東京都墨田区押上で創業30年
おしどり夫婦が営む老舗酒場で
東京産食材を使った絶品料理を堪能!
看板メニューは「東京の野菜盛り合わせ」!
今宵の舞台は、東京都墨田区押上(おしあげ)。きたろうさんと武藤さんがお邪魔したのは、押上駅から徒歩4分、創業30年の老舗酒場「押上よしかつ」だ。「地場産品応援の店」と書かれた緑の提灯が揺れる入り口を進むと、ご主人の佐藤勝彦さん(56歳)と妻の佳子さん(61歳)に迎えられ、ふたりはさっそく焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。
緑の提灯は、国産食材を50%以上使用している店の印だそうで、なかでも90%以上使用している「押上よしかつ」は、星5つ。さらに、「とうきょう特産食材使用店」(東京産農林水産物を年間通じて使用している店)にも登録されているのだとか。
そんなお店の最初のおすすめは、東京近海で獲れた「刺身三点盛り」。この日は、東京都式根島産の真鯛、東京湾産のスズキとスミイカの三種。真鯛は皮目を炙り、スズキは東京湾産の昆布で締める。さらに江戸東京野菜である奥多摩わさびでいただくというこだわりよう! さっそく真鯛を食して、「なめらかでおいしい! 炙ってるから香りもいい」と感激する武藤さん。きたろうさんは、スズキの昆布締めに「シコシコしてる。昆布がまた旨い!」。
東京都北区十条出身のご主人は、大学を卒業後、大手スーパーに就職し、生鮮食品を担当した。平成6年に26歳で独立すると、まずは墨田区鐘ヶ淵にもんじゃ焼き店「佳勝」を開業。7年後、妻の実家があった現在の場所に移転し、「押上よしかつ」として本格的な酒場に舵を切ったのだ。
続いてのおすすめは、タジン鍋で蒸しあげた「本日の東京の野菜盛り合わせ」。「シントリ菜、馬込三寸ニンジン、東京長カブは江戸東京野菜。馬込三寸ニンジンは西洋野菜が導入された明治時代に日本に定着したニンジンで、大根のように長いのが東京長カブです」とご主人が丁寧に説明してくれる。他にもブロッコリーやしいたけなど東京産の野菜が盛りだくさんで、自家製醤油麹をつけていただけば、「野菜の旨みが引き立ちますね」と目を細める武藤さん。きたろうさんも、「いや〜、旨いっ」と唸り、「こうやって説明を聞きながら食べるとフランス料理みたい。野菜が喜んでる感じがするね」と感心しきりだ。
〆は東京食材尽くしの「もんじゃ焼き」
飲食に関する7種類の資格を取得しているご主人。東京食材にこだわるのは、「食材を身近に感じられるし、輸送のコストやエネルギーも削減できる。それに、なんといっても、生産者の顔を見て食材を選べるので、誰がどういうふうに作っているのかをお客さんに伝えることができる」。ご主人自ら足を運んで東京食材を仕入れている渡戸ファーム(わたど/東京都練馬区)の園主・渡戸秀行さんも、「大将は変態! 最高の誉め言葉ですが(笑)。彼はこだわりの塊で、自分の気に入った食材しか使わないし、その食材の良さを引き出して味を追求してますね」と話してくれた。
そんなご主人が、この日、渡戸ファームで仕入れたのはシントリ菜と練馬大根。それらを使った「揚げだし豆富」が次の料理だ。なんと、豆腐もご主人の手作り(大豆は西多摩郡日の出町産)で、「ふわふわ。お出汁が滲みてておいしい〜」と武藤さん。きたろうさんも「いやぁ、なんとも、いいねぇ」と喉を鳴らした。
店名「よしかつ」は、「佳子(よしこ)」と「勝彦(かつひこ)」の組み合わせ。ご主人がもつ焼き店「佳勝」を開業して以来、佳子さんは共に働き、30年にわたってご主人を支え続けてきた。高校卒業後、会社員として事務の仕事に就いていた佳子さん。ふたりは知人の紹介で交際を始め、平成5年に結婚した。
「お互い食べることとお酒が好きだったから」と言う佳子さんに、ご主人も「“食”も合うし、一緒に飲みに行っても楽しかった。人生、酒がなかったら、半分つまんないから!」と笑う。それを聞いて、きたろうさんは、「俺とおんなじ意見! 半分以上だよ!」と大きく頷くのだった。
続いては、東京のブランド豚「TOKYO X」を使った「東京豚の島たれ焼き」。伊豆大島産の明日葉(あしたば)と一緒に炒め合わせ、青ヶ島の調味料「鬼辛をアレンジした自家製ダレで味付けする。「意外とクセがなくて、香りもいいね」と大満足のきたろうさん。武藤さんは、「後味がピリっとして、チューハイが進む」とグビグビ!
とにかく東京食材のことを知り尽くしているご主人。その様々な話を聞けば、食材はもちろん、産地にまで興味がわいてくる。実際、ご主人の話を聞いて、産地に足を運ぶお客さんもいるそうで、この日来店していた常連さんも、「ご主人も女将さんも勉強熱心。いろいろな知識も共有してもらって勉強になる」と話すのだった。
最後の〆は、「自家製紅生姜と玉子のもんじゃ」。キャベツや小麦粉、卵など、主な具材はすべて東京産。テーブル備え付けの鉄板で、下町育ちの武藤さんがもんじゃを焼き上げる! アツアツをいただいて、「キャベツの甘みをすごく感じる」と武藤さん。きたろうさんは「食べれば食べるほどおいしい!」と、もう止まらないのだった。
ご主人にとって、酒場とは、「食との出会いの場。料理あっての酒。酒あっての料理。そして、いろいろと自分を考え直す場所」と、なかなかに深いお言葉、いただきました!