東京都文京区湯島の人気酒場
29歳で自分の城を構えて15年!
暖簾を守り続ける美しき女将の物語
目移り必至!? ズラリと並ぶ大皿料理
今宵の舞台は、東京都文京区湯島。きたろうさんと武藤さんが訪れたのは、東京メトロ湯島駅から徒歩1分、飲食店が建ち並ぶエリアにあるビルの2階。隠れ家のような「おばんざい 心 Shin」だ。店を一人で切り盛りする女将の長澤美枝さん(45歳)に迎えられ、「いい雰囲気ですねぇ〜」と気分上々のきたろうさん。さっそく焼酎ハイボールを注文して、常連さんも一緒に「今宵に乾杯!」。
カウンターの前には、大皿に盛られたおばんざいがズラリと並び、思わず目移りするふたり。女将は、毎日13〜15種類のおばんざいを用意しているそうで、「目の前に並ぶ料理を見ながら食事ができるっていいなと思って」と笑いながら、最初のおすすめ「蛤と玉子の酒蒸し」を出してくれた。蛤を酒蒸しにし、長ネギや小松菜を入れて卵でとじた一品に、「う〜ん、出汁が利いてておいしい!」と喉を鳴らすきたろうさん。武藤さんも「おいしい〜。これはなかなか他では食べれないですね!」と感激する。
店のある文京区の隣、荒川区で生まれ育った女将の美枝さん。商業高校卒業後、金融関係とプログラマーの仕事を経験したが、20歳の時、その後の人生を左右する職業に出会ったという。「世に言うキャバクラです。7〜8店舗あった系列店全体でずっとNo.1だった」そうで、働き始めて6年後の26歳で店の責任者を任され、若手の育成や経営にも携わるようになった。「いい経験になりました。経費や人件費のことなど、すごく勉強になった」と振り返るが、同時に、「3年後の自分の姿を思い描いた時、キャバクラのママをやり続けているのが想像できなくて……」と、将来を見据えて転職を考え始めた。そして、平成20年、29歳の若さで「おばんざい心 Shin」を開業したのだ。開業資金については、「キャバクラで貯めたお金と、両親が結婚資金として用意してくれていた300万円を使わせてもらった」とか。女将は現在も独身とのことで、たろうさんは、「この店と結婚したみたいなもんだね!」と納得するのだった。
次のおすすめは、「イカフライ」。女将が試行錯誤して作りあげた自家製タルタルソースが味の決め手。イカフライとの相性抜群で、「揚げ物だけど、軽くてペロっと食べちゃう!」と大喜びの武藤さんだ。
〆には優しい味わいの「鶏そぼろ丼」を!
開業にあたり、料理の修業はしていないという女将だが、「いろんな店を食べ歩いておいしいと思ったものを作ってみました。食べたことのあるものは作れるので」と料理のセンスが光る。店名は、「新」と「心」をかけて命名し、「いつも新しいお客さんだし、新しい毎日。その心を忘れないように!」との思いを込めたとか。そして、「開業当初は、キャバクラ時代のお客さんがよく手伝いに来てくれて、すごく助けられました」と感謝しつつ、「お店が軌道に乗ったと感じ出したのは、つい最近。それまでは常に不安でしたね」と明かすのだった。
ここで次のおすすめ「鰯の梅煮」が登場! 美しく煮付けられた鰯は、身はホロホロで骨まで柔らかく絶品! きたろうさんも、「どの料理も雑に作ってない。全てが丁寧」と感心するばかりだ。料理のこだわりは、「なるべく薄味にして、出汁を利かせ、素材そのものの味をいかすこと」。大皿料理も毎日10種類以上のメニューを変えているそうで、この日来店していた3人の常連さんたちも、「料理が毎回違って、ホントおいしい」、「今日は何食べようかと悩む」と絶賛。きたろうさんに「ここではどんな話をするの?」と聞かれると、「政治の話」と冗談をかましつつ、「ゴルフの話とか。ママがいろいろ合わせてくれるから、話題も豊富!」と、笑顔が絶えない。そして、「女将は芯が真っすぐで決断力がある」、「ママにパワーをもらって『頑張ろう!』ってなる」と楽しそうに話してくれた。
続いては「自家製ポテトサラダ」を! 野菜たっぷりで彩りも鮮やかなポテトサラダに興奮気味のきたろうさん。「旨いね! 塩加減もちょうどいい」と味わいながら、チューハイをグビグビっと飲み切った。
開業から15年。女将の人柄と料理に惹かれ、多くのお客さんに愛される人気酒場となった「心」。お客さんがいっぱいの店をひとりで切り盛りするのは、さぞかし大変かと思いきや、女将は「満席の7人までは大丈夫。全部対応できます。お客さん同士でも話してくれますしね」と余裕の笑顔を見せ、「自分でやった方がストレスも人件費もかからない。体調を崩さないようにだけ気を付けてます!」。
最後の〆は、「鶏そぼろ丼」。弱火でじっくり煮詰めた鶏そぼろの優しい味わいに、「おいしい〜。やっぱりお出汁がおいしくて、料亭に来たような気分」と、うっとりするふたり。「3年後はどうなってると思う?」ときたろうさんが尋ねると、「50歳になるときにまた考えます。それまではこのまま変わらず続けたい。今はこれが天職だと思ってます」とキラキラと瞳を輝かせる。そんな女将にとって、酒場とは「笑いの場所」。常連さんからも、「笑いしかない! 下の階から苦情がくるぐらい!」と楽しそうな笑顔があふれた。