「焼酎ハイボール」酒場を巡る旅 亀屋

70年間受け継がれる「特製の一杯」秘伝のレシピは女将のみぞ知る

最近は“チューハイ”の語源を知らない人も多いようだが、「焼酎ハイボール」のことである。昭和20年代、東京下町の大衆酒場で、庶民でも手に届きやすい酒、焼酎を飲みやすくするために店主がソーダ水などで薄めたことが始まりだ。

マッキー牧元さんが訪れた「亀屋」は、昔ながらの焼酎ハイボールを出す指折りの老舗。客の8割が注文するお目当ては、78歳の女将、小俣美代子さん特製の一杯だ。

グラスにまずソーダ水を注ぎ、レモンの輪切りを浮かべる。そこによく冷やした焼酎ベースの“もと”をなみなみと注ぎ、氷を入れないのが亀屋流だ。「冷た過ぎない絶妙な温度がいい。のどをスルッと入っていくから、ぐいぐいやるにもいいし、度数高めのキリッとした味わいは、ゆっくり楽しむにもピッタリ。懐にやさしく、気持ちよく酔ってほしいという店の心意気を感じるね」と、熱々のポークウインナーと冷やしトマトを肴に、早くもグラスを干すマッキーさん。2杯目の焼酎ハイボールを頼み「なみなみと入れてくれるから、グラスを持ち上げられないんだよ」と口でひとすすり迎えにいって、思わず笑顔がこぼれる。

亀屋の焼酎ハイボールの“もと”も女将さんのお手製。亡きご主人が完成させた味を受け継ぎ、自分の本業のかたわら店を手伝う息子たちにもレシピを明かさず、毎日自らブレンドしているという。「うちの焼酎ハイボールが一番だと通ってくれるお客さんのためにも、店は弟と一緒に守っていきたい。秘伝のレシピをいつ教えてくれるのか、わかりませんけど(笑)」と、長男の光司さん。「チューハイ」は酒場の歴史を映す鏡だと、しみじみ思う夜だった。

納豆オムレツ刻んだ玉ねぎ、椎茸、ピーマンを炒めて醤油と本みりんで味付け。そこに納豆を加えた具材を、砂糖と本みりんを利かせたオムレツで包み込む。香ばしい納豆と甘めの玉子が絶妙にマッチ。スッキリ辛口の「焼酎ハイボール」が思わず進む!

「亀屋」
刺身や焼き魚の他、厚揚げ、ハムエッグなど飾らないつまみは30種ほど。ほとんどが400円台で、ボリュームたっぷり。
東京都墨田区東向島 5-42-11
03-3612-9186
17:30〜23:00
日曜、第2・第4月曜
  • ※ 2018.7.20掲載分
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