20種類を超える絶品鶏料理が味わえる店!
大手アパレルメーカーを脱サラし
58歳で人気酒場を作り上げた男の物語
新鮮な「鶏刺し3種盛り」に舌つづみ!
本日の舞台は東京都新宿区揚場町(あげばちょう)。JR飯田橋駅から外堀通りを挟んだ向かい側、グルメスポットとして知られる神楽坂に隣接するエリアだ。きたろうさんと武藤さんがお邪魔したのは、創業14年目を迎えた「とりしん」。さっそく、ふたりは、ご主人の青木信和さん(71歳)に焼酎ハイボールを注文して、「今宵に乾杯!」。
女将の史子(ふみこ)さん(57歳)が運んできてくれた最初の一皿は、「鶏刺し3種盛り」。むね、ささみ、ももを鹿児島の甘口醤油でいただく。「むね肉から食べるのがおすすめ」とご主人。「一番濃厚で、歯応えもちょうどいい。むね肉を基準に食べ比べて」と、自信たっぷり! 武藤さんは、さっそくむね肉を食べて、「新鮮でおいしい」と目を見張り、「ささみはとても柔らかくて、ももは味がしっかり!」と舌つづみをうつ。きたろうさんも、「旨いよ、もう旨い! びっくりしちゃうな」と大興奮。使用しているのは、鹿児島県産赤鶏で、さっぱりとした脂身は甘みがあり、程よい歯応えが特長だ。
続いては、新鮮な状態で低温調理を施し、ポン酢とごま油で味付けした赤鶏のレバー「レバポン」を。きたろうさんは一口食べて、「はぁ〜、旨いっ」とため息をつき、武藤さんも「トロッとしていて、新鮮でおいしい〜」と感動する。
都内の大学を卒業後、大手アパレルメーカーに就職し、マーケティングなどの経営術を学んだというご主人。人生の転機となったのは、史子さんと結婚して3年後、36歳の時だった。「高校の同級生に誘われて一緒に飲食店の経営を始めたんです。料理人としてではなく、マネージャーとして店づくりをする側。でも職人さんの仕事を見ていると、とにかくすごくて、おもしろい。だんだん自分も料理を作りたくなって、いろいろ勉強しましたね」。
ここで、次のおすすめ、自家製の「つくね」が登場! 店で肉を挽くところから手作りし、味噌や醤油、みりんなどで下味をつけて焼き上げる。軟骨入りの「やる気つくね」と、ニラ入りの「元気つくね」の2種類だが、どちらもボリューム満点! きたろうさんは、「これはつくねじゃないよ。ハンバーグだよ!」と驚き、武藤さんもパクリとかじりついて、「ジューシー。軟骨のコリコリした食感も楽しい」と大満足だ。
お客さんもスタッフもみんなが笑顔になれる店
珍しい「トマトの浅漬け」が美味!
36歳で脱サラし、酒場のマネージャーとして働いていたご主人。もともと料理好きだったこともあり、徐々に厨房で働くことが多くなっていったという。そして、22年後の平成21年、「歳をとっても、食い扶持を稼げる自分の店があれば、生涯現役でやっていける」と、自分の店「とりしん」を開業した。58歳での開業だったが、「遅いとは思わない。自分としては自然な流れ。毎日、毎日、こなすべき仕事を積み重ねてきました」と振り返る。現在、71席の店内を7人の従業員で賄っているそうで、「後々、従業員に店を任せて、自分は動かず口だけでお金儲けができれば……(笑)」と冗談交じり。きたろうさんが、「もともと営業マンだもんね。じゃあ、いつでも休みたい?」と聞くと、「そう、怠け者だから!」と笑う。武藤さんは、「こんなに料理へのこだわりが強くて愛があるのに、休みたいなんて!?」と、不思議がるのだった。
次に登場したのは、「トマトの浅漬け」。大きな丸ごとトマトを湯剥きして、かつお出汁で浅漬けにした、他ではなかなか食べられない一品。お口直しにもぴったりで、武藤さんは、「しっかりお出汁の味がする。さっぱり冷たくて、デザートみたい!」と箸が止まらない!
「とにかくお酒が好きで、焼酎にあう料理を追求していくうちに、焼酎→鹿児島→鶏料理に行き着いた」というご主人。料理のこだわりは、「自分が食べたいと思うものを出す! 基準は自分しかないので」と言い、オススメメニューには、「広島風とりかつ」、「せせりの塩だれ炒め」、「ベーコンチーズふわとろ焼き」など、垂涎ものの料理を揃える。店をやる上では、「これは嫌だと思うところを一個ずつ直したり、これが良いなということを一個ずつ取り入れたりして、常に新しい感性を持ち続けなきゃいけない。この料理を出せば絶対客が来る、なんてありえないんです」と語り、きたろうさんは、「えらいよ、全然怠けてないじゃん!」と感心するのだった。
最後の〆は、「とりしんサムゲタン鍋」。鶏ガラだけで出汁を取り、和風にアレンジした自慢の鍋だ。まずはスープを一口すすって、「あ〜、おいしい! 鶏の出汁がめちゃめちゃ出てる」と喉を鳴らす武藤さん。鶏の中には大麦を詰め、ミネラルや食物繊維もたっぷり! 滋味あふれる味わいだ。
ご主人にとって、酒場とは、「勝手に過ごせる場所。誰にも干渉されずに、スマホでも読書でも何でもできる。そういう場所だといいな」と言ってから、「生意気なことばっかり言ってスミマセン!」と頭を下げると、きたろうさんも「生意気なことばっかり言ったよ!!」と返して、愉快に笑いあった。