料理が好きでしょうがない!
料理人人生36年のご主人が作る
旬の食材にこだわった絶品料理!
豪華すぎる「刺身盛り」に絶句!
今宵の舞台は、東京都荒川区西尾久(にしおぐ)。東京さくらトラム(都電荒川線)小台(おだい)停留場から、きたろうさんと武藤さんが向かったのは、旬の食材にこだわった絶品料理が味わえる人気酒場「旬菜 あかり」。清潔感あふれる明るい店内で、ご主人の槙島一嘉(まきしま かずよし)さん(56歳)に迎えられ、さっそく、ふたりは、焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」
最初のおすすめは、今が旬の「若竹の子 炙り正油焼き」。茹でた若筍を炙り、出汁醤油を垂らす。きたろうさんは、「春だね! 素晴らしい!」と感激し、武藤さんも、「柔らかくてほんのり甘い〜。筍の風味が口に広がる〜」とうっとり!
店は創業16年目。ご主人が41歳の時に開業したそうで、「当時は奥さんがいたんですが……」と苦笑い。「買い物に出たまま帰って来ず(笑)もう10年」ととぼけるご主人に、きたろうさんは、「よくあるパターン(笑)」と訳知り顔だ。そんなご主人は、台東区三ノ輪で生まれ育ち、学生時代はプロ選手を目指してサッカーに打ち込んだ。しかし、度重なるケガで夢を断念。19歳からは料理人の道へ入り、35歳の時、知人の誘いでドイツへ。「当時ヨーロッパは和食ブーム。ドイツの日本料理店で板前として寿司を握ってました」。そして、5年後に帰国したご主人は、ドイツで知り合った当時の妻とともに「あかり」を開業。「蛍の優しいあかりに人々が集まる様子」をイメージして命名したと教えてくれた。
続いてのおすすめは、「山菜の天ぷら盛り合わせ」。具材は、行者にんにく、ふきのとう、タラの芽。サクサクと軽い食感で、一口噛めば口の中に香りが広がる春の味覚に「このほろ苦さが好き。これまたお酒が進む!」とゴキゲンな武藤さん。きたろうさんも、「揚げ方が上手い!」と感心しながら、「美味しいものを食べるってのはいいね。会話も弾む」とうれしそうに頷いた。
ここで、店の名物「お刺身四点盛り合わせ」が登場! ご主人は、開業以来、毎朝、足立市場に足を運んでいるそうで、その目利きは、仲買人からもお墨付き。この日は、本マグロ中トロ、アワビの酒蒸し、とろサーモン、イイダコ(※仕入れにより内容は変わります)という豪華な内容で、立体感ある盛り付けも華やか! きたろうさんが「見るからに、1万円って感じだね」と言うと、ご主人は、「いやいや、1,980円です」と平然と言ってのけ、「本当に!? アワビが入って??」と絶句。さっそく、本マグロの中トロからいただいて、「うんまいっ……」と唸り、続いてとろサーモンを口に運び、「常連さんは、こんな店が近くにあっていいねぇ」と呟いた。
ため息がでる旨さ!「蓮根饅頭のカラスミあんかけ」
「メニューはひらめき」と言うご主人。「その日に仕入れた良い素材から、メニューを決めます。だから季節によってかなり変わりますし、お通しも同じものを出したことはない」と胸を張る。もちろんその実力は、20年を超える厳しい修業時代があったからこそ! ふぐ料理店、寿司店、川魚料理店、ドイツの日本料理店と修業を重ねたご主人は、「修業は本当に厳しかった」と振り返った。
「ところで、2度目の結婚はしないの?」ときたろうさん。ご主人は、「実は僕、バツ3なんで……」と頭を掻き、「料理に集中しすぎてダメなのかな……。好きでしょうがないんですよ、料理が。もはや仕事じゃない」とのこと。武藤さんは、「じゃぁ、料理と結婚してるってことですね!」とうまくまとめた。
36年間、料理一筋で働き続けてきたご主人だが、開業3年目の頃、病で休業を余儀なくされた経験も。常連さんによると、「当時、奥さんから、マスターが心筋梗塞で倒れたからしばらくお店ができない、というメールが来たんです」。救急車で搬送され、10日間の入院を経て病を乗り越えたご主人は、無事仕事復帰。店を再開することができたそうだ。
続いては、創作料理「蓮根饅頭のカラスミあんかけ」を。お椀の蓋を開けると、出汁の香りがたちのぼり、蓮根饅頭の上にはすりおろした自家製カラスミがたっぷり! 「カラスミの塩味がいいと思います」と言うご主人の言葉を、そのまま繰り返すばかりのきたろうさん。とにかく美味しすぎる一品に、思わずため息をもらすのだった。
最後の〆は、「ローストビーフ握り寿司」! すりおろしリンゴ、白ワイン、醤油で作った特製ソースをかけ、仕上げに煮詰めたバルサミコ酢も少々! きたろうさんは、「ローストビーフって、お寿司にのっけても合うんだねっ」と頬が落ちそうな様子で、武藤さんも「筋もないし、柔らかくておいしい〜」と目を細めた。
毎朝、市場から戻ると、午後5時の開店に向けて、すぐに仕込みに取り掛かるというご主人。「お客さんに『おいしかった!』と帰っていただくのが一番。そのためにやっているし、それが楽しい。面倒くさいという感覚は全くなくて、手がかかればかかるほど、おいしい料理ができる!」と料理への情熱があふれる。そんなご主人にとって、酒場とは「愛」。「その一言に、お客さんとの触れ合いとか、料理への愛とか、すべてが詰まってるね」と満足気なきたろうさんである。