東京都目黒区中目黒で創業46年目!
100種類以上の絶品料理が味わえる
人気酒場の暖簾を守り続ける男たち
自家製「腸詰」は必食の名物料理!
きたろうさんと武藤さんがやって来たのは、東京都目黒区中目黒。きたろうさん曰く「芸能人がよく飲んでるイメージ」の街で、ふたりがお邪魔した今宵の酒場は、創業46年目の「大衆割烹 藤八(とうはち)」だ。座敷を備えた広々とした店内に入ると、店長の田中研司さん(71歳)と板長の篠原悦郎(えつお)さん(64歳)が並んで「いらっしゃいませ!」。ふたりは、さっそく、焼酎ハイボールを注文して、「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、自家製の「腸詰」。豚肩ロース肉を刻み、ラードと合わせて腸詰にして炙る。台湾料理の「腸詰」を日本人好みの味付けにアレンジしてあり、「ベーコンのような、ウインナーのような! 中に入ってる豆板醤がピリッとして、これは飲めますね〜」とうれしそうな武藤さん。きたろうさんは、「自家製!?仕込むの大変でしょ」と感心しながら、「完璧だね! チューハイにめちゃくちゃ合う」と、さっそくグビグビ! 板長の篠原さんも「これを食べないとウチに来た意味がないよ」という、店の名物料理だ。
店は昭和52年に店長・田中さんの姉夫婦が開業し、他では味わえない料理と先代女将・美恵子さんの明るい人柄で、またたく間に大盛況に。それまでバーテンダーをしていた田中さんは、開業当初から店を手伝い、約2年後、篠原さんも加わった。ふたりは、先代主人・柴田広二さんから仕事の厳しさを教わったそうで、「柔道をやってる男気のある人で、遅刻や挨拶には特に厳しかった」と振り返る。開業から長きにわたり、先代とともに店を支えてきた田中さんと篠原さん。先代が引退し、二人が中心となって店を切り盛りするようになったのは7年前だ。「店を手伝っているうちに、なんだかんだここまで来ました。人生の半分以上ここにいる(笑)。古くからのお客さんは、もう友達のような感覚で、店を継ぐことになった時も不安はなかったですね」と田中さん。きたろうさんは、「老舗ならではだね。伝統があるからこそできる」と感心しきりである。
次のおすすめは、「馬すじ肉の煮込み」。牛すじならぬ、馬すじと聞いて、武藤さんは驚くも、一口食べて、「ぷるっぷる! 牛すじよりさっぱりして、女性好みの味」と舌つづみ。きたろうさんが、「すごくさっぱりしてるから、あんまり煮込んでないよね?」と聞くと、篠原さんは、「いえいえ、すじは思い切り煮込んでる」と、じっくり7時間かけて煮込み、野菜は後から入れて仕上げると教えてくれた。
脂ののった希少部位「まぐろのあご焼き」
ところで、店内の壁には、メニュー短冊がぎっしり! 「刺身三点盛り」、「自家製はんぺん」、「いかのカキ揚げ」、「シュウマイ串焼」などなど、常時100種類を超えるとか! お客さんの要望もあって、だんだん増えていったというが、「店長も板長も、『そんなのやらねぇよ』、って断りそうなのに?」ときたろうさん。篠原さんも「本当はそう言いたいですけど(笑)」と本音がちらり!?
続いては、「肉じゃがコロッケ」を! サクリと頬張って、「ほっとする味。何もつけなくても本当においしい」と武藤さん。肉じゃがを作り、それを潰してコロッケにしているが、「肉じゃが」自体はメニューにない。その理由は、「肉じゃがが余ったからコロッケにしたと思われたくない!」。
ここで、まぐろの希少部位“あご”を使った「まぐろのあご焼き」が登場! 塩だけのシンプルな味付けながら、「脂がすごくのってて、おいしい〜」と頬が落ちそうな武藤さん。きたろうさんは、「このお店がすごいのは、醤油すらほとんど使わず、素材そのままの味を活かすところだね」と絶賛だ。
兄弟のように息の合った店長&板長コンビに、お互いのことを聞くと、篠原さんは、「店長は兄貴ですね。でも、俺は弟とは思われてないでしょう。ただクソ生意気なガキだと……。言いたいこと言ってきたから」と苦笑い。一方、田中さんは、「彼は素直ですよね、素直!」と簡潔な一言で、きたろうさんは、「お互い尊敬しあってるんだよ。だから続けられる」と頷くのだった。
最後の〆は、「のりうどん」。昆布を利かせた出汁でさっぱりといただく。きたろうさんは、ズズっとすすって、「あ〜」と息を漏らし、「シンプルでうまいなぁ……」と唸る。武藤さんも、「出汁が透明なのに、昆布の味がしっかり。海苔の塩っ気もいい感じ」と大満足だ。
約90席ある広い店内は連日大賑わい。最近では若い人や女性同士のお客さんも増え、SNSで口コミが広がっていくそうで、「酒場は、もう男のものじゃなくなったね」ときたろうさん。田中さんも篠原さんも、「自分たちの料理を食べに来てくれる人がいて、おいしかったと言ってくれるのは本当にうれしい」と充実した様子で、「毎日毎日店に立ち、コツコツと続ければ、あっという間に月日がたつ」。それが店を続ける秘訣だと話してくれた。田中さんにとって酒場とは、「愚痴を言い合う場所」。篠原さんは、「飲みに行きたい場所」。シンプルな思いで暖簾を守り続ける名コンビである。