「焼酎ハイボール」酒場を巡る旅 一之江大衆酒場カネス

ひと手間かけた焼酎ハイボールと
懐かしい昭和の空気に酔いしれる

最近は“チューハイ”の語源を知らない人も多いようだが、「焼酎ハイボール」のことである。昭和20年代、東京下町の大衆酒場で、庶民でも手が届きやすい酒、焼酎を飲みやすくするために、店主がソーダ水などで薄めたことがはじまりだ。

今宵も「大衆酒場カネス」の赤提灯に明かりがついた。引き戸が連なる大きな間口の左側に“大衆酒場”、右側には“中華そば”の暖簾が掛かる、なんとも不思議な佇まい。店内には映画のセットのような昭和の香りが漂っている。

大きなコの字型カウンターに陣取ったマッキー牧元さんがまず頼んだのは、もちろん焼酎ハイボール。生のレモンをミキサーにかけ、焼酎と甘みを少し加えた特製の“もと”をソーダ水で割る、手間のかかった看板メニューだ。「うまい。超ドライなスッキリタイプ。スイスイ飲めちゃう軽やかな口当たりだね」

3代目女将の浅野頼子さんが見守る大鍋は名物の煮込み。馬のモツと牛のフワ(肺)を味噌のみで味付けし、他の具は一切なしという潔い一品だ。「煮込みの濃厚な味に辛口の焼酎ハイボールが良く合うね」そう言って、どじょうの柳川、ぶつ納豆を肴にマッキーさんは新たなグラスを傾ける。

創業は昭和7年。その当時は茅葺き屋根の家屋で、酒だけでなく、駄菓子なども扱う茶屋のような存在だったとか。ラーメンを出すようになったのは昭和29年から。昭和39年の建て替え後も、酒場とラーメン屋の2つの顔を大切に守り続け、現在に至っている。

〆は、60年以上受け継がれるラーメンで決まり。そうそうこれ!という懐かしい味わいに、お腹も心も満たされる。わざわざ出向きたい大衆酒場の昭和遺産がここにある。

ぶつ納豆東京都営新宿線一之江駅から徒歩10分。焼酎ハイボールと渋い肴を楽しめる老舗大衆酒場。あっさり醤油味のラーメンも人気

「伊勢周」
辛口の焼酎ハイボールと、もつ焼きをはじめとする和洋中120 種もの肴で地元客に愛される、下町の老舗大衆酒場
東京都江戸川区一之江6-19-6
03-3651-0884
平日・土曜16:30〜22:00 頃、
日曜・祝日14:00〜22:00 頃
水曜(第3 水木は連休)
  • ※ 2019.8.22掲載分
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