東京都葛飾区立石で創業67年!
再開発が進むエリアで
受け継がれていく老舗酒場の暖簾
備長炭で焼く「もつ焼き」は1本99円!
きたろうさんと武藤さんがやって来たのは、東京都葛飾区立石。かつては駅周辺に400軒を超える飲食店が点在し、千円札1枚で酔える「せんべろ」の聖地と呼ばれた立石だが、現在は再開発の真っ只中! そんな立石でふたりが訪れたのは、創業67年の老舗酒場「三平」だ。焼き台の前で腕を振るうのは、三代目主人の望月昌(まさる)さん(59歳)。そして、接客を担当する妻の洋子さん(59歳)と四代目を受け継いだ長男の謙次さん(31歳)が家族で暖簾を守っている。昭和の風情が残る店内で、さっそく、ふたりは焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」
最初のおすすめは、備長炭で焼くもつ焼き。「ナンコツ」と「豚ネギ間」を塩で食し、「いいねぇ」と舌つづみを打つきたろうさん。武藤さんも「ナンコツ」をコリコリと噛みながら、「お肉の旨みがすごく出てくる」と感激。しかも、この串が1本99円(税込)(※注文は2本から)とは驚くばかり!
昭和33年、ご主人の父・忠三郎さんが創業した「三平」だが、忠三郎さんは、ご主人が小学1年生の時に42歳という若さで他界。二代目を受け継いだのは、母親の八重子さんだった。「当時は、女性がもつ焼きを焼くってどうなの?という感じもあって。母は泣きながら、もつ焼きを焼いてました」とご主人。そんな母親の背中を見て育ったご主人は、高校卒業後、少しでも母親を助けたいと、18歳で家業を手伝い始めたのだ。昨年の11月に92歳で他界した八重子さん。常連さんたちからも「いいお母さんだった」、「優しくて、よく面倒を見てくれた」と懐かしむ声がもれた。
続いては、創業時から続く秘伝のタレでいただくもつ焼き。豚の食道の筋肉「キンツル」と「レバ」だ。弾力ある噛み応えの「キンツル」に、「噛めば噛むほど味が!」と目を輝かせる武藤さん。きたろうさんは、「レバ」を食べて「何これ!ってくらい旨い。タレの甘みも何とも言えない」と絶賛だ。
三代目に代替わりしたときは、お客さんからの厳しい反応も多く、「肉は固いし、タレはしょっぱい。全然、昔と違う」などと言われたこともあったとご主人は言う。それでも、それを真摯に受け止めて努力を続け、今では常連さんたちから、「すごく頑張っていた」、「子供の頃からのタレの味を大将が今も守ってくれている」と感謝されるほどに。さらにそれまでのメニューに加え、炒め物や揚げ物等も提供するなど、時代に合わせて臨機応変に対応し、お客さんからの「おいしかったよ!」「また来るよ!」という言葉を励みに頑張っているのだ。
チューハイが進む!「塩ホルモン」
さてここで登場したのは、四代目を継いだ謙次さんが作る「塩ホルモン」。白モツを塩と黒胡椒で味付けして炒めた一品は、お店の一番人気だそうで、チューハイが何杯でもイケそうな味わい。きたろうさんも、「出しゃばり過ぎない味で、息子が謙虚に作ってる感じだね(笑)」と箸が止まらない。
謙次さんが店に入ったのは22歳の頃。大学生の時に飲食店でアルバイトをしたことがきっかけで、「店を守らなければ、継がなければ、という意識が芽生えた」という。そして、「もうこの仕事しかないと思ってます」と胸を張って答える様子は、さすが老舗酒場の四代目! ご主人も、謙次さんが跡継ぎになってくれたことを喜び、「助かります。私は料理に集中するだけ」と、妻の洋子さんと穏やかな表情を見せる。そんな洋子さんとご主人の出会いはなんと47年前! ふたりは中学校の同級生だったとか。23歳の時に洋子さんが「三平」を訪れて再会したのを機に意気投合し、1年後に結婚。以来、洋子さんは35年にわたりご主人を支えてきたのだ。
ここで次のおすすめ「チージャガ」が登場! 薄スライスしたジャガイモをバターで炒めてチーズをかける。黒胡椒が利いたしっかりした味つけは、おつまみにもぴったりだ!
三代目を受け継いで41年。ご主人が今でも守り続けている母・八重子さんの教えがある。それは、「もつ焼きは絶対炭で焼くこと」、「もつ焼きの大きさを維持すること」。再開発が進み、変わりゆく立石で、母の教えを胸に、老舗酒場の暖簾を守り続けるご主人。「再開発後も昭和の雰囲気が残っているような温かい街が戻ってきてくれたらなぁと思いますね」としみじみ語った。
そんなお店の魅力は、「家族的なところ。言わなくても、好きなものを分かってくれてる」と常連さん。ご主人や謙次さん、洋子さんと冗談を言い合いながら、和気あいあいとしたやりとりを交わす常連さんたちの様子に、きたろうさんは、「いいお客さんに恵まれてるねぇ」と感心するばかりなのだった。
最後の〆は、「明太焼きそば」。たらこスパゲティから着想を得たというご主人考案のオリジナル料理だ。ソースを使わず、明太子と塩で味付けした焼きそばは、「和風と洋風が入り混じったような感じ」と武藤さん。きたろうさんも「何とも言えずおいしい!」と大満足。
「今後の夢は、この店を続けること」と謙次さん。酒場とは、「憩いの場。癒しを求めて来てもらえたら」と話し、洋子さんは、「一人で来ても楽しめる場所。三平もそうでありたい」。そして、最後に、ご主人が、「酒場とは、友愛」とバッチリ締めくくってくれた。