秋葉原で絶品もつ料理に舌つづみ!
愛する妻と二人三脚で
人気酒場を作り上げた男の物語
まずは、「あの伝説のもつ煮込み」!?
きたろうさんと武藤さんがやってきたのは、東京都千代田区秋葉原。2000年代以降はアニメやゲームなどサブカルイメージが定着し、AKB48に所属していた武藤さんにも、おなじみのエリアだ。そんな秋葉原で創業6年目を迎えた「大衆串酒場 陽葵(ひまり)」が今宵の酒場。ご主人の武田恭介さん(45歳)と妻の千鶴さん(44歳)に迎えられ、ふたりは、さっそく、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、「あの伝説の種市師匠のもつ煮込み!」とご主人。「え? 誰?」と戸惑うきたろうさんに、ご主人は笑いながら、「僕の師匠です」。修業先のもつ焼き店で出会った師匠・種市さん直伝のもつ煮込みは、その名も「あの伝説のもつ煮込み」。国産のもつ(テッポウ)を2時間煮込み、信州味噌で味付けする。きたろうさんはスープを一口すすって、「旨っ! 味付けもシンプル」と喉を鳴らし、武藤さんも「定番の味で安心感がある。おいしい〜!」と目を細めた。ご主人に、もつの仕入れ先を尋ねると、「分かんない。ネットで発注してるんで」と言われて、一瞬、微妙な空気が……!? と、次の瞬間、「いえ冗談(笑)。修業先でお付き合いのあったお肉屋さんです」と答えてくれた。
高校卒業後、18歳で秋葉原のもつ焼き店で修業を始めたご主人。現在も師匠と慕う種市さんとはそこで出会い、「厳しい方で、一度も褒められることがなかった。でもそのおかげで今がある」と振り返る。そんな師匠のもとで、15年間修業を積んだご主人だったが、33歳の時、もつ焼き店の社長と喧嘩し、「理不尽なことが、どうしても許せなかった」と、店を辞めた。その後は、「花屋さんやケーキ屋さんに勤めて、最後はイチゴ農家に……」と言い出すご主人。きたろうさんは、「またウソだろ!?」とツッコみつつ、ご主人の絶え間ない冗談に、「何を信じていいか分かんないよ」とタジタジ……。常連さんたちも、「大将はいつもいい加減(笑)」、「本当にテキトー!」と声を揃えるのだった。
続いていただくのは、「馬鹿ねぎたん(野口流)」。ご主人が最初の店を辞め、様々な酒場で修業を続ける中で出会った二人目の師匠が野口さん(月島「泥亀」主人)だ。豚タンの串焼きの上に山盛りのねぎをのせ、野口さん直伝の特製塩ダレをかけた一品に、「タレがおいしい!」、「ねぎだけでもつまみになる」と箸がとまらないふたりである。
ガツンとくる味!「和牛ホルモンラーメン」
現在、共に働く千鶴さんとは、ご主人が22歳の時に出会った。祭り好きなふたりはすぐに意気投合して交際。6年後に結婚し、子供を授かったタイミングで、「この店の話が舞い込んで。何かいい機運なのでは?」と開業を決意。妻に支えられながら、39歳で自分の城を構え、店名に長女の名前「陽葵(ひまり)」をつけたのだ。
さて、ここで登場したのは、「肉厚しいたけ」と「和牛まるちょう」の串焼きだ。しいたけは醤油ベースのタレで丸ごと焼き上げてあり、口の中でジュワーっと旨みが広がる。こんがりと焼き上げたまるちょうは、コチジャンをつけて食し、「いや、もう、脂が甘くておいしい〜」と武藤さんは頬が落ちそう!
料理のこだわりは、「全くない」と、サラっとかわすご主人だが、千鶴さんによると、「主人はこう見えてすごく真面目。まぁいいか、という手抜きは一ミリもない」そうで、オススメメニューには、「シロコロ秘伝ダレ」、「新鮮れば」、「明太出汁巻き玉子」、「自家製芋さらだ」など、おいしそうな料理がズラリと並ぶ。開業から5年、多くの常連客に愛される人気酒場となったが、「コロナ禍では、ショックと不安で朝からずっとお酒を飲んでいた」とか。千鶴さんは、「彼は落ち込みやすいところがあるので、そういう時は、どうにかしてテンションを上げていく」と明るく笑い、きたろうさんは、「奥さんに支えられてるのがよく分かるよ」と納得するのだった。
続いては、常連さんおすすめの「野口流 チキン南蛮」を! 鶏胸肉に牛乳で溶いた小麦粉をつけて揚げ、たっぷりの自家製タルタルソースをかけたボリューム満点の一皿。武藤さんは、大ぶりのチキンにかぶりついて、「衣が普通のと違いますね。ふわふわっ」と大喜びだ。
最後の〆は、「和牛ホルモンラーメン」。店で提供しているもつ鍋の〆を応用したラーメンは、ちゃんぽん麺を使用し、牛小腸やハラミ、キャベツやニラなど具材もたっぷり! 武藤さんは、「ガツンとくる味。スープにホルモンの旨みがしっかり出て、これで飲めますね」と味わい尽くした。
常連さんのひとりは、「大将は鉄人みたいな人で、一本スジがある。嫌いなものは嫌いと言うタイプで、こちらも気を遣いますが、それが心地いい」と話す。ご主人は、「お客さんには感謝しかない。一番の財産です」と言い、酒場とは、「自己革命の場。いろんな人とコミュニケーションとることで、固定観念に縛られた自分を振り返られる」と語って、「なんか、カッコいいなぁ〜」ときたろうさんを唸らせた。