小田急狛江駅前に、もう一つのステーションがある。長いカウンター越しに、常連さんと酒と料理が交錯する酒場「ミートステーション」だ。「ココはニク(肉)らしい出合い(ミート)の場なんですよ」と、洒落っ気たっぷりに説明してくれたのは、ご主人の永瀬秀夫さん。きたろうさんは「なんだかなぁ、焼き鳥屋でいいじゃんよぉ」と笑いながら、まずは焼酎ハイボールで乾杯。そしてご主人が“他にはない!”と胸を張る串焼き「網レバー」と「牛すじ」をいただく事に。網レバーは、火を通すとパサパサした感じになりやすいレバーに、網脂を巻き付けて焼いたもの。食感がしっとり柔らかく、レバーが苦手な人でも食べられるという。また牛すじ串は、「牛すじって煮込まないと食べられないイメージがありますけど……」という西島さんの思い込みを覆す柔らかさで、噛むほどに味が広がる逸品。丁寧な下ごしらえの賜物だ。
もともと鮨職人だったご主人が、店の大家に誘われて酒場をオープンしたのが38年前。お客として出会った女性と結婚し、現在は息子と共に店を切り盛りしている。「店を継ぐかどうかは親父次第ですが、その準備はしてるつもりです」と、頼もしいことを言う男前の二代目。そんな彼の自信作がハンバーグだ。ご主人が「負けた!って感じです」と絶賛するそのハンバーグは、豚のひき肉に、タン、ハツ、カシラ、軟骨等を細かく刻んで混ぜ、2日ほど肉を馴染ませてから焼くという手間のかかった一品。「俵型だ!美味しそう!」と声を上げる西島さんに、「モツが入ってるから、クセがあるのかと思ったけど全然ないね。このソースも美味しい」と、きたろうさんも大満足。こんがり、かつジューシーに焼き上がげたハンバーグと、トマト、タマネギ、セロリなどを3時間煮込んで作ったソースとの相性は抜群だ。
店を長く続ける秘訣を聞くと「世の中の動きに流されず、自分の信念を持って、やり続けること」と語るご主人。しかし、その道のりは決して平坦ではなかったという。「息子が生まれた頃、バブルの絶頂期で店員募集をしても誰も来ないんです。誰も子供を預かってくれないので、人通りの少ない裏に車を持ってきて、ヒーターを入れると危険だから、お湯を沸かした寸胴を車に入れて寝かせてました。それを見かねた、近くのこんにゃく屋のおばさんが“じゃあ見てあげるよ”って……」。そう語りながら、涙を潤ませるご主人。「息子ぉ!覚えてんのか?」と、きたろうさんが訊くと「車の記憶は無いですけど(笑)、そのおばちゃんの家にいた事は覚えてますし、もう育ての母みたいな人です。成人式には、袴姿でおばちゃんの家に行きましたよ」。家族を守るためがむしゃらに働く夫婦と、それを支えた人達の間には、いつしか固い絆が生まれていったのだ。
最後のシメの一皿は「うどんカレーチーズ」という名のグラタン。ヘビー級の一品だが、牛すじから取った出汁を使ったカレーと、モチモチのうどんの相性がよく、「これは止まらなくなるぅ!」と西島さん。「はじめてなのになんだか落ち着く味。うどんも元は小麦粉だから、グラタンみたいになるんですよね。このアイデアはスゴい」と大絶賛だ。そんな満足げな西島さんを笑顔で見守りながら、ご主人は酒場を「自分も、お客さんも輝ける場所」だと語る。酒と料理で常連さんの笑顔を輝かせ、同時に黙々と包丁を振るうご主人も輝いていた。二代目は言う「毎日、仕入れや仕込みで1日12時間くらい立ちっぱなし。それをもう40年もやってるなんて、スゴいなって。今から40年、自分がやれるかって思うと、想像つかないですよ。かっこいいなって思います」。そんなかっこいいご主人に会うために、ちょっと途中下車をしたくなる駅が、ミートステーションなのだ。
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豚の網脂を巻いてコクとしっとりした食感を出した網レバー。そして他では食べられない、柔らかな牛すじ串。各1本150円(税別)
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豚ひき肉にカシラやタンなど異なる部位の肉が入っており、異なる食感が楽しめる。ハンバーグ500円(税別)
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グラタンのマカロニの代わりに、うどんを使う。牛すじダシのしっかりした味が、カレーに活きている。うどんカレーチーズ500円(税別)
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住所
電話
営業時間
定休日 -
東京狛江市東和泉1−20−4
03-3489-1192
16:00〜24:00
不定休
- ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。