、おいしい〜」とほっこりする武藤さん。続いて登場した「小肌とガリの大葉あえ」は、さっぱりとしたおいしさで、きたろうさんも「おつまみにも、ごはんにも合うね!」と、ついつい手が伸びる。他にも、「とうもろこしのかき揚げ」、「ひらす西京焼」、「豚バラチャーシュー」など、様々なオススメメニューを取り揃えるご主人。「近所の方々に公民館のように使ってほしいので、いつでも何か食べたいものが見つかるように」と、あえてメニューを絞らず、幅広い料理に対応している。
ところで、女将は、38歳で離婚を経験し、5人の子供を育てるために、いくつもの仕事を掛け持ちして必死に働いてきたという。「働けばなんとかなると信じて、寝る間も惜しんでやってきた。頑張り屋なんですよ、私!」と話す女将に、「肝っ玉母さんだね」と、きたろうさんも感心せずにはいられない。
続いては、エビ本来の旨みと甘みが堪能できる、「天使のエビ焼」を! 塩だけで味付けしたエビを頭から殻ごとパリパリと食べて、「シンプルでおいしい〜」と武藤さん。「素材がおいしいものは、あまり手をかけない方がいい」とご主人も自慢の一品である。
「心平」という屋号の由来は、「大将は短気なので、心はいつも平和でいられるように」と女将。女将もよく怒られるそうで、ご主人は、「『まぁ、いっか』というのが大嫌いなんです。料理の仕上げで向きがずれていたりしても、そのまま出そうとするから、『ふざけるな!』って。店をやるにあたって、最終的に責任をとるのは私たち。言い訳する材料は、絶対あっちゃいけない」と真剣そのもの。そんな中、きたろうさんは、こっそり、「俺も『まぁ、いっか』のタイプなんだよ……」と打ち明けて、一同大爆笑!
最後の〆は、ガーリックを利かせた「ナスのミートチーズ焼き」。チーズがトロリと伸びるアツアツの一皿に、「組み合わせが間違いない! おいしい〜」と頬が落ちそうな武藤さん。トマトソースから手作りするこだわりの一皿に、大満足のふたりだった。
酒場とは、「居場所。ひとりで来られる方も多いので、いつも開けておいてあげたい」と女将。ご主人も、「温もりを感じられる場所。人間的なつながりの架け橋になって、人恋しくなった時に立ち寄れる場所でありたい」と言い、「お客さんは、俺の料理よりも、ママとしゃべりに来る(笑)。ママなしでは、やっていけない」。そう聞いて、女将はうれしそうな笑顔を見せ、「私はひとりでやっていけます!」。女将とご主人の絶妙コンビが、温かく迎えてくれる楽しい酒場である。