江戸川区葛西で創業14年目
飛行機の整備士から48歳で転身!
人気酒場を作り上げた男の物語
骨ごとバリバリ! 「あじの開きの素揚げ」
東京都江戸川区葛西にやってきた、きたろうさんと武藤さん。今宵お邪魔するのは、東京メトロ東西線葛西(かさい)駅から徒歩10分。環状七号線沿いに店を構える人気酒場「沼津漁師小屋 駿河」だ。厨房で腕を振るうご主人の笹原祐二さん(61歳)とパートナーの真奈美さんに迎えられ、さっそく、焼酎ハイボールを注文して、常連さんたちと「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、日替わりの「お通し三種盛り」。この日は、「炙り漬け本まぐろのにぎり」、「たけのこの土佐煮」、「ほっけの煮付け」。どれもひと手間かけた味わいで、「これは、チューハイに合うわ〜」と、いきなりテンションが上がるふたりだ。
店は創業14年目。静岡県沼津市の高校を卒業後、飛行機の整備士として30年間働いていたというご主人。修業はせずに、48歳で酒場を開業したのは、「実は、“ノリ”だった(笑)」とか!? 「早期退職制度のタイミングだったんです。二度離婚していて父子家庭だったから、料理も自然とできたので」と酒場の世界への転身を決めたのだ。
次のおすすめは、「とり皮ポン酢」。とり皮を醤油、砂糖、みりんのタレに約1時間漬け込み、中に火が通るまでしっかりと表面を炙って脂の旨みを閉じ込めた、手間のかかる一品だ。きたろうさんは、一口食べて、「うんまいな〜」とため息まじり。武藤さんも「タレの味がすごくおいしくて、食感もいい!」と絶賛だ。
修業をせずに店を開業したご主人だが、実は「師匠」と慕う料理人がいる。江戸川区西葛西にある「旬彩 山ざき」のご主人・山崎定一さん(80歳)だ。「駿河」を開業して間もなく、ふらりと入った店で山崎さんの作る料理に魅了されたそうで、今でも、「駿河」の定休日には「山ざき」を訪れ、山崎さんからアドバイスを受けているという。“師匠”の山崎さんも、「彼は毎週来て、私の料理を全部チェックしていく。いつも一生懸命な頑張り屋さんですよ」と太鼓判を押し、「彼を気に入ったから、僕のレシピをあげたんです」とほほ笑む。そんな10年の付き合いのふたりだが、山崎さんは、いまだに「駿河」に来店したことはないとか。ご主人は「僕も恥ずかしいので、来なくていいと言ってますし、師匠も『俺が行ったらいやだろ』って……」と笑うのだった。
ここで、「あじの開きの素揚げ」が登場! バリバリと豪快にかぶりつけば、「わぁ、パリパリ! 骨とか大丈夫かなと思ったんですが、全部食べられますね!」と感激する武藤さん。沼津市の学校給食でも出される料理だそうで、「贅沢〜」と驚くばかりだ。
沼津の郷土料理「まご茶漬け」で〆
飛行機の整備士とはかけ離れた接客の仕事は、「今でも緊張する」というご主人。「最初はすごくストレスが溜まって、一週間で6キロ痩せた」とも。そんなご主人を公私にわたり支えているのが、パートナーの真奈美さんだ。10年前に犬の散歩で出会ったのがきっかけで、交際がスタートし、「最初は忙しい時に手伝いに来てたのが、そのうち毎日来るように(笑)。私も最初はすごく緊張しましたが、だんだんお客様との触れ合いが楽しくなって。知らない世界と出会えて、今では感謝してますね」と楽しそう。ご主人も、「彼女はすごく大人。僕がガキっぽくて短気だから、彼女がいろいろ教えてくれたり、なだめてくれたりする」と絶大な信頼を置き、真奈美さんも笹原さんのことを「少年みたいな人。かわいいところもある」とノロケまじり! 常連さんたちも、「仲が良くてうらやましい限り(笑)」と見守りながら、「ここに来ると安心できて居心地がいい」、「ふたりの優しさがほっとするし、幸せな気持ちになれる」と口を揃えた。
続いていただくのは、「しゃけの黄金焼き」。蒸し焼きにした鮭をバターとポン酢で味付けし、卵たっぷりのタルタルソースで食せば、「パリパリに焼けたところがすっごくおいしい!」と武藤さん大興奮!
「人生で2つの仕事をやってみたのは、いい経験」と言うご主人。「長く続けられるのは、いいお客さんに恵まれたから」と感謝の気持ちも忘れない。そして、「とにかく、安くておいしいものを出す。それをすぐ提供できるようにする。そう心がけています。料理に対して手を抜いたら、お客さんはすぐ離れちゃうんです」と、まっすぐな言葉で語ってくれた。
最後の〆は、ご主人の故郷・静岡県沼津の郷土料理「まご茶漬け」。本まぐろや真鯛、ブリ、赤イカなどたっぷりの具材(※仕入れにより変わります)の上から、アツアツの出汁をかける。「いやぁ、旨いっ! これは贅沢だな〜」と喉を鳴らすきたろうさん。武藤さんも「しみますねぇ。おいしい! いろんなお魚が入ってるのも楽しい」と目を細めた。
ご主人の今後の夢は、「彼女と一緒に死ぬまで店をやっていくこと」。きたろうさんに、「いつ結婚するんだよ!」とツッコまれると、「申し訳ございません……」とタジタジになりつつも、「幸せにしたいとはずっと思ってます!」と胸を張り、「酒場とは居心地のいい場所。居酒屋の“居”は居心地の“居”。そういう酒場を続けていきたい」と、美奈子さんとともに頷きあった。