70年以上の歴史を誇る老舗酒場!
母親の教えを胸に暖簾を守る
三代目主人と二人の料理人
鮮度抜群! 自家製酢味噌で食す「真アジの刺身」
本日の舞台は、東京都江戸川区一之江。東を流れる江戸川を挟んで千葉県と接し、西は荒川、南は東京湾に囲まれた、関東平野の最も低い場所に位置するエリアだ。都営新宿線・一之江駅から、きたろうさんと武藤さんが向かったのは、昭和27年創業の老舗酒場「大衆季節料理 はむら」。三代目主人の原田宗義(むねよし)さん(54歳)と、ご主人を支える二人の料理人、相木(あいき)健一さん(61歳)、黒木末夫さん(64歳)が店を切り盛りしている。昭和レトロな風情あふれる店内で、さっそく、ふたりは、焼酎ハイボールで、「今宵に乾杯!」。
最初のおすすめは、「真アジ刺」。長崎産の新鮮な真アジが姿造りで登場し、「きれい〜! キラキラしてる」と歓声をあげる武藤さん。きたろうさんは、一口食べて、「旨い! トロっとくるね、これが真アジだよ」と舌つづみ!宗義さんの母親が考案したという自家製酢味噌をつけていただけば、「酸味があってさっぱり。ちょっとピリ辛で若い人も好きそう!」と武藤さんも感激だ。
創業71年目を迎えた店は、ご主人の祖母・龍禮(リョンレ)さん(享年70)が創業し、父・永吉さん(享年77)と母・玉子さん(享年60)が二代目を継いだ。現店主の宗義さんは大学卒業後、商工会議所勤務を経て26歳で店に入り、3年後に永吉さんが引退してからは、玉子さんと2人で店を切り盛りしてきた。しかし、その9年後、玉子さんは病を患い、60歳で帰らぬ人に。38歳で「はむら」の暖簾を引き継ぐことになった宗義さんは、「本来なら、母とタッグを組んで、できたことがいっぱいあったはず。もうちょっとやってみたかったですね」と振り返る。
続いては、「にこみ」を。母・玉子さんもその味を守ってきた、創業当時からの名物料理。「うちの場合は、継ぎ足しじゃなく、一回ごとに炊き切る」とのこと。きたろうさんは、「とけるようだよ。旨いな〜」と唸り、「俺は、ほんと、こういう、あっさりした煮込みが好き」と喜んだ。
ご主人を支え、厨房で腕を振るう二人の板前は、「はむら」で20年以上勤め、先代・玉子さんとも一緒に働いた大ベテラン。口数は少なめながら、二人とも、「他で働こうとは思わない。最後までここにいます」と口を揃える。そんな、“料理人人生46年”の黒木さんが作る「山芋磯部揚げ」は、擦りおろした山芋を海苔で巻いて揚げてあり、武藤さんは、「中がふわっふわ! 私、大好きです」と箸が止まらない。きたろうさんも、「黒木さん、上手いね! 味が上品」と大満足。一方、“料理人人生40年”の相木さんが作る、薄口醤油で仕上げた「肉じゃが」もおすすめ! 先代・玉子さんの時代から変わらない伝統の味を引き継いでいる。
〆には、真っ赤な「鬼ごろし」!?
「お袋さんに会いたかったなぁ〜」と、しみじみつぶやくきたろうさん。お客さんからも“ママ”と慕われていた玉子さんが亡くなり、代替わりした時は、「常連さんたちがすごく悲しんで……。母の存在が大きかったので。お店イコール『母がいる』というお客さんにとってのイメージを回復するのに辛い想いをしましたね」とご主人。玉子さんを知る常連さんも、「さっぱりして、人情っぽい人。優しい人だった」、「我々、酒飲みが多いから、よく怒られた。母親が子供を心配するみたいにね」と、懐かしそうに、玉子さんとの思い出を語ってくれた。
母親から教わった「丁寧な接客」を今でも大切にしているというご主人。「料理は味だけじゃない。セットですから。店の雰囲気と接客と味。その一翼を、私がおふくろの代わりに担えれば」と、母の教えを胸に、70年の歴史を誇る老舗酒場の暖簾を守り続けている。中には、40年ぶりのお客さんもいるそうで、「『はむらさん、変わってねぇな!』と言って下さるのは、私にとって、すごくうれしい一言。70年前からあるからこそ、昔を知ってるお客様が評価してくださる」と充実感が伝わる。
続いては、常連客にも人気の、豚と玉ねぎの「串カツ」を! 揚げたてにかぶりついて、「う〜ん、旨い!」ときたろうさん。武藤さんも、「サクサク! ボリューミーだけど重くない」とたまらない様子だ。料理のこだわりは、「メニューのバランス」だとか。魚、肉、野菜料理や、煮物、焼き物など、バランスよく整えることを意識し、「白レバー串焼」、「銀ダラ塩焼」、「牛すじ煮こみ」など、お客さんのニーズに応えるため、80種類以上の料理を提供している。
最後の〆は、人気急上昇中の真っ赤な一皿。一味唐辛子を利かせた、その名も「鬼ごろし」! 豆腐と玉ねぎに割り下と一味唐辛子を加えて煮込み、卵でとじる。「すごく辛そう!」と目を丸くする武藤さんだが、食べれば、「甘辛い感じ。辛いの苦手な人でも食べられますね!」。きたろうさんも、「これは、ありそうでない。チゲともまた違う」と感心しながら、たっぷりと味わった。
「創業80年を目指したい」と言うご主人。「私が生まれた時には、もうこの店がありましたし、私もこの店とともに成長したと思ってます。私にとって酒場とは、“実家そのもの”なんです!」。