たたき、丸、だんご……店によって様々な名前で呼ばれる「つくね」。ハンバーグやメンチカツなど、日本人はひき肉料理が大好き。
その中でもつくねは、元祖とも言うべき存在である。満腹気味でも、メニューのそれを見ると「つくね! タレで」と思わず叫んでしまう、魔力。甘辛いタレに包まれ、香ばしく焼かれたまんまるなアイツだが、そんな妄想を裏切るとびっきりのつくねを発見してしまったのである。もちろん、いい意味で。
やって来たのは、京成小岩の居酒屋『はむら』。モツ煮や串揚げなどの定番メニューの中に、「はむらの焼つくね」なる文字を発見。「常連さんは塩焼きをワサビで召し上がる人が多いんですよ」と女将の狭間秀美さん。つくね=タレという公式を覆す女将さんの言葉に半信半疑のまま、添えられたワサビで一口。
ピリリと舌を刺激するワサビの香りの後に、ジューシーな鶏肉の風味。タレよりもストレートに肉の旨味が口の中に広がり、ザクザクとした玉ねぎと人参の食感も楽しい。下町らしいキリっと強めの焼酎ハイボールと合わせると、さらにサッパリとした後味に。「アリだ!」と思わずつぶやくと、焼き台に立つ無口な二代目、幸生さんが「でしょ?」と照れたように笑った。
ワサビで食べる焼つくねは、酸いも甘いも噛み分けた大人の味。
すっきりとしたタカラ「焼酎ハイボール」もまた、違いのわかる大人にこそふさわしい下町の味。ふんわりとしたつくねのように、今宵も我が家で、そんな下町の味でふわふわの酔い心地を味わうのでありました。
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下町の頼れるお父さん、勇さんとその家族が営む下町酒場。元はまかないだったカレーライス650円や、おつかれビール200円など、地元客に愛されるメニューがいっぱい。はむらの焼つくね1本200円はタレも選択可能。チューハイ350円。京成本線京成小岩駅から徒歩すぐ。18時〜翌2時(日・祝は〜24時)、水休。江戸川区北小岩6-13-4
03・3672・1594
- ※ 2010.09.13 散歩の達人 掲載分
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