赤羽駅の東口から北へ向かい、赤羽小学校を超えて……。地元の人が“裏赤羽”とも呼ぶ、ディープなエリアにある一軒。店の名前は、“微かな器”と書いて「びっきぃ」。ご主人の石田勝博さんは言う。「1人で来ても2、3品食べられるように、小さい器で料理を出してるんです。呑んべぇのいやらしさで、一品頼んでドンと出てきちゃうと、それでお腹がいっぱいになっちゃうじゃないですか」。ちょこちょこ食べたい呑んべえの気持ちに、この心遣い。期待に胸を膨らませたきたろうさんと西島さんは、焼酎ハイボールをオーダー。すると「うちの酎ハイは“ちょい割る男は強ソーダ”って言うんです。35度の焼酎を少なめに入れて、一番強い炭酸で割ってますから、パンチが効いてます」と、ご主人。乾杯して一口飲んだ西島さんは「これは強めですね。結構きます!」と、驚いた様子。早くもご主人の先制パンチをいただいたようだ。
料理は1品ずつ頼まず、ご主人のお任せコースにした一行。「じゃあ、うちのへんてこ料理をお出しします」と出てきたのは、プチトマト、パプリカ、カブが入った自家製のピクルス(400円・税込)。季節によって変わるという色鮮やかな野菜は、口にさっぱり、お酒にもぴったり。ひとつもへんてこじゃない……。と、次に出て来たのは「漬物チャンプルー(500円・税込)」。白菜漬けを炒めたもので、味付けはコショウだけという、ご主人のオリジナルレシピ。「漬物の塩分がなんともいえず、おいしい!」とは西島さん。きたろうさんは、びっきぃ(微器)なのに量が多いと言いつつも「こんな味になるとはね、なかなか旨いよ」と、お気に入りの様子。
おまかせコースの3品目は、人気のオリジナル料理、焼き鳥グラタン(500円・税込)。白いココットの器に、カラメルのようにかかっているのは、焼き鳥のタレ。まるで焼きプリンのような見た目だが、中にはホワイトソースと焼き鳥、キノコがたっぷり。「うわトロトロだ。焼き鳥のタレの味が、意外にグラタンに合うぅ〜」と、西島さんが褒めれば、「初めて食べる料理って言うのはワクワクするねぇ。今まで食べたことの無い料理だけど、うまいよ。酒場でグラタンとはねぇ! いや〜ちょっと驚いたなぁ、看板にびっきぃの面白料理って書いた方がいいよ」と、きたろうさんも大喜び。
ご主人の石田さんは、もともと保険会社の営業マンとして働いていたが、馴染みの小料理屋さんが、高齢を理由に店を閉めると聞いて脱サラを決意。料理は好きで、20代の頃に調理師免許をとっていたが、ほぼ独学の状態で4年前に店をオープンさせた。楽しそうに料理を作るご主人に、会社を辞めたことを後悔してないか訊くと「“全然”してないですね。給料は勤めてるときの方が“全然”いいけど、楽しいですね。負け惜しみじゃなくて。もうちょっと儲かるともっといいけどね」と笑う。
最後にコレだけは食べて帰って欲しいというメニューを、いつものようにオーダー。「赤手羽揚げです。赤羽に手羽という洒落なんですけど……」という、その手羽先揚げは「酒と醤油に5時間漬けてます。これは4時間でもダメだし、6時間でもダメなんです」という、ご主人のこだわりと手間が凝縮された一品。パリッといい音をさせて頬張った西島さんは、「変に辛かったり、変にスパイスの味がしなくて、シンプルでおいしいですね」と絶賛。
まだ4年目のお店、もっともっと常連客を増やしたいというご主人。「リピーターの裾野を広げていかないとねぇ。本当言うと、営業をやってたから、外に営業に行きたいわけ。でも今は、待ちの営業だから辛いね」という。ご主人にとっての酒場とは?を訊かれると「酒の飲みすぎは、体をダメにしますけどね、酒は心を豊かにしますよね。人とのふれあいと酒で、心を豊かにする、一番いい所だと思います」と語る。営業マン時代に人とのふれあいの大切さを知り尽くしたご主人が、今、酒と料理を挟んでお客さんとふれあう。心底から人が大好きなご主人だからこそ、この店はこんなにも居心地がいいのだ。
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びっきぃの酎ハイは、その名も「ちょい割る男は強ソーダ(400円・税込)」。アルコール35度の焼酎を、強い炭酸で割っているので、飲み口は軽いが酔いは早い!
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ご主人のアイデアがたっぷり詰まった創作料理。これを楽しむなら、ご主人のおまかせコースにするのが一番。
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お酒、醤油、にんにく、しょうがを混ぜ合わせたものに、5時間漬け込んだ鶏の手羽を、カリッと揚げた一品。赤手羽揚げ500円(2本・税込)
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住所
電話
営業時間
定休日 -
東京都北区赤羽1−42−15
03-3901-9761
17:00〜24:00
不定休
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