BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2015/8/01放送 #60 酒喰洲

「おいしい」の一言のために鮮度にこだわり続ける元海上自衛官のご主人は今日も港へ!
外房から直送する鮮魚の圧倒的な旨さ

「酒喰洲(しゅくず)」は、人形町で創業10年目を迎える立ち飲みの店。常連さんと肩を寄せあいながら飲む、気取り無用の一軒だ。焼酎ハイボールで乾杯し、ご主人の櫻井満さんに最初のおススメを訊くと「うちは魚料理専門。外房の鴨川や和田のハマまで魚を仕入れに行くんです」と言う。「鴨川まで! 遠いじゃん!」と千葉育ちのきたろうさんはびっくり。片道2時間かけて仕入れるという自慢の魚から、この日は黄金あじと平目、金目鯛の豪華お刺身三点盛りをいただくことに。これがまた、新鮮な魚はこんなに甘いのかと驚くほど。市場で仕入れずハマまで足を運ぶ理由を聞くと「お客様が“お前の店は魚が自慢だと言うけれど、今日獲れたての魚は無いだろう”と言われたんです。だったら“金を出せば俺がハマに行って、朝獲れた魚をお前等に食わせる”と言って、冗談で1回やったんですよ。そしたら魚がスゴいのもさることながら、お客さんが本当に喜んでくれて。それを週1回やってたら、僕自身がハマっちゃって」。

そんな客思いで凝り性のご主人は、変わった経緯で料理の世界に入った。「北海道育ちだから内地に行きたくてねぇ。でも金もなくて職安をぶらついてたら、自衛隊に勧誘されて、横須賀配属の海上自衛官ですよ。甲板要員になりたかったけど、高所恐怖症でマストの上で手旗信号なんて絶対出来ないから、飯炊きになったんです」。任期を終え、コックになろうとフレンチ修業で札幌のレストランに入ったご主人だったが……。「ちょうどコックさんが辞めちゃってね。そこは鮭料理専門のレストランで、僕が覚えてた古い昔ながらのソースで出したら、すぐに支配人から呼び出されて、“うわ、クビかな”って思ったら“このソースはなんなんだ!”と。“こんなに美味しいソース!”って」。「そんな漫画みたいな!」と呆れつつ「出会いに恵まれてるねぇ」と、きたろうさんは早々に焼酎ハイボールをおかわりし、その「出世ソース」を味わうことに。シコイワシの塩辛、いわゆるアンチョビのソースを使った鮭のステーキは、立ち飲み酒場とは思えない豪華さ。西島さんも「身がプリプリ! ソースもくどいアンチョビじゃないから、スゴく食べやすい」と、出世ソースに大満足。

魚を大事に食べて欲しいと願う気持ち

次の一品は、珍しい「クジラの煮込み」。クジラが水揚げされる五港のひとつ、和田港で仕入れるというクジラは、ほとんどが地産地消されてしまうため普通は味わえない貴重な素材だ。プルンプルンとした皮の食感が、なんとも心地よく「歯ごたえはちゃんとあるけど、口のなかでホロホロほどけていく。これはお酒が進んじゃうやつです。おかわりください」と西島さんも二杯目に。今宵の極上の魚に、ピッチが早まる。

その後のご主人は、「猪年生まれってのは悪い性格でね。もうやり始めたら止まらない」という理由のせいか波瀾万丈。札幌で店を失敗させ、借金を背負い上京。しばらくは弾き語りの流しで食べていたが、自分の店を持つべく33歳で料理の世界へ戻り、58歳で今の店をオープンする。「息子さんはいらっしゃるんですか?」と、きたろうさんが訊くと「いや、娘だけなんです。実は下の娘が5年前に23歳で死にまして」とご主人。「ずーっと刺身ばっかり食べさせてましたから、娘は辟易してたようです。でも普通に買ってきた魚を食べるようになって、初めて“やっぱりお父さんところの魚はスゴい”って……」と、最愛の娘の忘れがたい思い出をご主人は語る。“お父さんの魚が一番おいしい”と言われた、その時の娘の笑顔を忘れないためにも、新鮮で美味しい魚を提供し続ける事を誓ったのだと言う。

最後に、これだけは食べて帰りたいメニューをお願いすると、「うちの刺身はいい所だけしか出さないんですよ。すると必ず切り落としが出る。ここは火を通すと美味しいところ。それを使った料理を売る事で、お刺身を安く抑えてるんです」。そうして登場したのが海鮮茶漬け。「う〜ん、いい匂い! 香りが素晴らしい。魚の出汁が出てんだよ。もう海のいい香りがするもん」と、きたろうさん。塩と醤油だけの味付けだが、その芳醇な香りと味は、高級料亭の一品のようだ。そしてこの茶漬けには、こだわりの魚をきっちり最後まで味わいつくして欲しい、というご主人の思いが込められている。最高の素材に真摯に向き合う、そんなご主人を支えているのは、たくさんの「おいしい」の言葉と表情にちがいない。

酒喰洲の流儀
その壱

脂がのって金色に輝く黄金あじは、7月から10月が旬。天然活〆ゆえの歯ごたえと淡白さが絶品の平目刺と、厚めに切られた金目鯛刺の三点盛り。お刺身1,470円(税込)
その弐

旬ではない春から夏にかけて獲れる貴重な鮭、トキシラズ。産卵などで体力を使っていないため、普通より脂がのった鮭を、アンチョビとバターで作ったフレンチソースでいただく。時鮭のステーキ860円(税込)
その参

千葉県の和田港で買い付けてた「つち鯨」を使い、江戸甘味噌で仕上げた煮込み。両国煮込630円(税込)
その四

刺身を作る時に出る切り落としをたっぷり使用。魚から出る出汁の味が絶品。海鮮茶漬680円(税込)
きたろうさんから、酒喰洲へ贈る「愛の叫び」 イノシシが魚に魅せられた お魚幸福(しあわせ)———きたろう
「鮮魚立ち飲み処 酒喰洲」
住所
電話
営業時間
定休日
東京都中央区日本橋久松町2−10
03-3249-7386
16:30〜23:00
日曜、祝日
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

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