真夏の暑い日、きたろうさんと西島さんが訪れたのは北区十条、店を始めて5年目の酒場「壱ノ宮」。ご主人の宮澤洋平さんが厨房を仕切り、奥さんの幸子さんが笑顔でお客さんをもてなす店に入り、いの一番に焼酎ハイボールで乾杯。「ゴクゴク、喉が鳴りますね!」と、西島さんの顔が冴えてきたところで、最初の一品「牛ハラミ」の串が登場。「ハラミは安くてうまいんだ」ときたろうさんが言うと、「すごくニンニクの香りが利いてますね。これは元気が出る!それに、柔らかい」と西島さん。酒場の多い十条で店を続けるため、ご主人が絶対にゆずれないというのが、仕入れと仕込み。「毎日、自分が直接仕入れてます。イチからさばいて串刺しをして。ここで楽をしちゃうと、ほかの店に負けちゃうから」と言う。
もともと埼玉の戸田にあるやきとんの店で10年近く修業していたご主人は、奥さんと知り合い、結婚を機に独立を決意。「プロポーズも“一緒にお店をやりたい”っていうことで……」と照れるご主人。その修業時代から作り続け、常連客が必ず頼む一品がシロコロホルモン。豚の大腸とたっぷりの野菜を、秘伝の自家製味噌で炒めたもので「これは焼酎ハイボールに合うなぁ」と、きたろうさんはご満悦。ボリュームもたっぷりで、この一品で2杯はいけそうだ。
本格的に料理の道に入る前、バンドをやっていたご主人は、25、6歳で音楽の夢を諦めた。「人間食べていかないといけないんで……。ほかのメンバーもいるし、まぁ葛藤はありましたね。でも将来、店をやりたいという思いも強かったので」と語る。もうひとつの夢、独立にも不安はあったが、奥さんがしっかりと支えてくれた。「お店を開きたいという、主人の夢について行く人生もアリかなと思って。(主人は)話すのがあまりうまくないかもしれないけれど、お客さんに対しては、スゴく真面目に接しています。その気持ちに、多少なりともお客さんがついてきてくださってるんじゃないかと思います」と語る。
次の一品「肉タタキ」は、その名前から想像した料理とは異なる、つくね串のような一品。「肉がミンチ状になるまで叩いてるので、タタキと名付けてます」というこの串には、タンやカシラなど豚の部位が入っていて、それぞれの食感が複雑に絡み合う。「肉の味が濃いですね。軟骨も入ってる。食べ応えもありますよ」という西島さんに、「焼き加減も絶妙だよ」ときたろうさん。こうした料理は、夫婦でお互いにアイデアを出し合い、メニューに仕上げていくのだという。
最後の一品は、ご主人の実家で採れた野菜を使った「じゃがいもの明太チーズ焼き」。どんなアイデア料理かと思えば、これが西島さん大好物のグラタン。「おいしそう!グラタン大好き!」と歓声を上げる。少しでも息子の助けになればと、ご両親が野菜の栽培を始め、今ではこの野菜がお店の味を支えている。お母さんは「もう本当に幸子さんに感謝です。うちの息子には勿体なくて」と、涙を浮かべながら笑う。「全部感謝だよね、みんなに支えられてるんだよ。息子も音楽なんかやったりして大変だったろ?でもいくつになっても母は母だよね、永遠にその関係はなくならないよね」というきたろうさんの言葉に、奥さんまでもらい泣き。「酒場とはなにか?」という質問に「酒場は一日にしてならず」と答えるご主人。そして同じ質問に笑いながら、奥さんも「酒場は一日にしてならず」と答える。この息の合った二人三脚がある限り、この店の味と人情はきっと変わらない。
-
ニンニクを効かせたハラミ肉は、ステーキのようで食べ応えあり。牛ハラミ1本280円(税別)
-
豚の大腸に、キャベツやネギ、ニラなどを加え、秘伝の自家製味噌と炒めた人気メニュー。シロコロホルモン480円(税別)
-
カシラ、タン、ハツ、ナンコツ、テッポウを混ぜ合わせて包丁で叩き、ミンチ状にした肉を串で焼いた一品。タタキ串250円(税別)
-
お互いにアイデアを出し合い、工夫を加えメニューとして完成させていくのだという。
-
実家で栽培しているのはじゃがいも、ナス、キュウリ、トマト、ししとうなど。新鮮な素材を使用する壱ノ宮は、肉以外のメニューも美味しい。明太ポテトチーズ焼き450円(税別)
-
住所
電話
営業時間
定休日 -
東京都北区上十条2−8−11
03-3906-1666
17:00〜23:00
日曜、祝祭日の月曜
- ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。