BS-TBS「〜癒・笑・涙・夢〜夕焼け酒場」 毎週土曜よる6:00〜6:30 BS-TBS 2016/1/23放送 #81 江戸政

閉店時間は早くても「ちょっと一杯」で、顔を見たくなる 江戸っ子に愛される人情酒場
お客さんの事だけを考え、誠実を貫き通す

「渋いですよ〜、見てあの暖簾。年季がすごいですよ」と、きたろうさんが褒める暖簾をくぐると、実に人の良さそうな顔のご主人・森田英雄さんが迎えてくれる。座敷とカウンターで27席。このカウンターの雰囲気が、創業50年の歴史も相まって、まるで江戸時代の酒場のよう。いつものように焼酎ハイボールで乾杯すると、年配の常連さんがおとなし目に、それでいてみな笑みをたたえて応えてくれる。「随分品のいいお客さんが多いですね」と訊けば、「うちはおとなしいお客さんが多いの。あんまり騒がないね」とご主人。それがまた、この酒場を雰囲気を良くしているようだ。

最初のおつまみをお願いすると「うちは大抵お刺身が出るのよ。500円だから」。このご時世、お刺身の盛り合わせが500円とは有り難い。「これじゃ、やってけないでしょう?」と、きたろうさんが言うと「やってけますよ」と、ご主人は涼しい顔。きたろうさんも西島さんも「マグロうんまい。安かろう不味かろうじゃないよ」「ホッキも500円の味じゃないですよ」と驚きを隠せない。さらに、次のおつまみのコロッケをお願いすると、こちらはなんと200円!かなりのボリュームで、もちろん手作り。このカレー風味のコロッケは、たまに出す程度のメニューだったが、お客さんがみんな頼むものだから、いつの間にか定番メニューに昇格。「すっごいシンプルなのに、やみつきになる」という西島さんの言葉を聞いて「うちには、コレっていう特長がないんだよね。ま、特長があるとお客さんも飽きてくるから」とご主人。いやいや、この安さとこの味は、どこにもない特長です!安くてうまいつまみが長居を誘うが、この店は営業時間が短い。かつて、うなぎ店だった頃の名残で9時閉店。しかし、だからこそ“キュッと呑んで、うまいつまみを食べて、サッと席を立つ”、そんな店の流儀を知った常連さんばかり。ご主人も、そんな常連さんをガッカリさせたくないと、頑なに値上げをしない。この常連さんとご主人の関係こそ、江戸の「粋」を感じさせる。

できた義娘の笑顔に支えられ、調理場に立つ

もう通い始めて30年になるという常連さんは、「主人の人柄もいいけど、義娘さんの明るさ!店をしっかり仕切ってるからね」と、ご主人の息子の嫁・雅世さんをベタ褒め。店を切り盛りする雅代さんには「この娘がいないと、やっていけないですよ。3つ仕事を言われると、2つ忘れちゃうもんね。で“お父さんこれよ、あれよ!”って言ってくれるの」と、ご主人も全幅の信頼を置いている。父と義娘となると、多少の遠慮があるもの。雅代さん曰く「嫁いだ時は、遠目に“お父さんだ!”と思って手を振ると、どうしていいか分かんなくって、ドギマギして下向いちゃうの」という感じだったが、今や実の親子以上。そんな親娘の仲の良さを感じさせるのが、人気メニューの「入豚」。この玉ねぎと豚のケチャップ炒めは、雅代さんが子供の頃から実家で食べ親しんでいた家庭料理を、ご主人がアレンジ。一口頬張ったきたろうさんは「いや〜、すごいケチャップの香り。これはご飯のおかずになるよ!」と、食欲をかきたてられた様子。「この頃、若いお嬢さんが一人で来るんですよ。綺麗な女の子が、入豚で焼酎ハイボールを3杯くらい飲むんです。私、どう話したらいいか分からなくて」と、ご主人が笑う。

最後のメニューは、この店の名物「きりたんぽ鍋」。鉄鍋にたっぷりの野菜ときりたんぽ。このきりたんぽが他では食べられない絶品食材。「美味しい!お米の感じが全然違うんですね。ぐずぐずじゃないの。甘すぎなくて塩味があるお出汁」と、西島さんがホクホク顔。出汁が染みたきりたんぽのうまさに、きたろうさんも頷くばかり。そんなお客さんの「美味しい」の言葉が楽しくて店を続けているというご主人。“酒場は大人の社交場”というご主人は、「もうこの歳になったら、嫌な客と商売したくないからね。楽しくっていうのは変だけど、気分良く仕事したいんだ」と語る。このうまい酒と料理を前に、こんな人の良さそうなご主人の顔を見れば、嫌な客になる方が難しいに違いない。

江戸政の流儀
その壱

この日はマグロ赤身、真イカ、真ダコ、甘エビ、ホッキ貝、ツブ貝というラインアップ。内容は仕入れによって異なり、さらに数が増える事もあるとか。刺身盛り合わせ500円(税別)
その弐

仕入れ値の高騰でうなぎ店を閉店したのが4年前。当初、閉店時間はその時代のまま20:00だったが、さすがに早すぎるということで21:00になった。
その参

月に2度くらいしか出していなかったコロッケが、いつの間にか人気の定番メニューに。自家製カレーコロッケ200円(税別)
その四

料理に特長があれば、それが飽きられる理由になるという持論のご主人。いつ食べても変わらぬ飽きられない料理を心がけているという。
その五

お客さん思いのご主人にとって、「値上げしたの?」というお客さんの言葉は何より辛い。もうかれこれ2、30年も、値段は据え置き。
その六

義娘の雅世さんが、子供の頃から実家で食べていた家庭料理を、ご主人がアレンジ。若い女性にも人気。入豚350円(税別)
その七

11月〜3月の名物料理が、きりたんぽ鍋。市販のきりたんぽと違い、こちらのそれはお米の歯ごたえがあり、味も染み染み。2人前1,500円(税別)
きたろうさんから、江戸政へ贈る「愛の叫び」 親娘は義理に限る きりたんぽ———きたろう
「江戸政」
住所
電話
営業時間
定休日
東京都江戸川区西小岩1−30−6
03-3672-1035
16:30〜21:00
日曜、祝日
  • ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。

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