「焼酎ハイボール」酒場を巡る旅
大塚 伊勢元

下町の「焼酎ハイボール」文化と酒屋の矜持を受け継いで半世紀

 最近は“チューハイ”の語源を知らない人も多いようだが、「焼酎ハイボール」のことである。昭和20年代、東京下町の大衆酒場で、庶民でも手が届きやすい酒、焼酎を飲みやすくするために、店主が炭酸水などで割ったことが始まりと言われている。

JR大塚駅北口にほど近い「伊勢元」は3代続く老舗。門前仲町の酒屋から暖簾を分けてもらい小松川で創業し、大塚に移って56年目になる。元は酒屋だったが、角打ちが次第に充実していき、いつしかもつ焼き屋となった。そんな経緯から、城北エリアでは珍しい焼酎ハイボールを半世紀も前から出し続けている。

「お、これは旨い! 薄はりグラスでリップタッチが繊細。そこへ強炭酸の刺激がガツンと来て、後からエキスのまろやかさが追いかけてくる。いわばツンデレ型(笑)。大ぶりのもつ焼きも旨味たっぷりで、焼酎ハイボールが進む進む」

焼き物は主人の大森正幸さんが一手に担う。レバーには仕上げ前にごま油をひと垂らし、シロは端に絶妙な焦げ目をつけて香ばしくと、至極丁寧に焼き上げてくれる。「分厚いレバーがゴロゴロ入ったニラレバも、刻んだピクルスが隠し味のポテサラも絶品。こんなに手が込んでいてボリュームもたっぷりなのに、安すぎじゃないですか?」と驚くマッキー牧元さん。

大森さんは「料理はあくまで酒の友。うちはお酒を召し上っていただく場所なので」と穏やかに笑う。その横顔に初代から受け継がれる酒屋としての矜持が垣間見える。「きめ細かい泡がなんて美しいんだろう。時間を忘れ、気づけばほろ酔い。最高だね」

杯を重ねたマッキーさんは、グラスを見つめて独りごちる。また大切な一軒ができた。

ピンピン焼き長芋と山芋(大和芋)を8:2 の分量ですりおろす。タコやイカ、刺身の余りなどお好みの魚介、白だし少々を加えて混ぜる。小さなフライパンかスキレットに油をひき、弱火から中火でじっくり焼く。中央に卵を落とし、底におこげができたら、お好みの薬味をのせて完成。よく冷えた「焼酎ハイボール」と相性抜群!

「伊勢元」
プリッとジューシーな串焼きと、定番つまみの数々を堪能できる、王道のもつ焼き酒場。大多数の客が「焼酎ハイボール」を注文する
東京都豊島区北大塚2-29-7
03-3918-4646
17:30 〜23:00
日曜・祝日

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