神奈川県横浜市野毛町
酒場激戦区で闘い続ける男が作る
新鮮な国産食材にこだわった炉端焼!
北海道産「本ししゃもの刺身」に舌つづみ!
きたろうさんと武藤さんがやってきたのは、神奈川県横浜市野毛町(のげちょう)。“お酒好きの聖地”と呼ばれ、500件以上の飲食店が軒を連ねる、安くておいしい大衆酒場の激戦区だ。「右見ても左見ても、酒場!」とワクワクしながら、ふたりが訪れたのは、平成18年創業の「炉端焼 うだつ」。上品な雰囲気の入り口を入ると、色とりどりの食材が並ぶL字カウンターが現れ、さらにテンションが上がる! 焼き台の前で腕を振るう二代目主人の野口多夢(たむ)さん(46歳)に、さっそく、焼酎ハイボールを注文して、「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、「本ししゃもの刺身」。「シシャモの町」として有名な北海道・むかわ町から直接仕入れ、ご主人が一本一本、丁寧にさばく。きたろうさんは、「めったに食べられないよ!」と興奮しながら、大切そうに口に運んで、「旨いっ、この繊細な味! 本物だね」と大感激。武藤さんも、「おいしい〜。上品な味ですね」と舌つづみを打つ。
高校を中退後、18歳から調理師専門学校へ進学したご主人。卒業後は横浜市内の飲食店でアルバイトを始めた。20歳からはリゾートホテルの厨房で働くも、当時は本気で料理人の道を極める覚悟はなく、お金が貯まると海外を放浪する生活。本気で料理人を志したのは34歳の時だった。「結婚して子供が生まれたのをきっかけに、真面目に働こうと思って」と、一家の主として家庭を支えるために一念発起。「炉端焼 うだつ」で10年間の下積み生活を経て、44歳でお店の全てを任されるようになったのだ。ちなみに、店名の「うだつ」は、江戸時代、家と家の間に取り付けた防火壁のこと。高価なうだつはステイタスだったことから「うだつが上がる」の語源となった言葉で、店名には、「お客さんが成功しますように」との思いが込められている。
次は、北海道産「原木しいたけ」を! 炉端焼特有の大きなしゃもじで差し出されて、「来た来た〜」と、うれしそうなきたろうさん。醤油と酒を垂らして大根おろしで食し、「肉厚で旨い!」と目を細める。武藤さんも「ジュワっとしますね〜」と喉を鳴らし、ご主人は、「原木から1回目に出てきたしいたけなので、香りも味も濃いんです」と胸を張った。
高級魚「きんき」の美しい姿焼きに感激!
店内には、国産食材を50%以上使用している証となる緑提灯が飾られ、「うちは、国産食材の割合が90%以上です」とご主人。食材はおいしいものを全国的に探して仕入れるそうで、「同じ野菜でも時期によって旬の産地は北上していくので、桜前線みたいに一番おいしいところを追いかけていく」というこだわりよう。当然、オススメメニューも、北海道産「帆立バター」、鹿児島県産「そら豆の天ぷら」、岩手県産「生牡蠣」、北海道産「生ラムジンギスカン」など、国産食材を使った絶品料理がズラリ!
続いていただくのは、「いかわたうだつ焼き」。青森県八戸産の新鮮なイカに味噌と肝を加えて土鍋で焼き上げた、優しい苦みと濃厚な旨みが堪能できる一品だ。きたろうさんは、「見事!」と唸り、武藤さんも、「肝のソースが苦すぎず、おいしい」とチューハイが進む!
ご主人が店をやる上で大切にしているのは、「ブレないこと。炉端焼の店は減ってきているし、スタイルを変えるのは簡単ですが、貫き通して、続けていくことが一番大事。こうやってお客さんと向かいあって会話できるし、ライブ感もあって、食材の良さを直接伝えることができる」。目の前で喜んでくれるお客さんのために食材を厳選し、その食材を作る生産者のこだわりを伝えることで、いい食材をもっと広めたい。そんなご主人の熱意が伝わってくる。
さて、ここで、「きんきの塩焼き」が登場! 並んだ食材の中で、きたろうさんが特に心奪われた北海道産の一本釣りの“きんき”である。一尾丸ごとの美しい姿焼きに「すごい!」と感激しながら一口食べたきたろうさん。「うわ、旨っ! 新鮮!」と感無量。武藤さんも、「皮はカリカリ! 身はふわっとして脂がのってる〜」と頬が落ちそうだ。
酒場激戦区の野毛エリアについて、「昔は女性ひとりでは来づらい雰囲気でしたが、ここ5年くらいでだいぶ変わって、若い人がすごく増えた」と、うれしそうなご主人。毎日忙しく、睡眠は明け方の数時間だけというが、「寝てるのがもったいないんです。毎日、楽しいので。つらいと思わないし、ストレスも感じない」と笑う。きたろうさんは、「大将を見てると分かる。自分を作らず自然体でちゃんと生きていたら、ストレスってそんなに溜まらないんだね」と納得するばかりだ。
最後の〆は、「石焼たこめし」。特製にんにく醤油をかけて、石鍋の中でたことご飯を混ぜ合わせれば、ジュージューと音をたてながら香ばしい香りが漂い、もう、たまらない! おこげもたっぷり堪能して、大満足のふたりであった。
「今後は子ども食堂もやってみたい」というご主人。「酒場とは、人と人の繋がりを作る場所。生産者のこだわりを伝えていくことで、繋がりがもっと広まれば」と、うれしそうに目を輝かせた。