オリンピック出場の夢破れて心機一転!
東京都中央区京橋のビジネス街で
人気酒場を作り上げた男の物語
驚きの柔らかさ! 名物「ゆでたん」に舌つづみ
今宵の舞台は、東京都中央区京橋。オフィスビルが建ち並ぶビジネス街で、きたろうさんと武藤さんがお邪魔したのは、創業7年目を迎えた「酒処 舌菜魚(たんさいぎょ)」。地下1階の広々とした店内で、ご主人の吉原健(けん)さん(45歳)と妻の沙和花さん(32歳)に迎えられ、さっそく、ふたりは、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。一風変わった店名は、「僕が好きな牛タンと野菜と魚を出す店にしたくて」とご主人。きたろうさんは、「若いのに、こんな大きな店を自分で始めたなんて、やり手だな!」。
最初のおすすめは、「ゆでたん」。分厚くスライスした牛タンを鰹出汁でじっくり茹でた、店の名物料理だ。きたろうさんは、「デカい!!」と驚きながら、「すっと箸が通る。素晴らしいね!」と絶賛。武藤さんも、「タンとは思えない柔らかさ。さっぱりした和風の味付けで、わさびがよく合う〜」と感激する。
ところで、ご主人は、大学卒業までずっと水泳をやっていたそうで、バタフライの選手としてオリンピック日本代表を目指していたという。「でも、結局オリンピックには出られず。大学4年の選考会で予選落ちして、水泳をやめたんです」。それでも、「ベストタイムは日本で9番目だった」と聞いて、きたろうさんは感心しきりだが、ご主人が中央大学文学部出身と知ると、「俺と同じだよ! 大先輩じゃねえか(笑)」と途端に態度が……!?
水泳をやめ、27歳から料理人の道へ進んだご主人は、11年間にわたり様々な飲食店で腕を磨き、平成28年に38歳で自分の店を開業した。料理人の道を選んだ理由は、「飲食店をやればお金持ちになれると勘違いした」と笑い、「なれましたか?」と聞く武藤さんに、「いや、まだまだ……」と頭を掻く。妻の沙和花さんとは12年前、同じ飲食店で働いていて知り合い、平成24年に結婚した。沙和花さんは、「彼は13歳も年上で、すごく頼りになる。休みの日には家でもごはんを作ってくれて、とてもおいしいです」と温かい笑顔。ご主人も、「家で食べるのが好きなんです。好きな料理を作って、食べながら飲んで、テレビを見る。それがしたい」と穏やかに笑った。
ミルクスープで味わう「牛たんしゃぶしゃぶ鍋」
次のおすすめは、「旬野菜のバターソテー」。ナスやズッキーニ、アボカド、スイスチャード、キノコなどの野菜をバターで炒め、塩・胡椒のみで味付けする。「バターの香りがいい。野菜の組み合わせがセンスあるね」ときたろうさん。武藤さんも、「野菜がシャキシャキ。おいしいし、全く罪悪感がない!」と箸が止まらない。
ここで、鮮度抜群の「刺身盛り合わせ」が登場! この日は、カンパチ、真鯛、アイナメ、サワラ、真蛸の5種類。淡泊ながら旨みのある白身魚のアイナメに舌つづみをうつ武藤さん。きたろうさんは、皮目を炙ったサワラを食べて、「絶妙な塩味がいい」としみじみ味わい、「どれもこれも旨い。贅沢だなぁ」と唸るのだった。
店のある京橋はビジネス街ゆえ、「会社帰りにわいわい飲める場所にしたい」とご主人。舌・菜・魚を使った料理を中心に、「すじ玉」、「旬野菜の天ぷら」、「揚げサバ」など、様々なオススメメニューを揃え、ビジネスマンの胃袋を満たしている。そんな店の厨房には、もうひとり料理人が! ご主人が修業時代に出会い、長きにわたり信頼を寄せる、村上浩二さん(61歳)だ。「震災で僕が大変だった時に大将に助けてもらったんです。大将は口数は少ないですが、内に秘めるパワーはすごい」と村上さん。実は、『夕焼け酒場』の大ファンだそうで、「第1回から見てます! 料理だけじゃなくて、お店の人間模様も紹介してくれるのがすごくいい」と話し、きたろうさんは、「“大将を味わう”番組だよね!」と得意満面だ。
続いては、千葉県産のブランド卵“煌黄(きらめき)”を使った「玉子焼き」を! 玉子の味をしっかり感じられるよう、かつお出汁と酒・醤油でシンプルに味付けした一品に、「ふわっふわで、食べた瞬間、出汁がジュワ〜」と頬が落ちそうな武藤さんだ。
最後の〆は、ミルクスープで葱と牛タンをしゃぶしゃぶして食す「牛たんしゃぶしゃぶ鍋」。独創的な鍋に「大丈夫なの!?」と一瞬戸惑うきたろうさんだが、一口食べて納得! 武藤さんも「ミルクとタン、合いますね! 牛乳のほんのりした甘さに胡椒のパンチもあって、おいしい!」と大満足である。
水泳をやめて後悔はしていないと言うご主人。「料理の世界に入ったことで、妻とも出会えたし、この仕事は楽しい!」と充実した様子で、「酒場とは?」の質問には、しばらく考えてから、「僕の人生です」。きたろうさんが、「“泳ぎ”にかけて、もっと哲学的に」とハードルを上げると、武藤さんは「難(むず)っ! 今ので全然OKです!」とピシャリ。