BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2015/10/10放送 #68 大國家

育ての親が寝る間を惜しんで働いた渋谷・笹塚の小さな駅前酒場その暖簾と味を守り続ける老姉妹
限りない愛をそそいでくれた両親が、残してくれたもの

どんなに街が変わろうと、静かに時間を積み重ね、いつまでも変わらぬ奇跡のような酒場がある。京王電鉄の笹塚駅前、今年81歳の女将・奥村静枝さんと、78歳の妹・遠藤房枝さんの店「大國家」は、まさにそういう一軒だ。小さな入口を入ると、15席のカウンターは、品良く杯を傾ける常連さんでいっぱい。「女将のショートカットいいですねぇ、ドングリみたい!」というきたろうさんの軽口が、店を温める。早速、常連さんと焼酎ハイボールで乾杯し、カウンターに並ぶ大皿惣菜をいただく事に。「ちょっと煮すぎちゃったかな」と女将が言う「ぶり大根」は、いい色に染まり、じゅんじゅん染み出す出汁がたまらなく美味しい。「もう染み染みですね。良く染みちゃって美味しいです」と西島さんは味に惚れぼれ。

創業60年の店の歴史は、姉妹の半生そのもの。若くして両親を失った姉妹は、両親と仲の良かった先代夫婦に引き取られる。大の子供好きだったという先代夫婦は、育ての親として姉妹を心から可愛がってくれた。「朝早くから夜遅くまで働いて、寝てるところなんか見た事がなかった」とは妹の房枝さん。女将も「自分の帯を解いて足袋を作ってくれたり、本当にありがたかった」と、感謝を忘れない。そして昭和30年、笹塚に「大國家」を開業した際、姉妹は迷う事なく育ての両親を助け、共に暖簾を守る覚悟をした。

その先代から味を受け継いだのが「もつ煮こみ」。厳選した白味噌をベースに、モツと豆腐だけで作り上げるその味は、嫌みがなく誰にも愛される味。「これは懐かしい気分になります」と、西島さんが言えば「出汁も濃過ぎなくて、美味しいね」と、きたろうさんも満足げ。続いて妹の房枝さんの得意料理「納豆オムレツ」をいただいて、「うまい!卵の焼き方がうまいじゃないですか。プロに言うのもなんですけど、卵のフワフワ感が素晴らしい」と、きたろうさんが絶賛すると、女将が「私は下手なの。前にね、近所のおばあちゃんが来て、私にオムレツを頼んで、焼いたらちょっと変だったの。“なーに、これ。オムレツじゃないわ!”って。“妹さんより下手ねぇ!”って言われちゃった」と、カラカラ笑う女将が、なんとも可愛らしい。

 
次の東京オリンピック?いやいや100歳まで!

客商売60年の女将と話していると、次々に話題が降ってきて、思わず話し込んでしまう。「私はお酒が一滴も飲めないの。やーねー。酒呑みは大好きだけどね」という女将に、「厭な飲み方をする客もいるでしょ?」と訊けば、「そういう客には売らないから大丈夫。最初は分からないけど、二回目からはもう売らない。ずーっと座ってても売らない。それで随分、変な人を断った。そんなの怖がってちゃ商売は出来ないじゃない」とバッサリ。さらに、かつて共に店を支えてくれたご主人については「近所で働く板前で、呑んべえでよく飲みに来てね、結構ハンサムだし、あたしが網で捕まえちゃった(笑)。腕はいいし、私は幸せだったね。養子に来てもらって、30年一緒にやってもらったけど、死んじゃった」。その時、店を辞めようと思わなかったかを訊くと「全然思わない。お店が大好きだから辞めない」とキッパリ。きたろうさんが「旦那よりも?」と意地悪を言うと、事も無げに「うん」と言い切る女将。81歳のおばあさんが、とにかくカッコいい。

腕の良かったご主人が、店の名物料理に育てたのが「どじょうなべ」。かつお出汁をベースに、しょう油で味付けした鍋でどじょうを煮込むのだが、丁寧に下ごしらえされたどじょうは臭みも無く、実に食べやすい。どじょうの美味しさが分かるようになったという西島さんに、「明日、元気になりますよ」と、女将がニッコリ。思い出話ついでに、昭和39年の東京オリンピックで、新宿方面から甲州街道を走ってくるアベベの快走を見たと言う女将。5年後のオリンピックも楽しみにしていると言う。健康状態も万全。「眼もよく見えるよ。新聞も眼鏡なしで読めるし」。そして一拍おいて「懐の中まで見れますよ」と、笑う女将。この人柄、酒好きなら一度はお相手いただきたいと思って当然じゃないでしょうか?

大國家の流儀
その壱

カウンターに並んだ数種類のお惣菜は、どれも女将の手作り。おふくろの味として、大人気。手作り惣菜(ぶり大根)350円(税別)
その弐

先代が試行錯誤の末にたどり着いた、白味噌のスープとモツ、豆腐のみのシンプルなレシピ。もつ煮こみ400円(税別)
その参

酒場を営んで60年、不逞な客のあしらいは慣れたもの。二回目からの来店からは「うちは売りませんよ」と、断るという。
その四

お店の名物料理「納豆オムレツ」は、妹の房枝さんの得意料理。450円(税別)
その五

先代の頃からの常連さんが「なにがおすすめって、やはり“どじょうなべ”でしょう!」と太鼓判を押す一品。どじょうなべ500円(税別)
きたろうさんから、大國家へ贈る「愛の叫び」 芸の基本は可愛さだ。おそわりました。———きたろう
「大國家」
住所
電話
営業時間
定休日
東京都渋谷区笹塚1−57−16
03-3378-3990
17:00〜24:00
第1・3土曜、日曜
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

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