今回訪れたのは、中野駅北口のアーケードを抜け、細い階段を上がった2階にある酒場「ゆきみさけ」。店は上品そうな中高年の常連さんで埋まり、おばんざいの大皿で埋まったカウンターでは、女将の渡邉祐紀さんがテキパキと店を切り盛りする。西島さんが「女将さん、美人ですよね」と言うと、「ありがとうございます。美人と言われた時は、親に感謝しております」と答え、「美人と言われて“いいえ”と謙遜しないタイプなんだ」と、きたろうさんがチクリと返せば、臆する事無く「ええ、親に感謝でございます」と返す女将。
焼酎ハイボールで乾杯すると「お通しを頼んでいただくんですけど、皆さん好き嫌いがあるので、本日のおばんざいからお好きに選んでもらいます」と女将。約10種のおばんざいから、きたろうさんは「にしんのさんしょう煮」、西島さんは「切りこぶとさつま揚げの炒め煮」を注文。女将が一人で作るというおばんざいは、どれも絶品。きたろうさんは「一品の量が多いのは・・・。ちょこちょこ食べたいんだよ」と。すると女将が「私はお通しが少なくて、まずくて季節感が無い店が大嫌いなんですよ」とピシャリ。これにはきたろうさんも「ああ言えば、こう言うタイプ」と、一本取られた様子。続いて頼んだ鹿児島産の生かつお刺(1,000円・税別)も、「薄切りのかつおなんて、美味しくないでしょ」と、ざっくり厚切りでボリューム満点。この女将にはかなわないと、きたろうさん「女将は豪快だねぇ」と降参!
女将はもともと福島の生まれで、この店をオープンしたのも東日本大震災がきっかけだった。「あのとき私は無職だったんです。ボランティアに行きたかったんですけど、うちの母親に“来なくていいから、東京で頑張ってくれ”って言われて。でも、東京で頑張るっていったって何を頑張れば……と思った時に、東北の人にできない替わりに、身近な人に何かやろうと。何が出来る? 資格も何も無い。料理しか出来ないと思って店を始めたんです。みんなに喜んでもらって、その喜びが巡り巡って東北に届いたらいいなと思って」。店を始めるにあたり「始めた以上は、今まで自分が夜飲んでいた事とか遊ぶ事、全部やめて(店を)やろう」と決意。しかし、この3年半は苦労ばかり、最近になってようやく軌道に乗り始めたと言う。
次の一品、愛知県産のあさりを使った酒蒸し(1,000円・税別)をつまみながら、料理をどうやって覚えたのか、西島さんが訊くと「うちの母親は理容師で忙しかったんですよ。母親の作りかけの料理を、理容室に行っては“次どうすんの?”とか聞きながら作ってました。母親の味は覚えていますから、その味に似るように作っていたのかもしれませんね」と語る。今度は、きたろうさんが「口説く人いるでしょ」と訊くと「口説く人には、顔に出ちゃいますね。女で売ってる訳じゃないんで。料理とお酒、居心地で売ってますから」と、これまたバッサリ。女将の女っぷりにすっかり魅せられた西島さんは、いつもより顔が赤く、すっかり上機嫌。女将が子供時代から作っていたという「なすとピーマンの甘辛炒め」を食べて「うわっホカホカ。甘め最高、素晴らしい! これはお酒にあいます!」と、気分も最高潮に!
最後の一品をお願いすると「では、卵のぐじゅぐじゅっていうやつを」と女将。これは卵を半熟に炒め、醤油で味付けしたシンプルなメニュー。これをアツアツのご飯の上に乗せていただくのが、ゆきみさけ流だ。「忙しい母親が、私に目玉焼きを作ろうとして崩れたんだと思うんですよ。それが私は大好きで、ずーっと頭の中に残ってて……」という女将の話を聞き、「福島の風景が、目に浮かんでくるようだよ」と、きたろうさん。郷土料理というより、もっと個人的な思い出が詰まった家庭料理は、その生まれ育った環境を超えて、常連さんの、そして人の心を掴んで離さない。少しでも美味しいものを食べさせたいという、母の気持ちがこもった料理は、人を必ず笑顔にし、その笑顔はきっと広がる。そう確信させる味と想いが、この店にはある。
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お通しはカウンターに並ぶ筑前煮など、10種類のおばんざいから一品選ぶ。お通し300円(税別)
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「お通しが少なくて、まずくて季節感が無い店が大嫌い」という女将。料理はどれも、ボリューム満点。
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女将が子供の頃から作っていたと言う、なすとピーマンの甘辛炒め。少し甘めに仕上げる味付け、女性に人気。750円(税別)
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料理を心から楽しんでもらうために、女将は好き嫌いを聞いてから作る。これぞ究極の家庭料理?
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簡単なようで、実は火の通し方が難しい一品。絶妙な半熟加減を残し、ご飯に乗せて食べると絶品! 卵のぐじゅぐじゅ、ご飯(各350円・税別)
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住所
電話
営業時間
定休日 -
東京都中野区中野5−52−1
海老沼ビル2階
03-6454-0258
18:00〜24:00
日曜 ※祝日は要確認
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