日本における定番スタミナフード、鰻。柔らかな白身と香ばしい皮を、甘辛いタレが包み込む。脂とタレが真っ赤な炭に滴り落ちれば、魔性の香りが辺り一面に弾けて、もう想像しただけでも焼酎ハイボール3杯はいけそうな気がする。
あぁ鰻が食べたい。だって日本人だもの。鰻屋の軒先から漂う白煙には抗えないDNA。しかしここには難題が。鰻は高級品の代名詞でもある。酒の肴に鰻の蒲焼きなんて、庶民風情にはドダイ贅沢な話か……。
そんな酒飲みの切なる願いを叶えてくれるありがたいおつまみが、くりから焼き。鰻を捌く際に出る端切れがクルクルと串に刺されている。錦糸町の老舗酒場『三四郎』では、これを蒸さずに焼き上げるから、弾力感抜群の身が、まるで生き物のように串に絡みつく。柔らかな関東風と異なり、蒸さず&腹開きの関西風はザクっとした歯応え。このちょっとワイルドな食感が、東京下町酒場の猛者たちをうならせる。甘すぎない秘伝のタレもまた、キレ味爽快な焼酎ハイボールと相性抜群だ。
単なる蒲焼きの副産物と侮れないくりから焼きは、名前の由来も実に興味深い。“くりから”は漢字で書くと“倶利迦羅”、サンスクリット語で「龍が巻きついた剣を持つ不動明王」の化身のこと。大日如来の使者と言われている不動明王は、煩悩を抱え救い難い衆生をも力づくでまっとうな道に引き戻す、厳しくも優しいお方。
こんな蘊蓄も酒の肴に、焼酎ハイボールを眺めてみると、その琥珀色の輝きがどこか神々しく見えてくるから不思議なもんだ。
まあ、人生色々あるけれど、明日も一丁頑張ってみるか。そんな気分にさせてくれる下町酒場は、酒飲みにとっての“お不動様”なのかもしれない。もちろん“お不動様”通いができない日だってあるだろう。そんな時は、タカラ「焼酎ハイボール」。我ら酒飲み衆生の心強い味方を手に、今宵もひとつ、「ありがたや〜」といただきまひょかー!
- 蒸さずに焼く関西風のくりから焼き一串300円は、鰻から出る旨味を存分に封じ込めたタレもまた出色。スライスレモン入りの焼酎ハイボール420円にもぴったりの一品だ。店内には舳先形のカウンターがあり、下町酒場情緒も満点。JR総武線錦糸町駅南口から徒5分。17〜22時(土曜は12時30分〜18時)日・祝休。墨田区江東橋3-5-4
03・3633・0346
- ※ 2009.09.21 散歩の達人 掲載分
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