26歳でアパレル業界から転身!
東京都杉並区阿佐谷で
人気酒場を作り上げた若き女将の物語
6種類もの「おつまみ盛り合わせ」に大満足!
今回の舞台は、東京都杉並区阿佐谷。「青春時代を過ごした」きたろうさんと、「初めて来た」武藤さん。JR阿佐ヶ谷駅から、ふたりが向かった今宵の酒場は、青梅街道沿いにある「和酒と小料理 㐂(き)なり」だ。店を切り盛りするのは、女将の及川りんこさん(31歳)。「女将っぽくないって言われちゃうんで(笑)」と、あえて割烹着を着て店に立つ若き女将に、きたろうさんは頬を緩めながら、さっそく、ふたりは、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、「おつまみ盛り合わせ」。6種類のおつまみがぎゅっと盛られた一皿に、「凝ってるね〜」と大喜びのふたり。この日は、奈良漬けタルタルバゲット、燻製味玉、スモークサーモンと人参のラペ、れんこん明太クリーム、アスパラとお豆の白和、ヤングコーンバターソテー。どれも素材の味を活かした、女将の手作りで、「全部、味が違って、楽しい。ちゃんとお酒に合う!」と感激する武藤さん。「ひとつひとつ手が込んでるね。これでチューハイ2杯はいけるよ」ときたろうさんも上機嫌だ。
北海道出身の女将は大学進学を機に上京し、卒業後はアパレル業界に就職した。転機が訪れたのは25歳の時。「それまでは、ひたすら服と向き合う仕事だったので、接客や人と関わる仕事にチャレンジしたくなった」とか。「もともとお酒がすごく好きだった」と酒場の開業を決意し、接客や料理の経験が全くないまま、平成30年、26歳でいきなり酒場の世界に飛び込んだのだ。そんなお酒好きな女将に一杯勧めるきたろうさん。女将は、「ありがとうございます」とうれしそうに頷き、今度は、3人で「今宵に乾杯!」。
全く違う世界への転身は、「ちょっと若気の至りでした」と言いながらも、楽しそうな女将。料理は店を手伝ってくれた料理人から教わり、徐々に作れるようになったと言う。「お寿司屋さんや、イタリア料理をやっていた方、さすらいの料理人とか……(笑)」と、幅広いジャンルの料理を学び、「包丁の使い方やお米の研ぎ方、出汁の取り方など、和食の基礎知識もきっちり学んだ」と話す。
続いては、「牛すじ煮込み」を。塩煮込みの透明なスープに、「やさしい味〜」と喉を鳴らす武藤さん。程よく歯応えを残した牛すじは、「柔らかいけど、存在感もしっかり」と大満足。牛すじ肉の臭みをとるために4回下茹でしてから、ネギや生姜、真昆布などの出汁で煮込むそうで、「手間暇かけたお料理を」という女将のこだわりを感じる一品だ。
揚げたてフワフワ! 「タコと枝豆の手作りさつま揚げ」
店名の「㐂なり」は、「生成り」(生地に手を加えていない、そのままの状態)に由来しているそうで、「お店をやっていく上で、自分なりのカラーに染めたくて」と女将。最初は渋谷で物件を探したものの見つからず、範囲を広げて、この物件を見つけた。「阿佐谷は住み良くアットホームな街。お店同士もお客さん同士も横のつながりが強い。地域密着型のお店にしたかったので、渋谷より阿佐谷の方が合ってたのかも!」。
ここで登場したのは「㐂なりの和風ポテサラ」。たっぷりのかつお節と隠し味のたくあんで和風に仕上げ、低温の油でカリカリに炒ったじゃこをトッピング。きたろうさんは、「ポテサラにかつお出汁!?」と食べてみて、「これは旨い!おじさん、たまんないね」と大興奮だ。
料理のこだわりは、「ちゃんと体にいいものを作ること。末永くお酒を飲んでもらえるように、お客さんの体調面にも気を遣って、薄味にしたり、油を少なめにしたり。勝手に健康管理してます(笑)」。そんな女将が作るオススメメニューには、「しめ鯖(生・炙り)」、「たっぷりチーズの厚切りハムカツ」、「ばっけ味噌焼きおにぎり漬物セット」など、丁寧に作るこだわり料理が並び、「お客さんには、できたてを食べてもらいたい」と、料理の作り置きをしないことも心がけている。
次にいただくのは、揚げたての「タコと枝豆の手作りさつま揚げ」。低温の油でフワフワに揚げた、女将自慢の一品に、武藤さんは、「柔らかくてふわふわ。タコの味がしっかり!」と舌つづみ。具材は季節によって変えているそうで、きたろうさんも、「季節感があって、贅沢だねぇ」と感心しきりだ。
最後の〆は、「ペペ玉」。ペペロンチーノの卵とじのような料理で、博多のB級グルメとか。玉ねぎやしめじ、ベーコンに加えて、鷹の爪のかわりに豆板醤を入れているとのこと。「なんかほっこりする味なんですよね〜」とすっかり気に入った様子の武藤さんだった。
実は以前、「夕焼け酒場」の放送にお客さんとして写り込んだことがあるという女将。「まだお店を始める前だったので。まさか、うちに来て下さることになるんて。ありがとうございます!」と喜び、「10年、15年と続けていけるように、阿佐谷という街に根付いて、私なりにやっていきたい」と夢を語る。女将にとって酒場とは、「学びの場。もともと飲み手側から始めてるので、堂々と飲みながら勉強できる場ですね」と柔らかな笑顔が輝いた。