BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2015/3/28放送 #44 山口西店

“うまい”“まずい”は口に出さない そんな京都人を通わせる本音でうまい、小路の奥の台所
ご飯に合う、少し濃い味付けの絶品おばんざい

祇園のど真ん中。少し歩けば、観光ポスターや雑誌の京都特集で見た風景に、出会える場所。そんな祇園の、ともすれば見過ごされてしまいそうな細い路地に、普段着の京都人が愛する酒場「山口西店」がある。「やっぱ、祇園には祇園の値段があります。私んところはそんなのは無しで、食堂みたいな感じで来ていただいてます」と語るのは、二代目ご主人の山口徹男さん。女将の山口ますみさんと、二人三脚で暖簾を守り続けて40年。焼酎ハイボールで乾杯に誘うと、しっかり応えてくれるノリのいい常連さんたち。きたろうさんが「京都はみんな、気取った店ばっかりと思ってた。そうでもないね」と言うように、気取りとは無縁の一軒だ。

京都で“最初のおすすめは?”なんて聞くのは野暮。手間ひまかけたおばんざいで始まるのが、京都の酒場のお約束だ。まずはご主人自慢の、おからとまぐろしょうが煮をいただくことに。「私のおからには天かすが入ってまして、ちょっとコクがあります。普通とは味が違いますね」というおからは、ふわっとした舌触りが特徴。また、まぐろしょうが煮はご飯に合うよう少し濃いめの味付け。酒もすすむが、熱い白ご飯も恋しくなる味だ。「いやいやなんともね、うまい! こういうのが5種類くらいあったら、つまみは他にいらないね」と、きたろうさんもご満足。

続いて京都の味ということで、ハモをいただくことに。夏の訪れを告げる食材、はたまた暑い夏に精力をつける食材として、京都人に愛されるハモ。梅肉和えが有名だが、ここでは天ぷらが定番だ。カラッと揚げた淡白な白身は、ホロリと口でほどけ、上品な旨味が広がる。と、ここできたろうさんが、常連さんの食べる一皿に目を留めた。それはカレー肉じゃが。きたろうさんが「うまい! 牛すじがカレーと合う、合う」と褒めると、ご主人が「京都の人はみんな、まずうても、おいしいても、何も言うてくれませんもんね。そのかわり、また3日後とかに食べに来てくれる。あぁ、あの味で納得してくれてるんや。あぁ、俺の勝ちやなぁ、って思います」と言う。これが、京都の店と客の関係。なかなかにスリリングな、無言のやり取りがあるのだ。

父が遺した店を守るため、必死に料理に向き合った年月

店の創業者である先代の山口春男さんは、もともと渡りの料理人だったが、5人の子供のために安定した生活を決意。元はお茶屋さんだったという築100年以上の物件を購入した。「親父が買うと言うた時に“こんな店あかんで〜”って言ったら、“お前は先見の明がない”って怒られました」と、ご主人。しかし、オープンから2年後に先代が逝去。少しでも手を抜けば、出刃包丁を飛ばすような厳しい先代だったが、「5、6年はショックでしたね。料理も覚えてへんのもいっぱいあったから……」。先代の暖簾を守る、その一心で頑張っていた時に、出会ったのが、OLをしていた女将のますみさんだった。「女将になるのは、抵抗がありましたけどねぇ」と、女将が言うと「今では、私より嫁はんの方が、人気あるんで、もう大感謝!」とご主人が照れる。

最後に、恒例の“これだけは食べて帰ってほしいメニュー”をお願いすると、「すき焼きはどうですか」と、ご主人。先代の頃から変わらぬ味付けで、グツグツ煮える鍋の匂いに、常連さんもそわそわ。「美味しい! でもこんな酒場で、こんなにトロトロの柔らかいお肉を食べられると思ってなかった。本当にいいお肉ですね」と、西島さんが絶賛した肉は、信州の長野牛。「やっぱりすき焼きはコレ。日本の文化だよね。(常連さんに)食いたいですよね? 食べようか?」。そんなきたろうさんの計らいに、店がワッと盛り上がる。肉を頬張る若い常連客に、「なかなか食べられないよ。3,700円だからね、言っとくけど」と恩を着せ、「すき焼きはこうやって、ワイワイ食べるのがいいよね。しっぽり食べるもんじゃないね」と、楽しく話すきたろうさん。西島さんも「京都だからって、緊張していた自分が馬鹿みたいです」と、すっかりくつろいだ様子。

ご主人と2人、暖簾を守ってきた女将は言う。「いろんなことがありましたよ。でも、なんか日々のことを必死でやってたら、40年経ったという感じですね」。「他の人と、結婚した方が良かったって思ったことはある?」と、きたろうさんが訊くと、あっさり「そりゃあ、ねぇ」と女将。すかさず「俺も思うてるわ」と返すご主人に、またも店は大盛り上がり。普段着の京都は、こんなにも居心地がいいのだ。

山口西店の流儀
その壱

カウンターケースに並ぶおばんざいは、それぞれにファンがいるほど。おから420円、まぐろしょうが煮500円(共に税込)
その弐

“はも”といえば、高級食材というイメージだが、こと京都においては食べ慣れた食材。山口西店では、天ぷらでいただくのが定番。はも天650円(税込)
その参

見た目はカレーでも、食べるとやはり肉じゃが。だしの利いた和風の味付けがたまらない。カレー味 牛すじ肉じゃが550円(税込)
その四

玉ネギにキノコ、しらたき、麩、焼き豆腐などの具に、信州の長野牛が加わる。要予約で、4人前からの受け付け。すきやき一人前3,700円(税込)
きたろうさんから、山口西店へ贈る「愛の叫び」 気取らない大将と味におばんざい  ———きたろう
「山口西店」
住所

電話
営業時間
定休日
京都府京都市東山区花見小路末吉町入清本町374−2
075-551-2995
17:30〜25:00
日曜、祝日は不定休
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