東京都世田谷区梅丘の隠れ家酒場
こだわりの出汁が自慢!
名物おでんに舌つづみ
八丁味噌を使った「味噌おでん」
今宵の舞台は、東京都世田谷区梅丘。小田急梅ケ丘駅から、きたろうさんと武藤さんが向かったのは、商店街の路地裏にたたずむ隠れ家のような店「うめが丘 ふかや」だ。高級感ある入り口から、こぢんまりとした店内に入ると、出汁のいい香りが漂い、期待が高まるふたり。ご主人の深山俊之さん(45歳)と接客を担当する従業員の早川榛香(はるか)さん(28歳)に迎えられ、さっそく、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」
最初のおすすめは、「ふかやのポテトサラダ」。ベーコンとゆで卵入りのポテサラに、きたろうさんは、「これは男のポテトサラダ! シンプルで旨い」と感激。炒めたベーコンをさらに燻製して香り付けするそうで、武藤さんも、「ベーコンの塩っ気がいい。おつまみにぴったり!」と早速チューハイが進む。
栃木県の高校を卒業後、4年間、陸上自衛隊に入隊していたご主人。自衛隊を辞めて初めて働いたのが居酒屋だった。「居酒屋で料理を作るうちに、本格的に料理への探求心が芽生えた」と、都内の日本料理店やホテルなどで修業を開始。「ホテルの下っ端時代は、“追い回し”といって、掃除や買い出し、皿洗いなど、先輩からの雑用をこなさねばならず、大変でしたが、それだけでは悔しい。何か習得しようと頑張った」。そんな持ち前の向上心で、7店舗の日本料理店で厳しい修業を重ね、苦節20年、令和2年に43歳で「ふかや」を開業したのだった。
さて、ここで、店の看板メニュー「おでん」が登場! まずは、ちょっと珍しい「高原レタス」から。「レタスのおでんなんて……」と言いながら食べたきたろうさん、「こんなに甘いの!?」とびっくり! レタスは火を入れると甘みが出るそうで、武藤さんも「シャキシャキ感もあって、出汁と合う。それに罪悪感がない(笑)」とパクパク。スルメイカのゲソとアカイカを使った「自家製さつま揚げ」も絶品で、「イカの食感が楽しい」と大満足! 「日高昆布の出汁に、かつおの風味がしっかり出るよう血合い入りのかつお節を加える」というおでん出汁は、「関西風か、関東風か、と聞かれれば、“オリジナル”。おでんも煮物の一種と考えているので」とこだわりを見せるご主人だ。
続いては、名古屋のおでんをイメージして八丁味噌で味付けした「味噌おでん」を。真っ黒になるまで炊き込んだ「大根」を見て、武藤さんは「チョコレートプリンみたい(笑)」と驚きながら、味噌出汁の味わいに喉を鳴らす。さらに、箸でスッと切れるまで柔らかくなった「牛タン」も感動もので、「これはもう、タンシチュー!」と頬が落ちそうなふたりである。
〆は「サワラとささがきごぼうの土鍋飯」
ところで、「まだ奥さんではない……」とご主人が紹介する榛香さんとの出会いは、前職場。「料理長兼店長になった僕を、彼女が一生懸命サポートしてくれた」とか。一方、榛香さんは、「彼は頼りないところもあるので」と、はにかみながら、「開業の話を聞いた時は、じゃあ私も一緒にやりたいって、ついてきました。やっぱり彼の料理がおいしいから」と笑顔を見せる。確かに、店のオススメメニューは、「りんごとほうれん草の白和え」や、「おでん大根の唐揚げ」、「万願寺じゃこ炒め」など、垂涎ものの料理が目白押しで、榛香さんが「味見や試食で20sくらい太っちゃった」というのも納得だ。そして、プロポーズの予定は「まだ、ちょっと……」と煮え切らないご主人に、きたろうさんが、「『今年中には結婚しよう』って言ってみて!」と促すと、「今年中には……」と言いかけるも、語尾は聞こえず(笑)。
ここで、甘みたっぷりの九条ネギを旨みの強い鶏せせり肉と炒めた「鶏せせりと九条ネギの黒胡椒炒め」をいただく。「鶏の脂がネギに絡んで、めちゃ旨!」と興奮気味のきたろうさん。黒胡椒と九条ネギの相性も抜群で、たまらないおいしさなのだ。
「大人の居酒屋がコンセプト。落ち着いてゆっくりくつろげるお店にしたい」というご主人。「毎日忙しいですが、ふたりで店を切り盛りして、店が終わった後には達成感がある」と、半分ノロケつつ、「お客さんから、『おいしかった』とか『ありがとう』と言ってもらえるのは本当にありがたい。おいしい料理を出すのは当たり前のことですが、それを怠らず、自分に厳しくありたい」と真面目な人柄が滲み出る。
最後の〆は、自慢のおでん出汁で炊き上げた「サワラとささがきごぼうの土鍋飯」。「あまり余計なことをせず、シンプルな料理を心がけている」とご主人が言うとおり、「素材をおいしく食べさせてくれる優しい味」だと、ふたりは、ほっこり、じっくり味わい尽くした。
今後は、「地域に馴染み、安定してお客さんに来てもらえるようにするのが、一番の目標」だとか。「お店がうまくいって、おっきいお家に住みたい」と言う榛香さんに、ご主人は「頑張ります」と応じながら、「酒場とは、お客さんにとっての『憩いの場』。でも僕にとっては仕事場なので、『戦場』でもあります」と、キリっと表情を引き締めた。