浅草の浅草寺観音堂裏に佇む酒場
この道27年のご主人が丁寧に作る
絶品創作料理に舌つづみ!
具材は日替わり!「自家製さつま揚げ」
今宵の舞台は東京都台東区浅草。きたろうさんと武藤さんが訪れたのは、浅草寺裏の路地に佇む老舗酒場「ぬる燗」だ。青々とした緑が茂る小ぢんまりした入り口を入ると、靴を脱いで上がる座敷スタイル。掘りごたつ式のカウンターに座ったふたりは、さっそく焼酎ハイボールで、「今宵に乾杯!」。ご主人の近藤謙次さん(52歳)は、一見ぶっきらぼうだが、きたろうさんが「大将、コワそうだね(笑)」と話しかけると、「よく言われる」と少し表情が緩む。
最初のおすすめは、「刺身盛り合わせ」。小さめに切った刺身が7種類。かつおやあじ、真だいの湯引きなど、どれも新鮮! 珍しい飛び魚のなめろうなどもあり、「すごくなめらかでおいしい〜」と興奮気味の武藤さん。赤海老も丁寧に殻を剥き一口サイズに切ってあり、「こうやって出されると箸が進むね。面倒なことを一生懸命やってて偉い!」ときたろうさん。ご主人も「すげぇ、いいこと言ってもらった!」とうれしそうである。
店は創業20年。店名には、「ほどほどに、これくらいでいいんじゃない?」という意味を込めたとか。料理の世界に入る前は、営業職に就いていたご主人が本格的に包丁を握ったのは25歳の時。それから7年間、様々な飲食店で腕を磨き、平成16年、32歳で「ぬる燗」を開業したのだ。
次のおすすめは、「自家製サバさつま揚げ」。具材は日替わりで、この日はサバ入り。野菜もたっぷり入ったさつま揚げに、「手作りいいね。旨いなぁ〜」と唸るきたろうさん。武藤さんは「ふわっふわですね。中に入ってる具材の食感も楽しい」と目を細めた。
店があるのは、「浅草観音堂裏」と呼ばれるエリアで、江戸時代から花街として栄え、老舗飲食店が建ち並ぶ。荒川区出身のご主人には馴染みのない土地だったが、「知る人ぞ知るエリアに色気を感じて(笑)。生意気ながら、飛び込んだ」と言う。きたろうさんは、「大将は反骨精神があるな」とニヤリ。ご主人も「正直そういう所ありますね」と頷きながら、「知り合いには99%反対されましたけどね」と笑う。しかし、そんな新参者だったご主人を助けてくれたのは、意外にも、古くから近隣で暮らす住人たちだったそうで、「店の前の鉢植えとかも、近所の方が手入れしてくれるんですよ。ありがたいことで、なんとかここまでやってこられた」とご主人。きたろうさんは、「いいねぇ〜。下町のかっこよさだね」と感心しきりだ。
「冷やし鶏胸の麻婆タレかけ」は夏にぴったり!
続いては「生ピーマン明太子マッシュポテト詰め」。生のピーマンを半分に切り、明太子マッシュポテトを詰めたサラダ感覚の一品。パリッと音を立ててかぶりついた武藤さん、「ピーマンがすごくいいアクセント! おいしい〜」と大喜び!
毎日60種類以上のメニューを用意するご主人は、毎朝、足立市場に足を運び、食材を見てメニューの着想を得るという。この日は、さっぱりとした出汁に漬け込んだ「オクラと茗荷の冷やし鉢」が登場! 実は茗荷が苦手だという武藤さんも、思い切って食べてみると、「おいしい! 茗荷克服できました!」と目を輝かせた。
さらに、冷たい料理をもう一品! 中華風の特製麻婆タレがアクセントの「冷やし鶏胸の麻婆タレかけ」をいただく。「夏にいいね!」と喜ぶきたろうさん。武藤さんも、「お肉が柔らかい。大好きです!」と箸が止まらない。
「毎日が楽しい」というご主人。「僕はマイナスという言葉が嫌いで、1日の終わりにプラス1だったらいい。100点満点は求めないんで」と語り、「自分が決めたルールなんて誤魔化せちゃうんだけど、そうするといくらでもいい加減になる。だからそこはきちっと守っていきたい」とも。長く続ける秘訣を聞くと、「お客さんが来てくれるから、なんとか続いてるだけ。お客さんがなぜ来てくれるのかは、お客さんに聞いて!」と笑った。一見ぶっきらぼうなご主人だが、信念を貫く反骨精神と料理の美味しさで、多くのお客さんに愛される人気酒場を作り上げたのだ。
そんなご主人を、常連さんのひとりは、「大将のしゃべりが魅力。カウンターの中でチョロっと出る一言がいい」と言い、自身も飲食業だという女性客は、「私は大将のこと大好きで、師匠って呼んでます。ただ浅草の街中で師匠って呼ぶと誤解される……」と笑って、ご主人も、「浅草だと落語家さんも多くて、どちらかというと私もそういう顔だし……」と苦笑い。客層は幅広く、いろんなお客さんが来てくれるそうだが、ネットを使った集客はしないと断言するご主人。「酒場なんて、飲みたい時に来りゃいいんです!」
最後の〆には、香り豊かな黒舞茸をたっぷり使った「豚ロースと黒舞茸のグラタン」を。きたろうさんは、「う〜ん、旨い! こんな料理もあるんだ」と唸り、武藤さんは「舞茸がメイン! 具材が大きくてゴロゴロしてる」と大満足である。
ご主人にとって酒場とは、「銭湯のような場所。思い思いにくつろいで場を楽しみ、お酒を飲んで、ここちよく帰ってもらえれば」。それを聞いて、きたろうさんは、「心を裸にするってことだね!」と大きく頷いた。