西日暮里駅から徒歩3秒!?
家族で営むアットホームな人気酒場
50歳で自分の城を構えた男の物語!
6種類の刺身が味わえる「ちょこ盛り」
今宵の舞台は、東京都荒川区西日暮里。きたろうさんと武藤さんがお邪魔したのは、山手線・千代田線西日暮里駅道灌(どうかん)口すぐの「花ゆず」だ。厨房で腕を振るうのは、ご主人の杉原達也さん(65歳)と長女の琴音さん(34歳)。そして、妻の江里子さん(64歳)が接客を担当している。アットホームな雰囲気の店内で、ふたりはさっそく焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」
最初のおすすめは、6種類の刺身が味わえる「ちょこ盛り」。少しずついろんな種類を食べたいというお客さんのリクエストから生まれたメニューだそうで、この日は、もったりとした味わいのあん肝、皮目を軽く炙ったノドグロ、脂ののった本マグロ(腹上)、新鮮な太刀魚、水ダコ、ウニという贅沢な内容。どれもこれも鮮度抜群! 唸るばかりのふたりである。
新潟出身のご主人は、もともと日本酒の醸造・加工に興味があり、東京理科大学で理学部を専攻したという。しかし、大学在学中に始めた飲食店でのアルバイトがきっかけで料理の楽しさを知り、料理人を志すように。大学卒業後はアルバイト先だった飲食店の運営会社に就職し、10年後には経営なども任されるようになった。しかし、「料理人の道からは遠ざかってしまった。やっぱり自分の店をやりたい!」と、30年勤めた飲食店を退職。当時、同じ店で働き始めていた娘の琴音さんと共に、平成23年に「花ゆず」を開業し、50歳から第二の人生を歩み始めたのだ。ちなみに店名の「花ゆず」は次女の名前「柚花(ゆずか)」から命名したそう。
さて、次のおすすめは、ご主人の故郷・新潟県糸魚川の郷土料理「車麩の揚げ煮」。卵をつけて揚げた車麩を豚バラと一緒にめんつゆで煮込む。武藤さんは、さっそくいただいて、「食べた瞬間、お出汁がじゅわ〜っ!」と目を細め、きたろうさんも、「旨い! 初めて食べたよ!」と感激だ。
ところで、開業から5年後に「花ゆず」で働き始めたという妻の江里子さん。それまでは会社勤めをしていたが、会社が終わると店に来て集客のためのある任務を担っていたという。「カウンターでサクラをしてもらってたんです。一人いるだけで入りやすさが全然違う。おかげで女性ひとりのお客様も結構多いんですよ」と明かすご主人。10年前に会社を退職し店を手伝い始めたが、「接客の仕事は全く経験なくて、始めは大変でした」と言う。きたろうさんは、「今もまだ女将さんっぽくないもんね(笑)。でもそれがいいんだよ」と頷くのだった。そんな江里子さんとご主人との出会いは44年前。江里子さんが、ご主人が勤めていた飲食店の常連客で、ご主人いわく、「会った瞬間、結婚するか! ってなった。なんかビビビっときたんですよね!」
新潟から直送の「ゆで紅ズワイガニ」と「甲羅焼き」
続いていただくのは、「サバポテトサラダ」。焼きサバと柿の種入りのポテトサラダに自家製のカラスミを乗せた変わり種! 武藤さんは、「こんなにいっぱい入ってるのに、ちゃんと味が合ってる」と感激し、「ポテサラがクリーミーだから、カラスミもいいアクセント」とうっとり! そして、「もうカラスミないよ」と物欲しそうなきたろうさんに、「私のを狙わないでください!」とけん制を入れた。
ここで、父親と共に酒場を立ち上げ、今では両親を支える頼もしい存在となっている長女の琴音さんに話をきくことに。父親から一緒にお店をやろうと誘われた時、「二つ返事で“いいよ”と言った」そうで、父親に教わりながら料理を学んだという。琴音さんいわく「父は優しくて、母は厳しい(笑) 最終的に締めてくれるのが母」という、バランスのとれた家族。ちなみに、ご主人は家庭でも料理をするそうで、「掃除、洗濯、料理。全部やります」とのこと。素晴らしい!
常連さんたちからも、「家族仲良しでママも優しい(笑)」、「美味しいし、気を遣わなくていい」と愛される「花ゆず」。常連さんのひとりである町会長さんも「実直に、客の目を見て仕事してる。街としても感謝してますよ」と太鼓判を押した。
次に登場したのは、「小海老のかき揚げ」。ボリューム満点の大きなかき揚げをザクザクといただけば、「玉ねぎの甘みがすごい! エビもプリプリでおいしい! みんなで分けて食べるの楽しいですね」とうれしそうな武藤さんだ。
〆は、新潟で旬を迎えた「ゆで紅ズワイガニ」! 「姉が糸魚川で漁師をやってるので、その関係で月に2回送ってもらってます」とご主人。身がたっぷり詰まった紅ズワイガニを口いっぱい頬張って、「贅沢だなぁ〜」とため息をつくきたろうさん。武藤さんは「しゃべれなくなっちゃう……」と、もう夢中だ。そして、最後にはさらなるお楽しみも! 卵かけご飯をカニの出汁とカニ味噌で味付けし、甲羅に盛り付けて表面を焼き上げた「紅ズワイガニの甲羅焼き」。「おいしいー! すんごいカニの味がしますね。贅沢!」と最後の最後まで大興奮なのだった。
店をやる上で大切にしているのは、「暇でも辛抱して続けること。やったからにはひかない。家内と娘にも支えてもらってるので!」。そんなご主人にとって酒場とは、「究極の癒やし」。いつまでも大事にしたい幸せな酒場である。