“一寸一ぱい お気軽に”と書かれた赤ちょうちん。扉を開けると、使い込まれたL字カウンターに、ニコニコ顔のご主人・満留芳廣さんと女将の礼子さんが出迎えてくれる店、その名も「赤ちょうちん太郎」。「なんで夫婦ってのは、顔が似るんだろうねぇ」と、きたろうさんが言うほどの似たもの夫婦。30年も通っているという常連さんに囲まれ、焼酎ハイボールで乾杯。壁じゅうに張り出されたメニューから、ご主人が「そりゃもう最高です!」とオススメする鹿児島産の地鶏の刺身をいただく。ほんの少し焼いて食感を増した地鶏の刺身は、ピンク色に光るほどに新鮮。ご主人と女将の笑顔に、うまいつまみ。杯を傾けながら「店の感じが楽なんだよねぇ、また来たくなる感じ、分かるなぁ」と、リラックスするきたろうさん。
ご主人の郷里は鹿児島だが、女将の出身は青森。南と北に離れた二人を結んだのは、ご主人の包丁修行だった。自身「ちょっと放浪癖があって……」というご主人は、割烹旅館で住み込みで働いたことから料理の道に入り、それから日本全国で修業。飛び込みで様々な飲食店や旅館で働き口を得て、その土地その土地の食材や料理を学んでいった。住み込みの食事つきで月1万円のお給料。そんな生活を繰り返すなか、たどり着いた青森で女将と出会ったのだ。「青森なんてね、みんな方言でしゃべってるから、いい男でもカッコよくないんですよ。だけどさ、カッコよくなくても東京弁でしゃべられると、“やっぱり都会の人は違うんだ”なんて思っちゃったんですよ」という女将。そこですかさず「(ご主人の)出身は鹿児島ですよ!」と突っ込むきたろうさんと西島さん。駆け落ち同然で東京にやってきた女将は19歳。5歳のサバを読んでいたご主人が、28歳の時だった。
次のつまみは自然薯、納豆、オクラを使った、その名も「粘りの御三家」。箸でつまみ上げられるほど粘るこの一品は、オリジナルブレンドの醤油をかけていただく。ヘルシーなところが気に入った西島さんは「最高! コレはいくら食べても罪悪感がないです」と大喜び。続いて店の定番メニュー、注文を受けてから包んで焼くという「手作り自家製ギョーザ」をいただくことに。かつて中華料理店でも修行したご主人が作る餃子は、豚の挽肉とニラ、ニンニク、白菜がたっぷり入る。「ちゃんとニラが入ってるねぇ。焼き方もカリカリでうまい!」と、きたろうさん大絶賛。これまでの料理は、どれも400〜600円。この店の料理はほとんどがその値段で、相当にお財布に優しい。
さて、この店に入ってどうしても気になるのが、ご主人の頭に乗った小さな輪っか。これは豆絞りの手拭いで作った鉢巻で、仕事始めに気合を入れるため、かれこれ50年続けているのだとか。きたろうさんが試してみると、すぐに落ちてしまう。「これは坊主じゃないとね。それに(頭の)場所もココって決まってます」と誇らしげなご主人。そんな個性的なご主人と一緒になって良かったか、女将に聞くと「良かったと思ってますよ。あんまり苦労してませんから」とキッパリ。逆にご主人に聞くと「愛は変わんないですよ。エヘヘ、同じです」と答える。おしどり夫婦とは、まさにこんな夫婦のことをいうのかもしれない。
恒例の“最後のこれだけは食べて帰って欲しい一品”をお願いすると、刺身でも使った鹿児島産地鶏の「鶏のつくね揚げ」が登場。塩とショウガでシンプルに味付けした地鶏ミンチを、140度の油でじっくり揚げたメンチカツ風の料理は、肉汁たっぷり。これにはきたろうさんも「いや〜見事だね、オヤジ!」と唸る。そんなきたろうさんを前に、ご主人は言う。「お客さんが楽しく飲んで、しゃべって、それで笑顔で帰る。最高でしょ。(酒場は)私にとって、この上ない楽園です。最高の居場所です」。そんなご主人の話を聞いた女将は「私はお客さんたちにとって、楽園であってほしいなと思ってます」と言う。しかし、ご主人と女将が楽しそうでなければ、お客も楽しくない。その点、この店はいつ来ても楽園なのだ。
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ご主人の故郷、鹿児島産の地鶏を使った刺身。ニンニク、ショウガ、ワサビから薬味を選んでいただく。地鶏の刺身600円(税別)
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自然薯、納豆、オクラという、夏バテの時にパワーをくれる素材を使用。粘りの御三家500円(税別)
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注文を受けてから、ご主人が包んで焼く。カリカリっとした絶妙の焼き加減もポイント。手作り自家製ギョーザ500円(税別)
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鶏のメンチカツといった感じのつくね揚げ。パサつかず、鶏のうまみを見事に閉じ込めている。つくね揚げ400円(税別)
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住所
電話
営業時間
定休日 -
東京都世田谷区宮坂3−12−4
ドム経堂1F
03-3426-5588
16:00〜24:00
日曜
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