東京都台東区上野で創業56年!
厳しい修業で培った旨い料理で
老舗酒場の暖簾を守り続ける男の物語
イナダを使った絶品!「なめろう」
今宵の舞台は、東京都台東区上野。きたろうさんと武藤さんがお邪魔したのは、JR上野駅広小路口から徒歩5分。酒場激戦区で創業56年の老舗酒場「虎の子」だ。店を切り盛りするのは、父親から二代目を継いだご主人の古塚勲(ふるつか いさお)さん(57歳)。長いカウンターが象徴的な店内で、ふたりは、さっそく焼酎ハイボールを注文して、「今宵に乾杯!」
最初のおすすめは、店の名物“なめろう”。アジではなく、イナダを使うことで、「クセがなく、魚が嫌いな人でも、食べやすい」とご主人。ぶつ切りのイナダはあまり叩かず食感を残すのがご主人のこだわり! 「さっぱりしていて、おいしい!」と武藤さんは恥が止まらず、きたろうさんも、「うん、旨い! 見事!」と納得だ。
店は創業56年。勲さんの父・虎夫(享年57)さんと母・房子さんが、昭和43年に開業した。「昔はこの辺りは旅館街で、店も旅行客で繁盛したと聞いてます」とご主人。当時、上野駅は「北の玄関口」と呼ばれるターミナル駅として賑わい、旅館街に開業した「虎の子」は多くの人たちの憩いの場となったのだ。ご主人曰く、「酒を飲むのが好きな人だった」という先代の虎夫さんは、57歳の若さで他界。勲さんは24歳から家業の酒場で働き始めた。それまでは、「最終的にこの店で働けばいいや、という思いで、いろんなことをやらせてもらった」そうで、高校卒業後はイギリスに半年間留学。帰国後は、20歳〜24歳までバーテンダーとして働いていた。しかし、「虎の子」で働き始めると、待っていたのは、板前さんによる厳しい修業。当時、店では、先代女将である母・房子さんの他に、数人の板前さんが働いていたそうで、料理経験のなかったご主人は、「蹴飛ばされたりとか、お湯かけられたりとか、皿投げられたりとか……。まだそんな時代だった」と苦笑いしながら振り返った。
続いてのおすすめは「チリコンカン」。アメリカ・テキサス州の郷土料理の登場に、「酒場にいることを忘れるな」ときたろうさん。ご主人が新たにメニューに加えた一品だそうで、武藤さんは、トルティーヤチップスにつけていただいて、「なんかおしゃれな味がする。スパイシーだけど辛くなく、トマトソースでもミートソースでもない。でもおいしい!」と感激だ。
母親が引退し、42歳でご主人が二代目を継いでから15年。お客さんの好みや時代の変化に合わせ、少しずつメニューも変えてきたという。「〇〇料理店ではなく、居酒屋なんで、なんでもやろうかな、と思ってます」とご主人。武藤さんは「こんなの食べたいな、という料理が、ここに来たら全部ありそう!」と目を輝かせるのだった。
〆は名物「たくあんパン」!?
さて、ここで、きたろうさんがおかわりしたチューハイを運んできてくれたのは、勲さんの長男・健太郎さん(23歳)。父・勲さんの印象を聞いてみると、「真面目なところも、不真面目なところもありますが、料理に対しては本当に真摯に取り組んでいると思います」と模範的回答! 健太郎さんは大学院で経済の勉強をしているそうで、たまにピンチヒッター的に店を手伝うことはあるものの、「僕、料理がからっきしできないので……」と、店を継ぐことにはまだ少々抵抗がある様子!?
そして、次にいただくのは、「いわしフライ」。ザクザクの衣にかぶりつけば、中身はふっくらほくほくで、タルタルソースとも相性抜群! 「いいイワシがないときは、作らない」というご主人のこだわりが感じられる垂涎ものの一品なのだ。
続いて「カレーかけチキンカツ」が登場! ボリュームたっぷりのチキンカツに牛すじカレーをたっぷりかけた一皿に、ふたりは思わず歓声をあげ、「大将は、人がやらない独創的なのが好きなんだね」と感心するきたろうさん。「ちょっと辛めでスパイシーなのが、またお酒が進む」と武藤さんも大満足だ。
最後の〆は、ご主人自慢のオリジナル料理「たくあんパン」を! 刻んだたくあんをマヨネーズで和えて、コッペパンにたっぷりサンド。意外な組み合わせだが、「たくあんのコリコリ食感がおもしろい! シンプルだけど、クセになる味ですね」とすっかり気に入った様子のふたりだった。
「食べて、飲んで、みなさんが楽しい顔しているのを見るのが、一番うれしい。そのために、自分に妥協せず、やれるだけのことはやって、それでこそ満足できる」というご主人。常連さんからも、「味は当然のことながら、人が魅力。料理もスタッフもお店やお客さんの雰囲気も、全て含めてトータルでまた来たくなる」との声があがり、しっかりとお客さんの心を掴んで離さない老舗酒場たるゆえんが感じられる。
「店を長く続ける秘訣は、楽しむこと。両親がこの場所で店をやり始めてくれて本当にありがたいと思っています」。そんなご主人にとって酒場とは、「人と人がふれあい、カンフル剤になる場所。楽しい時間を過ごす場所であってほしいですね」と、熱い想いを語ってくれた。