練馬の大泉学園、しかも駅から離れた地。決して恵まれたロケーションではないにもかかわらず、30年も愛され続ける酒場「竹串」が今回の店。女将の柴田しのぶさんに焼酎ハイボールをお願いし、「せっかくお会いしたんで、乾杯に付き合ってください」と、ご近所の常連さんと楽しく乾杯。まずは自慢のつみれ焼きをいただくことに。「どんこの椎茸の中に、柚子風味のつくねが入ってるんです。熱いうちにフウフウ言いながら食べるのが最高ですよ」と、女将が説明してくれたつみれ焼きは、肉厚の椎茸にこんもりとつくねが載っていて、頬張ると椎茸のツユがあふれんばかり。「うちのつくねは、もも肉をミンチにするところから全部、自分のところで作ってるんです」との説明にも納得。きたろうさんが「うまい、うまい、うまい。すごいアツアツ」と、美味しそうに串にむしゃぶりつく。
お店を始めたのは、3年前に亡くなったご主人の柴田洋介さん。「結婚して子供が生まれて、子供が小学生と中学生になった時に始めたんですよ。主人は店を始めることを最初から決めていたみたいで、私は後で知らされました。それが先に逝っちゃって、一人で店をやるなんて、ちっとも思ってなかった」。常連さんが口を揃えて「穏やかで、お地蔵さんみたいな人だった」というご主人だったが、それまで専業主婦だった女将には「最初は、店が本当に嫌で嫌で。でも家族が協力しないと成り立たない。宴会なんかあると、食器のセットとか子供も動員して頑張りました」。オープン当初から店は満員御礼。繁盛はしたが“いつまでたっても洗い物が終わらない!”という状態だったという。
次の串は、まとい焼き。聞き慣れない名前に「形を見れば、すぐわかります」と出てきたのはエノキ茸のベーコン巻き。確かに、火消しの“まとい”にそっくりで、歯ごたえの良いエノキ茸の旨味と、ベーコンの塩味のバランスが実にいい。「これを考えたのはご主人ですか?」と、きたろうさんが訊ねると、少し誇らしげに女将が頷く。その表情に、夫婦の絆の深さが感じられた。
店を手伝っていたとはいえ、今のように客と向き合うようになったのは、ご主人が家で伏せるようになってからだという女将。「私が店に行くことで安心すると思って。なんか心配そうな顔をしながら、いつも見送ってくれていたんですけどね」。そんな女将を支えたのが長男の大介さん。父の元で修行し、14年前に独立。高島平で2号店を経営する大介さんが、仕入れを一手に担い、女将の仕事を助けている。今や2号店の方が繁盛しているという話に「向こうは駅前なんですよ」と女将は悔しげだが、その顔は実に幸せそうだ。次の一品に、女性客にも大人気だという自慢の「モッツァレラチーズの茶碗蒸し(480円・税別)をオススメされたのだが、きたろうさんが常連さんの食べる旨そうな一皿に“我慢できない!”と生牡蠣を注文。大介さんが仕入れた北海道厚岸の牡蠣(1個400円・税別)は、新鮮そのものでプリンプリン。「いい息子じゃん!」と、きたろうさんは大絶賛!
そして最後の一品は、看板にも出ている名物料理の釜飯。「おなかいっぱ〜いという人が、ペロリと食べて帰ります」という釜飯は、イクラが乗った豪華版。「美味しいわ、本当に。飲んだ後でも食べられるというのが分かるな」というきたろうさんに、「飲んだ後に、ちょうどいい塩加減」と西島さん。この釜飯もご主人が始めたメニューだという。西島さんが「今の女将さんの姿を、ご主人になんて伝えたいですか?」と訊くと、「安心してね。頑張ってるから安心してね、息子も頑張ってるよ」と目を潤ませる女将。つらかったことほど忘れてしまう人生。いろいろあったはずなのに、思い出すのは幸せな風景。そして何より変わらぬ味と人情を求めて集まる常連さんに囲まれて、今もまだご主人の想いが店に生きている。
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新鮮な若鶏を使った自家製つくねを、火力の強い紀州備長炭で焼く。アツアツの椎茸に気をつけて召し上がれ。つみれ焼き280円(1本・税別)
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エノキ茸のベーコン巻きこと、まとい焼きはその歯ごたえとエノキ茸の旨味がたまらない!まとい焼き1本200円(1本・税別)
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鮭といくらの親子仕立ての釜飯は、どんなにお腹がいっぱいでも不思議と食べられてしまう。鮭といくらの親子釜飯880円(税別)
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住所
電話
営業時間
定休日 -
東京都練馬区大泉学園町4−20−14
03-3978-8623
17:00〜23:00
水曜
- ※ 掲載情報は番組放送時の内容となります。