滋味豊かな食を、と頭ではわかっているが、なぜか酒飲みたちはヘルシーやら栄養バランスやらに敢えて背を向けるきらいがある。
酒場カウンターに居並ぶ働き盛りのお父さんたちにこそ、しっかり精をつけてもらいたいのに……。
そんな切なる願いから生まれたのがこのピンピン焼きである。見た目は色白のお好み焼きといったところだが、食べてみたら全く似て非なるもの。とにかくあっさりと軽い口当たりなのだ。
このふんわりの正体は、長芋と自然薯を使った生地。「長芋だけだと水っぽいから、粘りを出すために自然薯を混ぜる」とレシピを惜しげもなく披露してくれたのは、老舗酒場『伊勢元』の三代目、大森正幸さん。味付けは「白ダシと具の魚介から出る旨味だけ」とシンプルながら、底に焼きつくお焦げの香ばしさがたまらないのである。
「常連さんは、ガシガシ焼いてくれって注文するよ」
あぁ、わかる。その気持ち。
お供の焼酎ハイボールは、酒飲み受けする氷が入らないスタイル。
「そのグラス、手づくりなの。これで飲むとウマいよ」
なんとも繊細なグラスからは、ふんわりとレモンの香りが漂う。焼酎ハイボールに対する愛とこだわりに、思わず目頭を熱くしたのであった。
ピンピン焼きで“粘り強さ”をチャージしたら、自宅に帰ってタカラ「焼酎ハイボール」をプシュッ。えっ! まだ飲むのかって? だって粘りが酒飲みの身上。このスッキリした口当たりでシメないと、明日もピンピン仕事できませんって!
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初代が江戸川区小松川で創業。現在はここ大塚で三代目が腕をふるう。名物のモツ煮込み330円の他にも、レバーフライ300円やポテトサラダ450円、ピンピン焼き750円など思わず頼みたくなるメニューが。焼酎ハイボール350円。JR山手線大塚駅北口から徒歩3分。17時30分〜23時30分、日・祝休。豊島区北大塚1-33-20
03・3918・4646