再開発で超高層ビルが建ち並ぶ大阪・阿倍野。そんな街の喧噪とは正反対の阪和商店街に、連日満員になる酒場「お立ち呑み処 種よし」がある。店の外にも中にもぎっしり貼られたメニューの短冊は、ゆうに200種を越える。そんな店の雰囲気に圧倒されつつも、ココ大阪でもいつものように焼酎ハイボールで「今宵に乾杯!」。普段は名物女将の田島みゆきさんが店を切り盛りするが、今は足を痛めて入院中。仕入れと仕込みを担当するご主人・田島英治さんと、料理担当の店長・稲村正治さんが切り盛りしている。ご主人が「珍しいもので、このまま召し上がって下さい」と、最初に出してくれたのは、きれいなピンク色の切り身。「魚だな。あ、違う。生ハムみたい」というきたろうさんに、「ナマズの生ハムです」と、ご主人。「グロテスクだけど身はこうなんだ。めちゃくちゃ美味しいけど、ナマズと聞くと……」と、苦笑するきたろうさん。
ご主人は関東の生まれで、20年前に転職を機に大阪に来たサラリーマン。10年前に定年し、念願の店をオープンさせた。「大阪は楽しいです。人柄もそうですし、食べ物もざっくばらんですよね」というご主人に「でも大阪人は、なんでもズンズン中に入ってくるでしょ、平気?」と、きたろうさんが訊くと「大丈夫。鬱陶しい時もありますけど」と笑う。
次のおすすめをお願いすると、先ほどと同じく“何の食材か”を伏せて唐揚げが登場。「何か教えてくれないシステムなのね」という西島さんに、「これはなんとなく分かるな。揚げ具合も絶妙だし美味しいよ、カエルでしょ?」と、きたろうさん。ご明察!珍味が大好きなご主人は、日本全国くまなく旅に行き、自分の脚で歩き、市場や酒場で珍味を見つけるという。「島根は?」「赤てんですね。さつま揚げみたいなやつです」、「愛媛は?」「ジャコ天がありますね。あれはおいしい!」と、きたろうさんの問いにスラスラと珍味や名物を答えてみせるご主人。その知識量はハンパではない。
覚悟を決めて、次のおすすめをお願いすると、黒い骨状の物が……。西島さんが思わず顔を背けたのは人気の珍味、イモリの干焼。“味なんかしないよ”と訳知り顔で齧ったきたろうさんは「味ありすぎ!イカよりも美味しいよ」とビックリ。おっかなびっくり頬張った西島さんが「なんか薬膳っぽい。漢方みたいな……」と言うと、ご主人は待ってましたとばかりに「これはね、惚れ薬。昔、干し焼きにした粉を好きな女性に振りかけると、恋愛成就すると言ってたの。いわゆる滋養強壮、精力剤ですね」と言う。さらに珍味は続く。
次は大根と、なにか鱗状の足の肉の煮物が出てきた。プルプルしてコラーゲンたっぷりなソレを口に含むと、これが実に美味。「スッポンより、よっぽどおいしいね」というきたろうさんの言葉に驚いたのが、てっきりスッポンだと思っていた西島さん。「スッポンなんて贅沢なもの、出てくるわけが無い」と、ご主人ときたろうさんはニヤニヤ。その正体はワニの足。臭みが強く普通には食べられないが、丹念に湯通しし、圧力鍋で煮込むのだと言う。「料理を作る方は大変だね。ご主人が勝手に“これを食いたい”って素材を持ってきてさ」と、料理担当の店長に言うと、図星だったようで大笑い。しかし、店長が「うちはゲテモノ屋じゃないですよ」と言うとおり、種よしはあくまで珍味が充実した酒場で、珍味もそれ以外の料理も一様にレベルが高い。でなければ、これほど多くの常連さんには愛されない。
最後の料理は、その名も「地獄どうふ」なるパンチの効いた一品。真っ赤な唐辛子と青唐辛子が乗った色鮮やかな豆腐は、店の一番人気だという。「赤い唐辛子は韓国から取り寄せたもので、辛くないと思います」と言われても、なかなか一口目に勇気がいる。実は、くせ者は青唐辛子で、これが強烈に辛いのだが、その辛さゆえにクセになる。「珍味を出して美味しいと言われると、相当嬉しいでしょ」と、きたろうさんが訊くと、「当たり前の食材じゃないですからね。外した時はショックですけど」とご主人。それはまるで日々真剣勝負を繰り返す、舞台に立つ漫才師の気分と似ているに違いない。
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茨城県の霞ヶ浦から取り寄せた「なまずハム」。塩漬けの後にスモークしたそれは、魚でありながら、食感はまるで生ハム。400円(税別)
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察しのいい人なら、その形から何となく分かる、高級食用カエルの筋肉脚の唐揚げ。フロッグレッグ430円(税別)
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滋養強壮の秘薬としても伝わる、イモリの干し焼き。味も漢方薬のそれに近い。栃木県日光のイモリ干焼380円(税別)
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巨大な鶏の足のような素材の正体は、ワニ。コラーゲンたっぷりのプルプル食感が楽しい。岩手県盛岡から仕入れたコチラの値段は、サイズにより変動あり。ワニの手の煮込み800円〜(税別)
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たっぷり真っ赤な唐辛子の上には味噌が塗ってあり、その上にさらに青唐辛子の輪切り。辛いからと水を飲むと、さらに辛さが増すので注意。地獄どうふ380円(税別)
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住所
電話
営業時間
定休日 -
大阪府大阪市天王寺区堀越町15−13
06-6779-2370
15:00〜24:30
年始
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