酒場激戦区池袋で創業54年!
受け継いだ老舗酒場の暖簾を守る
二代目主人の絶品料理に舌つづみ!
ご主人自慢の「お刺身3点盛」
東京都豊島区池袋にやってきた、きたろうさんと武藤さん。今宵の酒場は、池袋駅西口から徒歩1分。創業54年の老舗酒場「大衆割烹 まるさん」だ。昭和の面影を色濃く残す店内は、すでにお客さんでいっぱい! 厨房で腕を振るう二代目主人の清水明さん(65歳)と父親で初代主人の幸三さん(90歳)に迎えられ、ふたりはさっそく焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」
最初のおすすめは、「お刺身3点盛」。この日は、活〆平目、まぐろぶつ、赤エビ。「仕入れには力を入れてます」とご主人が言うとおり、どれも鮮度抜群で、武藤さんは、「まぐろも味が濃くておいしい〜。赤エビはブリンブリン!」と悶絶。きたろうさんは、活〆平目に舌つづみを打って、「これは利益ないんじゃない!?」と心配するほどだ。
昭和44年に店を創業した幸三さんは、御年90歳の今も店に立ち、接客を担当している。「みなさんから卒寿のお祝いをしてもらって」とうれしそうに話す幸三さん。きたろうさんと武藤さんは、「愛されてますね」と感心し、その様子を常連さんに混じって見守っていた孫の駿さん(二代目主人の次男 21歳 大学生)も、「みんな祖父のことが大好き。マスコットみたいな感じで、店の味になってます!」。
と、ここで、きたろうさんが、おもむろに、「これ、ちょうだい」と目の前に並ぶ「季節野菜の出汁びたし」をリクエスト。湯がいた野菜を味付けしてかつお出汁に漬け込んだ一品に、「これは、すごい! じわっ〜と味が広がる」と大喜び! 武藤さんも、「お出汁がすごくしみて、優しい味」と喉を鳴らした。
池袋で開業した理由を明さんに伺うと、「父がこの店を始めるまでは、祖父母がここでお菓子屋をやってたんです」とのこと。昭和27年に18歳で新潟県から上京した幸三さんは、21歳で結婚。生活を支えるため様々な職業を経験したのち、35歳で妻の両親が営む菓子店を改装し、夫婦で酒場を開業。丸く収まるようにという願いを込め、「まる」と幸三の「三」を組み合わせて「まるさん」と名付けたのだ。
続いては、「旬野菜の炊き合わせ」を。肉厚な椎茸、ごぼう、ホクホクのさといも、旬のたけのこなどを、干し椎茸の出汁でじっくり炊き合わせた滋味深い味わいに、ふたりは、思わずため息……。
出汁の旨みを堪能! 「いわしつみれ汁」
ご主人の明さんは、大学卒業後、3年間、都内の日本料理店で修業し、25歳から家業の酒場で働き始めたが、「父は昔は本当に厳しくて怖くて。一緒に仕事したくなかった」と苦笑い。そんな父親と働き始めて20年が過ぎた頃、徐々に店の経営が傾き始めたそうで、「バブル崩壊後も景気の良かった頃と同じようにやっているうちに、お客さんが減って。ヤバいなってところまできて、自分が立て直すことになったんです」。店の存続危機の中、二代目を継いだ明さんは、まず、メニューと値段の改善に取り組み、刺身や天ぷらなどは、豪華な盛合せでなく、手ごろなメニューを増やすなどして価格を抑えたのだとか。「二代目を継いで2,3年間は、本当に辛かった。でも、代替わりして閉めることになったら父が悲しむと思って」という明さんの努力によって、店の雰囲気はそのままに、価格を時代に合わせることで、経営の危機を乗り越えたのだ。そして、そんな息子に、「最高に良い男ですよ」と太鼓判を押す父・幸三さんである。
ところで、この日は、「新入社員の時から通って、今年で定年」という38年来の常連さんも! また、別の常連さんは、「おいしい魚を出してくれる居心地のいいお店。昭和の匂いがする」と「まるさん」愛を語り、「穴子の天ぷら」、「あじのなめろう」、「旬の野菜とうがらしみそ」などズラリと並ぶオススメメニューの中でも、「アジやイワシがお気に入り」と教えてくれた。
ここで、春の人気メニュー「山菜の天ぷら」が登場! ふきのとう、うるい、せりの盛り合わせに、武藤さんは、「甘みの中にちょっと苦みがあるのがいい!」と舌つづみを打ち、きたろうさんも「不思議だね、大人になるとこのおいしさが分かる」と、たまらない様子!
続いては、甘辛く炊き上げた「真鯛のかぶと煮」を! 煮酒をふんだんに使ったかぶと煮に、「身がふっくらして、味付けもおいしい! 鯛の旨みがよくわかる」と武藤さんは至福の表情だ。
「父が生きてる間に店を閉めるようなことは絶対したくない」と言う明さん。「最近は、次男に跡を継いでもらえたら、という気持ちも出てきた」そうで、次男の駿さんも、「今もちょっと手伝ってますし、ずっと父の背中を見てきた。かっこよくて、すごいなと常々思ってます」と応えるのだった。
最後の〆は、「いわしつみれ汁」。丁寧にとったかつお出汁と、いわしの旨みが堪能できる一品に、「すごく上品。酒場の料理とは思えない!」と武藤さん。きたろうさんも、「いわしの臭みが全くない。高級割烹だね」と感動するばかり。
ご主人にとって、酒場とは「大人のオアシス」。きたろうさんは、「確かに、子供じゃ分からないよね」と頷き、幸三さんは「酒場とは、大衆割烹料理ですよ。松茸ではお客さん来ないですよ」と笑った。