映画『男はつらいよ』にもたびたび登場する京成金町線。このどこかのんびりした単線の終点、京成金町駅周辺には、地元密着型のいい飲み屋が軒を連ねている。
なかでも、栄商店会のメインストリートから線路方向にちょっと入った『大松(だいまつ)』は、タレの香ばしい匂いが定番の酒場地帯にありながら、風味豊かなカツオダシを漂わせる老舗。このダシをたっぷり使った逸品こそ、今回焼酎ハイボールのお供に推奨したいダシ巻き玉子である。
30cm四方はあろうかという専用のフライパンを巧みに動かしながら、溶いた材料を流し込んでは巻き……を繰り返すのは店主・松島さん。最後にキュっと簀巻きで整えれば、“下町ミルフィーユ”の完成だ。そしてその切り口のなんと麗しいこと!
タマゴを“卵”と書くか“玉子”と書くかは諸説あるらしいが、殻の状態だと“卵”、調理されたものは“玉子”とするのが一般的なよう。熟練の技で“卵”から“玉子”へと華麗な変身を遂げたダシ巻き玉子は、ふんわり何層にも折り重なっていて、噛めばじんわりダシがあふれ出す。玉子のまろやかさを引き立てる塩味もまた左党好みで、焼酎ハイボールがドライな飲み口なだけに、芳醇なダシの風味もそのままに楽しめる。これがまた、野性的なタレ系おつまみとは違った、なんともオツな組み合わせなのである。
変幻自在、食材界のファンタジスタとも言うべき卵。しかしこれを自分で調理するとなると、なかなか扱いが難しい。そこで、松島さんに美しく作るコツを聞いてみた。すると「数をこなすしかないですね」。
……ま、たとえ失敗して“だし入りスクランブルエッグ”になったとしても、そこは落ち込むなかれ。そんな時こそ、タカラ「焼酎ハイボール」の出番じゃないか! これさえあれば、いつでも気分は下町酒場。自分の料理の腕すらリカバリーしてくれる心強い相棒に、またひとしきり惚れ直すのである。
- 金町で35年。築地から仕入れる新鮮な刺し身類も旨いが、ご主人の修業の賜物といえるダシ巻き玉子650円は、玉子4個分のボリュームで満足度の高い名物メニュー。また、特製の焼酎ハイボール300円はすっきりと飲みやすいのが特長だ。京成金町線京成金町駅から徒歩1分。17時30分〜 24時、日休。葛飾区金町5-35-5
03・3600・4428
- ※ 2009.12.21 散歩の達人 掲載分
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