中国福建省出身のご主人が
言葉や文化の違いを乗り越え
夫婦で作り上げた人気酒場!
「南煎肝(ナンツェンカン)」を初体験!
今宵の舞台は、東京都北区赤羽。酒場激戦区の赤羽で、きたろうさんと武藤さんが訪れたのは、創業から19年目を迎えた「酒処 将(しょう)」。本格的な中華とおしゃれな洋食の両方を楽しめる人気酒場だ。厨房で腕を振るうのは、中国福建省出身のご主人・張国銀(ちょう こくぎん)さん(60歳)。そして、接客を担当するのは妻のアツ子さん。清潔感あふれる広々とした店内で、ふたりはさっそく、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」
最初のおすすめは、「南煎肝(ナンツェンカン)」。「素揚げした豚レバーのことね」とご主人。にんにくの利いた甘辛ダレと和えてあり、きたろうさんが、「旨い! 食べたことのない料理だ」と感激すると、「多分、他にない。ウチだけ。私の田舎の家庭料理」とご主人が教えてくれた。
中国福建省で生まれ育った張さんは、41年前に日本語を学ぶために来日。アルバイトをしながら日本語学校に通っている時にアツ子さんと出会い、昭和62年、23歳で国際結婚した。「日本の大学に入りたかったけど、途中でママと結婚しちゃって。当時は、外国人と結婚するには壁もあったね」とご主人。「どうやって乗り越えたの?」と聞くきたろうさんに、アツ子さんは「恋愛感情以外にも、外国の文化を学びたいっていう気持ちもあって。それに主人も優しかったし、中国のことを勉強したいと思ったんです」。
「もともと若い時から料理が大好きだった」というご主人は、アツ子さんと結婚後、平成6年に30歳で小さな中華料理店を開業した。その後、平成18年に酒場へと転身し、「将」を開業。2年前に現在の場所に移転して、同時に元フレンチのシェフだった小島尊通(たかみち)さん(32歳)を迎え入れ、中華と洋食が楽しめる酒場へと舵を切ったのだ。
続いていただくのは、「油淋鶏」。カリカリに揚がった鶏肉とタレの相性に「見事だね!」と絶句するきたろうさん。武藤さんもパクリとかぶりついて、「パリパリの皮に滲みたタレがジュワーッとあふれる。甘酸っぱくて、おいしい〜!」と絶賛すると、ご主人は、「ウチのは他とちょっと違うから」と胸を張った。
アツ子さんとご主人が出会った当時、日本はバブル期。「逆に彼はすごく貧しかったし、価値観を合わせるのは大変だった」とアツ子さん。ご主人は、「日本に来た当時、アルバイトの時給は750円ぐらい。それは中国の日給と同じくらいだった。今は逆転しちゃって大変だよ。日本に来るときも貧乏だったけど、今は中国に帰っても貧乏」と苦笑いだ。
酒場でフレンチ!「海老のカダイフオーロラソース」
ここで、元フレンチシェフの小島さんが作る「海老のカダイフオーロラソース」が登場! 華やかな一皿に、「おしゃれ〜!」と歓声をあげる武藤さん。カダイフとは中東で食べられている伝統食材で、小麦粉やトウモロコシの粉で作られる細麺。小島さん曰く、「今ではフレンチの定番」だそうで、パン粉のかわりにカダイフを使って揚げたエビフライは、「パリパリした食感が普通のエビフライより多い! でも口当たりは優しくて繊細」と、武藤さんもうっとり!
続いて、「家常豆腐(ジャージャントウフ)」を。豆腐、チンゲン菜、キクラゲ、玉ねぎ、長ネギ、豚バラ肉を炒め合わせ、唐辛子や豆板醤などで味付けした家庭料理に、「辛さの中に甘みや旨みがあっておいしい! 家にありそうな食材ですが、この味は出せない。ごはんが欲しくなる〜」と箸がとまらない武藤さんだ。
店名の「将(しょう)」は、長男・将博(まさひろ)さんの名前が由来だとか。残念ながら、将博さんは店を継ぐ予定はないそうだが、開業から18年、美味しい料理と夫婦の温かい人柄で、多くの常連客から愛される人気酒場となった「将」。常連さんたちからも、「実家みたいな雰囲気」、「料理が何でもおいしい」、「マスターはすごく優しいし、ママはお母さんみたいで、いつも悩みを相談しちゃう」などの声が!
しかし、店を開業するまでは様々な苦労があったそうで、ご主人は、「ずっとアルバイトして資金を貯めました。ジュースを買うのももったいなくて、自販機に100円入れてもやっぱり買えなかった」と当時の苦労を振り返る。そして、「言葉の壁もあるし、わがまま言って自分のやりたいことやってる。それをママが全部助けてくれて、すごい感謝しています。出会わなかったら今はない」と語り、「大切にしているのは、いつも支えてくれる家族といつも来てくれるお客さん。安くて美味しい料理を提供して、喜んでもらえるように頑張りたい」と話してくれた。
最後の〆は、小島さんが作る「ナポリタン」。隠し味に醤油を加え、ケチャップで仕上げたコク旨ナポリタンに、きたろうさんは「これがナポリタンだよ!」と大興奮。武藤さんも、「麺がモチモチして、濃厚でクリーミー。おいしい!」と大満足だ。
「まだ日本をあまり旅行してないから、全国の温泉を周ってみたい」と目を輝かせるご主人。「店を増やしたいとも思うけど、体力が持つかだね」と笑い、「夢はお客さんと家族みたいに楽しんでやっていくこと。酒場とは、家族になれる場所だね」と穏やかな笑顔を見せた。