匂いが呼び覚ますものは計りしれない。遠い日の記憶だったり、現在の空腹だったり。『三徳』の純レバの匂いに、久々に腹の底から沸きあがる食欲を感じた。
純レバの“純”とは、混じりっけナシという意味だ。つまり鶏レバ以外の臓物は入っていないということ。その新鮮な鶏レバを小さめにカットし、フライパンで大胆に炒めあげる。そして、私たちの鼻孔を刺激してやまないあの匂いの正体、焼き鳥のタレをベースにした特製タレを投入するのである。
「焼き加減、タレの味、どれが欠けても本当の純レバは完成しない」とは店主の早川成次さん。
「昔、浅草あたりで知る人ぞ知るってメニューだったんだ。鶏のレバは貴重品で、なかなか市場に出回らなかったから」
その言葉をかき消すように、フライパンからジュワっという大音量が響く。そして店内にタレの甘辛い匂いが、弾けるように溢れ出す。
できたてアツアツの純レバ。表面はカリっと香ばしく、中はトロっとレアな仕上がり。甘みの後にピリっとした辛味がくるタレに、たっぷりのったネギがまた合う。これぞ、酒飲みのツボを押さえた甘辛ミックス! エキスがちょっと濃いめで、優しい口当たりの焼酎ハイボールがどんどん進むことは言うまでもない。
匂いだけでご飯3杯……なんて例えがある。さすれば我が家でも純レバのあの芳醇な匂いを思い出し、タカラ「焼酎ハイボール」を。キレのある飲み口と柔らかな酔いに包まれて、気づけば3杯ならぬ3缶目に手を伸ばしていた。
- 定食屋兼居酒屋として29年。毎日、品川の食肉センターに通い新鮮なモツを仕入れる。だから焼きにも刺しにも絶対の自信が。純レバ500円はご飯のおかずとしても大人気。定食つまみに下町ハイボール350円なんてのも、またオツなもんだ。地下鉄新宿線・大江戸線森下駅A3出口から徒歩5分。12〜13時・17〜24時、日休。江東区常盤2-11-1
03・3631・9503
- ※ 2010.05.14 散歩の達人 掲載分
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